宮川 りく

初めまして。宮川 りくと申します。 エッセイ、短編小説、詩などを書いています。 料理を…

宮川 りく

初めまして。宮川 りくと申します。 エッセイ、短編小説、詩などを書いています。 料理をするのが好き。ねことjazz、ボサノバが好き。 よろしくお願いいたします。

最近の記事

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ヌワラエリアに恋をして(紅茶物語)<エッセイ>

 焼いた食パンにマーガリンを塗って手作りの桃のジャムを乗せる。今日の紅茶はヌワラエリアだ。沸かしたてで酸素をたっぷり含んだお湯を紅茶ポットに入れる。二分間そわそわと我慢をして、シャンパン色の紅茶をカップに注いだ。  買おうかどうしようかすごく迷った、シングルエステートのヌワラエリアの茶葉は、二年ほど前に雑誌の記事か何かで読んで以来まるで片思いのようにずっと私の心の中に微熱を持って居続けていた。  最近は紅茶の茶葉にこだわるよりも簡単にサッと飲めるインスタントコーヒーを飲む

    • 南海電鉄ラピートの車掌さんにお礼を言いたくて

       南海電鉄のラピートといえば、あの紺色の車体にまあるい大きな窓ですが。そのラピートには、二歳のころの息子を運転席に乗せていただいた温かな思い出があるのです。  関西国際空港へ飛行機を見に行こうと、大阪に住んでいた私たちは電車や飛行機が大好きな息子を喜ばすために、近鉄のラピートの乗車券を購入して乗る準備をしていたのです。  ところが、息子は初めて見るラピートの大きな窓が目玉に見えたのか、怖がって大泣きをしたんですね。あやしてもあやしても泣き止まず。困り果てていた時でした

      • ベンジャロン焼の魔力《エッセイ》

         十日ほどかけてホラーを頑張って書いていたのだけれど、とうとう諦めてエッセイを書くことにした。映像ならまだしも、文章で恐怖感を与えるようなものを書くのは本当に難しくて、今まで私が読んだ中でも「残穢(ざんえ)」くらいしか夜眠れなくなるほど怖い思いをした小説はない。相当腕がないと無理なんだなぁとつくづく思って諦めた。  形にはならなかったけれど、副産物?が出てきて気持ちは今そちらへ向いている。  しまい込んであった、初めてタイへ旅行した時のお土産に買ったベンジャロン焼きの

        • BAR Borderへようこそ《短編小説》

           凪子はただひたすらに歩いた。脇目も振らず、ずんずんと歩いた。巧太に手ひどく振られた凪子は、街中のたくさんの人の中で巧太の頬を平手打ちにして、踵を返すとずんずんと歩いたのだった。行先なんて関係なく、ただ道が繋がっていれば前に進んだ。涙が一滴も出てこないのは、卑怯な男には未練はないからだと思った。あろうことか、巧太は凪子の親友の菜々美に乗り換えたのだ。「絶対に許さない」と思う。速足で歩く凪子の息が白く吐き出される。ハハッと乾いた笑いまで喉の奥のほうからせり上がってきていた。

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        ヌワラエリアに恋をして(紅茶物語)<エッセイ>

          PNを「りくり」から「宮川りく」に変更しようと思います。 これからもどうぞよろしくお願いします😊

          PNを「りくり」から「宮川りく」に変更しようと思います。 これからもどうぞよろしくお願いします😊

          立杭陶の郷で丹波焼を買う《エッセイ》

           ゴールデンウィークに夫と二人で丹波篠山市にある立杭陶の郷へ行ってきた。どんなものを買おうとかという目的はなかったけれど、陶器を見るのは単純に楽しいし、見ていて欲しいものを見つけたときはやはり嬉しい。気にいったものを買って帰ったら、しばらく撫でてさすって慈しむのだ。  元々料理が好きで、作るものに合わせて食器を使うのが私の道楽みたいなものだったのだけれど、窯元へ行って高級な陶器を買ってまで食器にこだわるということはしていなかった。けれど、年齢も上がってきて、食器を立て続けに

          立杭陶の郷で丹波焼を買う《エッセイ》

          金木犀 《詩》

          月が大きく欠けたとき 私は曲がった道の夢を見た ぐにゃりぐにゃり 空は低く地面はせり上がり 歩くと足元がぶよぶよと定まらない 道はまるで生きた蛇のように 蠢いている 待って、待って ごめんなさい、私が悪いの 遠くへと 曲がった道を滑るようにゆく我が子は 私に小さな背中しか見せない 遠ざかる我が子へ 差し伸べる私の手に 引き留める術はない 涙がとめどなく溢れ 河になって 見失った我が子の名前を呼ぶ私は 二つ折れになって 渦に巻き込まれる 気がつけば 白い天井と白いカーテ

          金木犀 《詩》

          ワクチン接種旅行支援と有頭大海老の変身《エッセイ》

           コロナ禍で旅行支援キャンペーンを大々的に催していた時のこと。大阪の「いらっしゃいキャンペーン」を使って十三にあるホテルの四川中華レストランによく行った。そこは昔から美味しい中華で有名らしく、隠れ家的で根強いファンがいる。いつ行っても満員ということはほぼなく静かに美味しい料理を食べられるので、私のお気に入りの店だった。  旅行支援というのは驚きのサービスで、一泊のコース料理付きを実質千円から三千円ほどで楽しめたし、お土産のクーポンが一人につき三千円ほどあったので旅にお金をか

