こんにちは。七緒ようです。 自分では「物書き」と名乗っていますが、いわゆるフリーライターとして活動しています。 「明日の世界をちょっと面白く」をモットーに、今日も文章を書いています 新潟県新潟市出身/岐阜県在住 主な仕事は、個人事業主や中小企業のHPライティング、メルマガ代筆、事業計画書ライティング ほか。 最近では、作家を軸としていくために、コンテスト応募(結果待ち)や童話絵本の自費出版も始めました。 お仕事のスタンス 自分の名前が表に出ないライティングを多くやって
ネットショップで商品を買った。 こうそく便で頼んだら、発送完了メールを受信直後に宅配ボックスに届けられた。 しまった。 間違えて「光速便」にしていた。 ふわトロが売りのプリンは、衝撃と熱で炙りプリンになった。 『54字の物語』という超短編シリーズがあります。 どちらかと言うと児童書寄りのこのシリーズですが、ちょっとその真似事をしようと思った次第です。 なんだか、大喜利みたいで慣れないと難しいですね。 ところで、お急ぎ便ってありますけど、本当に便利だなあと思います。
このうみには たくさんのいきものが くらしています ちいさな ちいさな プランクトンから おおきな おおきな クジラまで ひろい ひろい うみのなかでくらしています クジラのなかには にんげんたちから 「せかいでいちばん こどくなクジラ」とよばれているクジラがいました そのクジラは ひとりで ふかいうみのなかを およいでいました ほかのクジラよりも ちょっとたかいこえの このクジラがやってきたのは むかし むかし おじいちゃんのそのまたおじいちゃんが まだ こどもだ
なあなあ、暇かい?どうせ暇だろ?どっかに行くこともせずに、こうやってワタシの話を聞いているんだから。 まあまあ、怒るなよ。え、お前がどっかに行けって?いや、そうは言ってもこの雨だぜ。雨が止むまでちょっと雨やどりさせてくれよ。何も取って食うつもりはないんだから。 にしても、久しぶりの本格的な雨だよな。ん?雨は嫌いか?そっちのあんたもか?ワタシは結構好きなんだよ、雨。 だって、雨が木々の葉っぱや地面に当たる音って独特だろ。それに、湿ってひんやりした空気が一面に広がっていて
「お会計、543円になります」 財布から千円札を一枚取り出してトレイに置く。これで財布の中に紙のお金が無くなった。次のバイト代が入るのが、明後日。いや、しあさってだったかな。 「457円のお返しです」 受け取った小銭から二枚の一円玉をレジ横の募金箱に入れて、残りをジャラジャラと小銭入れに流し込む。今まで募金した金額で、お茶くらい買えるんじゃないか。 僕は少し横にズレて、値引きシールの付いていたかつ丼がレンジの中で温められるのを待った。 店員の女の子が、いかにも熱そうに
運用開始から現在までのすべてのデータと、他の施設の参考データが入った鉱石メモリが破損し、実験場に降り注いだ。別のメモリをうっかりぶつけてしまった。 「あー、やってしまった。いくら長期保存しやすいといっても、やっぱり媒体そのものが脆かったらダメだよな」 幸いこの時間の担当は自分一人だった。交代まではしばらく時間がある。ちょっと誤魔化しておこうか。 「とりあえず、仮復旧して少し様子見するか」 残った鉱石メモリを集め、形と向きを整えてから実験場の傍らに据えると、観察と記録を続
目の前に置いてある貰い物のプーさんの時計は、21時15分を過ぎようとしていた。 私はモニターの向こうのカジモトに、つい八つ当たりをしてしまった。「やる」と言ったのは自分だけど、こんなに大変だと思わなかった。毎日新作短編を書いて、しかもそれを100日間続けるなんて。 「なあ、知ってるか。秋に赤く色づく桜の葉は、埋められた死体の血を吸ってて、だからあんなに真っ赤に色づくんだよ。これはな、信じていいことなんだ」 小さな出版社の編集者であり、幼馴染でもあるカジモトがZOOMミーテ
