オレンジジュースを飲んでいた【二〇〇〇文字の短編小説 #2】
父が白血病でこの世を去るまでの十カ月はまるで夢のようだった。言うなれば悪夢で、何もかもがほの暗くよどんでいた。葬儀が終わってから一カ月以上がたった今も、まだ別の世界に迷い込んだような気がしている。
朝食には急ごしらえのサンドウィッチを食べた。食パンにベーコンとレタスとトマトを挟んだものだ。この間買ったばかりのインスタントコーヒーはおぼろげな苦味が気に入っている。大学で社会学を学ぶために、四国から上京してから始めた一人暮らしはもう板についた。朝のメイクはだいたい十分で切り上げ