          ワクチン接種旅行支援と有頭大海老の変身《エッセイ》

          また小説を書くという決意表明《エッセイ》

           小説に触れる時間が多くなってくると、またむずむずと「小説が書きたい」という気持ちになってくる。  先日小説がとても上手い人を一人見つけてしまった。その人の創り出す世界観がとても好きなのだ。それに、件の彼女。彼女もその人とは少し世界観が違うけれど、もう、話の出だしから上手くて圧倒される。私のべたべたの作品とは別世界だ。  そんな涼やかな風が通り抜けていくような、読んでいて心地のいい作品や、直木賞作家の作品に触れると、書きたい気持ちがむくむくと湧き上がってくる。それでも

          また小説を書くという決意表明《エッセイ》

          急がば回れ、「書き写し」と「読書」に思うこと。《エッセイ》

           最近本の書き写しと読書を始めた。  角田光代の「くまちゃん」を書き写しながら、山本文緒の「ばにらさま」を読む。書き写しには時間がかかるし、作家のタイプが違うほうが飽きが来なくていいと思っている。そんなことを考えながら読み書きしていたら、なんと基本中の基本である段落の付け方を間違えていることに気づいた。  赤っ恥である。いくら心身ともに大変な時期にやっていたとはいえ、それはなかろう。正直なところ泣いた。恥ずかしくて泣いたのである。  過去に関わってきた人たちの多くが、思う

          急がば回れ、「書き写し」と「読書」に思うこと。《エッセイ》

          友人への感謝と読書計画<自己紹介Ⅱ>

           今日、数年ぶりに本を読んでいる。  友人の心優しさに感謝しながら、山本文緒の「ばにらさま」を読んでいる。  彼女の元から逃げ出したのは数年前。  私自身がストレス過多の暮らしの中でまともな文章も書けなくなっていた時。  サイトに投下する作品にも酷いコメントが付き始めて、気持ちが滅入りに滅入っていた時。  彼女の書く小説は、本当にレベルが高くて読んでいて心が震えるような作品ばかりだったのもあって、萎縮し、自分に絶望して、「彼女」と「書くこと」に関わ

          友人への感謝と読書計画<自己紹介Ⅱ>

          庭に落ちた流れ星

           流れ星が私の実家の庭に落ちてきたことがある。  本当にあった話である。  私が二十代の頃の奈良の空は、まだ空気が澄んでいて夜空に星が瞬くのがよく見えた。    その時は、丁度流星群が来ていた時で、漆黒の空を見上げていると、一度に二、三個の流れ星が空を飛び交うのが見えるくらい賑やかだった。 「ロマンチスト」だった乙女の私は、あわよくば素敵な恋人を手に入れようと流れる星に願いをかけるために、縁側から一人で空を見上げていたのだった。  散々願掛けを繰り返して気

          庭に落ちた流れ星

          鉄フライパンで美味しい料理を

          鉄フライパンを購入して二ヶ月くらい経つ。 フッ素樹脂加工のフライパンは傷が付くと発癌性物質が出るという話で持ち切りだから、慌てて鉄フライパンを購入したのだった。 アイリスオーヤマの厚底三ミリの窒化鉄で作られたものを選んだ。 底が薄いとどうしても底部の変形は避けることができないし、窒化鉄製は油返しを毎回しなくてもいいようで、焦げ付きにくいというのが選んだ理由だ。 ただ厚底三ミリともなると、腕が反対側にぐにゃりと曲がりそうなくらい重い。 けれど使っ

          鉄フライパンで美味しい料理を

          サロンジプシー

          「髪を短く、軽くしてください」 いつもそう言ってヘアサロンに写真も持っていくのに、希望通りの髪型になった試しがない。 写真を見せて、 「後ろは短く刈り上げて、横は少し短めに耳にかけられるように」 と伝えてカットしてもらうのだけれど、毎回もわっとというか、もっさりした頭に仕上がる。 長い髪が鬱陶しくなってバッサリと切ってから早八年。 もっさりした頭やヘルメットをかぶったみたいな頭になる度、私の思っている髪型ではないとは言い出せなくて泣き寝入りする。

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          行きそこねた花見と夫の背中

          今日は夫と一緒に花見に行くはずだった。 なのに私は寝起きからすっきりとしていなくて嫌な感じだった。 夫は休日はいつも昼頃から出掛けるので、しぶしぶと九時頃から弁当を作り始めた。 弁当と言っても、卵焼きとタコウインナーに前の日の残り物のコロッケだけとおむすびを三つ。 簡単なものだから、二人分こしらえて三十分もかからなかった。 「何時から行くの」 と訊くと、 「午後一時から」 と呑気な返事が返ってくる。 前日からなぜか体が怠くて仕方がない私は

          行きそこねた花見と夫の背中

          私のタロット占い的中率

          タロット占いを始めたのは私が中二の頃で、何かの少女向け雑誌に付録として付いてきたタロットカードが、夢見がちだった私の心をするりと占領した時からだった。 説明書を見ながらあれこれと占っているうちに少しずつカードの流れが読めるようになってきたので、学校に持って行って昼休みに友人の恋愛占いをするようになっていった。 金銭を目的としていた訳でもなかったし、転校生ということもあって友人が少なかった私にとっては昼休みの時間を潰すにはいい道具になった。 頼まれれば深い事

          私のタロット占い的中率