マガジンのカバー画像

月に着くまで13分。

135
エッセイ。徒然なるままに。
運営しているクリエイター

記事一覧

ねこカードに魅せられて

ねこカードに魅せられて

それは、確か、2000年ころ。アメリカ中西部の田舎町の、ウォルマートでのことだった。

当時の私はことあるごとに日本に手紙やカードを出していた。
インターネットがまだLANケーブルを繋いだパソコンからのもので、ピーヒャラヒャラヒャラといって回線をならして時間限定だったころ。

今ならいえるけど、そうして手紙を書くことで弱音をどこかに置いてこなくちゃ、その弱音の重さに押しつぶされそうだった。

倹約

もっとみる
口は目ほどにものをいう?

口は目ほどにものをいう?

日本をでて、いろんな違いや共通点に気がつくようになるけれど、そのひとつが「美意識」だ。

最近きいてびっくりしたのはJapandi(ジャパンディ)ということば。
どうやら北欧のインテリアスタイルを表すScandi(スカンディ)から派生してできたことばで、「日本の美意識を取り入れた、北欧のインテリア」ということらしい。
そのジャパンディが、コロナによって家にこもる時間がふえたことで、静寂や簡素といっ

もっとみる
聴く耳

聴く耳

19歳の時に、後続のコルベットに突っ込まれた。
それ以降、もともとあった腰の椎間板ヘルニアによる左脚の麻痺に加えて、首まで悪くなり、右手の握力が弱まってしまった。

以来、牽引、指圧、鍼、灸、硬膜外ブロック注射、タイ古式マッサージ、カイロプラクティックなど一般的なものから、電流を流す謎のベッドや、亜鉛の塊を手に握り横たわって手かざしされるとか、いろんな「治療的なもの」を試してきた。

ロンドンのい

もっとみる
ルーツ

ルーツ

大好きなもの・ことを思い出すことは、自然と、今の自分をつくったものはなんなのか、に思いを馳せることにつながる。

たとえば自分が「パン屋の娘」として生まれ育ったこと。

たとえば小学校時代に大好きだった怪盗ルパンシリーズ。
お城や財宝ということばから異国の文化に思いを馳せた。

そのあとに読んだクリスティの翻訳小説で出会ったオレンジ色の猫。
その日本語に疑問を抱いたことで言語学への興味が生まれたこ

もっとみる
海外・髪の毛どうする問題

海外・髪の毛どうする問題

海外に暮らす時間がある程度長くなると、多くの人が直面する問題といえば、髪の毛のこと。

アメリカ中西部の田舎に暮らしていたときは、日本人の美容師なんて夢のゆめ。日本人の髪の毛に理解がある美容室をみつけるなんて、ものすごい大変なことだった。

一回だけ、飛び込みでそこらへんの美容院にいったら、キャンディ・キャンディも真っ青のチリチリパーマにされて、直毛だったはずの私の髪の毛はブラシもなかなか通らない

もっとみる
私の世界征服計画

私の世界征服計画

「私には夢がある。
私の4人の子供たちが、いつか、肌の色ではなく彼らの個性そのものによって判断されるような国に暮らすという夢が」

と語ったのはマーティン・ルーサー・キング・ジュニアだが、私にも夢がある。

世界征服の夢が。



附属の仲良しが、彼女の会社の「ちょっと変わった、面白いおじさん」を紹介してくれたのはいつのころだったろう。
たぶん、まだ20代。アメリカに行く前のこと。

その人は、

もっとみる
マイナー好きなあなたのためのロンドンみやげ8選

マイナー好きなあなたのためのロンドンみやげ8選

ちょっとだけシリーズぽく。

さて、ロンドンに住んで10年も過ぎると、だれもみな、「日本のおみやげカルチャー」に苦しめられるようになる。だってもうネタが尽きちゃったもの!

