暗闇の光──リチャードの最期【八〇〇文字の短編小説 #3】
ちくしょう、なんて残酷な人生なんだ──そう思いながら、リチャードは煙草に火をつけた。ロンドンの外れにあるペンジ・イーストの街は夜に沈んでいた。暗闇のなか、アレクサンドラ・レクリエーション・グラウンドの端の公園にある滑り台の上で、乾いた口にくわえたハムレットの先が蛍の光のように点滅する。
五年前、リリーとの間に生まれた娘のベスは、一カ月もたたずに天に召された。医師が伝えてきた「乳幼児突然死症候群」という言葉が悪魔がささやく呪文のように聞こえた。なんとか耐えていたリリーはしかし