ああ、今年も帰省の季節がやってきた。
トワイニングもフォートナム&メイソンも日本で買える。
東インド会社やらウィタードの紅茶もカバーした。
ショートブレッドもウォーカーズだってスーパーのPBだって買っていった。
料理好きの友達

もっとみる
#私の作品紹介、させてください

#私の作品紹介、させてください

イースターとはキリスト教でクリスマスと並ぶ重要な祝日。
そして、イギリスでは唯一の金・土・日・月で4連休になる週末だ。

金曜日はキリストが十字架にかけられた日。なぜか「Good」 Fridayと呼ばれる。(一説にはGod's Fridayから転じたとも)
そして一日おいた日曜日にキリストが復活した、ということでEaster Sundayと呼ばれる。
翌日のEaster Mondayはいわば振替休

もっとみる
やさしくしてみる日

やさしくしてみる日

誕生日をむかえた。

そもそもここ数年、静かな誕生日が多かった。
特に、コロナ禍の去年は猫と自分で買ったケーキを食べただけだし、今年は、通常自宅勤務だというのに、ボスがアムステルダムからやってくるというので、ピンポイントに出社指定。
昔のような特別感はどんどんと薄れている。
でも、まあ、それもよし。

何十年もまえのこと。
映画評論家の淀川長治さんが、「誕生日というのは自分がおめでとうと祝ってもら

もっとみる
アコースティック・カフェ

アコースティック・カフェ

ミネソタ州のミネアポリス=セントポール国際空港。
そこからインターステート94号線をまっすぐ。
州境のミシシッピ川を越えたところに、小さな大学町がある。

そのメインストリートにあるのが、アコースティック・カフェ。

ドアを開けると、目の前には手書きのメニュー。
サンドイッチや、スープ。
コーヒーやホットチョコレート。
キャロットケーキやクリスピー・バー。

客席の真ん中には大きな暖炉がしつらえて

もっとみる
ニッコリ笑って、うっちゃって

ニッコリ笑って、うっちゃって

「インディージョーンズ」の子役ショーティ。そしてなにより「グーニーズ」のチビッコ発明家データ役で、80年代に鮮烈な印象を残したあのキー・ホイ・クァン。

昨年「Everything Everywhere All at Once」でアカデミー助演男優賞を受賞し、その復活が話題になったけれど、彼の名前がこの春、ふたたびメディアにのぼることになった。

ちょっと残念な理由で。

ミラー紙やエクスプレス紙

もっとみる
ぜったい次に来る、カタルニアの焼きねぎ。

ぜったい次に来る、カタルニアの焼きねぎ。

15年くらい前にポーランドに行って、水玉の陶器を買ったり、おいしいスイーツを食べて「ぜったい次に来るのはポーランド」と思っていた。

数年前、帰省したときに二子玉川のショッピングセンターで「ポーリッシュポタリー」と水玉の陶器が並べられていたのをみて、やっぱりなと思った。ふふん、と鼻の穴が広がった。



もうひとつ、ぜったい次に来ると思ってるものがある。
思ってからもう7-8年経ってるので、来て

もっとみる
マイナー好きなあなたのためのロンドン観光8選

マイナー好きなあなたのためのロンドン観光8選

みごとにnoteの世界に帰ってきてくださったローローさんのこのエントリを読んで、ちょっと真似したくなりました。

かといって、もう私の知っているトーキョー地図は古すぎる。
かといって、誰もきっとミネソタ州セントポールの観光案内はいらなそう(いりますかね?)だし、ウィスコンシン州の観光案内なんてもっといらなそう。(失礼ですかね?)

ということで、マイナー好きなあなたのためのロンドン観光8選。

もっとみる
リス殺し

リス殺し

小中学校のころ、夢中になって読みふけっていた大好きなアガサ・クリスティの小説に「アクロイド殺し」というものがあった。
最後のどんでん返しが冴える、いかにもクリスティというポワロもののうちの一冊だ。

きっと、それがいけなかったのだ。

「リス殺し」

そんな言葉に結びついたのは。



イギリスでの生活ではまったく耳にしたことがなかったので、「リ・スキリング」で区切るはずのことばを「リス・キリン

もっとみる