世田谷美術館近くのベンチは、立ち並ぶ大きなケヤキが作る日陰で少し涼しく感じる。 用賀駅の自販機で買ったペットボトルのお茶を一口飲んで、カバンからノートとボイスレコーダーと名刺入れを出す。 屋外でのインタビューはあまり経験がなく、少し緊張する。私はもう一口お茶を飲んでからペットボトルをカバンに入れた。 風に葉が揺れる音が心地よい。木のてっぺんで揺れる枝を眺めていると、声を掛けられた。 「あの、沢田さん、ですか?」 声のした方に目を向けると、異様に大きな白いトートバッグを
個性が大切とか、違いを認め合うとか、そんなことを言ってはいても、所詮私たちの個性や違いなんて無いに等しい。隣のこいつも向こうのあいつも、たいして違いなんてないだろう。 もし違いがあっても、違いすぎる場合は認めるのではなく、排除しがちではないだろうか。 あいつもそうだ。あいつは違いが原因でいじめられてた。 あいつは逃げなかった。どうせ暮らす場所は変わらないと言った。 今いる場所で精一杯やるのみだと。 私はあいつの隣で揺れていたい。私はそれで充分だった。 その時、
──そんな目で俺を見るな。俺は悪くないじゃないか。 周囲の目が一斉にこちらに向く。クラスの真ん中で俺を見るあいつから、不穏な期待と軽薄な侮蔑を感じて、つい悪態が口から出そうになる。顎にしびれが残るほど奥歯を噛みしめてから、努めて明るく聞こえるように言った。 「悪かったよ、ごめん。それと、俺の譜面に納得してくれてありがとう」 ──なんで俺が許されて、それを感謝する構図になってるんだよ。ふざけんな。 同調圧力という見えない搾汁機から絞り出された『ありがとう』は、空気の抜けた
暗く深い海に潜って、心臓をゆっくりと動かす。 ──こ゜くん── ──こ゜くん── 一分間に2回しか動かない心臓は、止まりそうなほど必死にゆっくりと血液を動かしている。 寝る前に消し忘れていたアラームの音で目を覚ました。 今日は休日だったのにもったいないことをしたな、と体を起こしながら思った。 朝食を食べながら新聞を読んでいると、ウミガメの心拍数に関する記事が載っていた。 『ウミガメが潜水すると急激に心拍数が少なくなり、水深140メートルを超えると1分間で2回
ごく普通の住宅街の袋小路になった突き当りにその扉はあった。 『13歳以上、お断り』 先週12歳になった僕は、2歳年下の先輩から教えてもらってようやくここに来ることができた。 扉の隣についているベルのボタンを押すと、インターホンから女の子の声で返事があった。 「はい、どちらさまですか」 僕は先輩から教えてもらっていた通りに答える。 「こどもだから、よくわかりません」 少し間があって、インターホンからまた声が聞こえた。 「いま、いくつですか。最新の身分証をカメラに見せて
映画や本を読むことが娯楽であるように、他人の人生や心の内を覗き見るのもある種の快楽ホルモンが出るのだろう。 相談に乗るのが好きだと公言している人たち、すぐに話を聴かせてほしいと言う人たち、落ち込んだ様子のSNS投稿に対して、「私で良ければいつでも話を聴くからね」とコメントする人たち。 私の周りにも何人かいる。その誰もが基本的には良い人で優しく、共感しやすいタイプだ。 そして同時に、無自覚に他人の不幸に興味があり、承認欲求が強い人でもある。あるいは、本当は聴く以上に自分
子どもたちに声を掛けてリビングに来てもらった。 「なーにー?」 まだ小学生の下の子は、無邪気にやってくる。中学生になった上の子は、特に返事もせずにソファに座る。 「きみたちが生まれる前に死んだおじいちゃんの話をします。大事な話だから、ちゃんと聞くように。いいね」 「はーい!」 下の子が返事をする。上の子は、居住まいを正して頷いた。 「約束を守ることが大切だってのは、分かるね?──」 私は言葉を選びながら話し始めた。 ちゃんと約束を守ろうと意識したのは、父の言葉
祝日のマクドナルドは、午後2時を過ぎてもランチタイムかと思うほど混雑していた。店内を見回すと、家族連れも数組いたが、ほとんどが学生やカップルだった。センスのない寄せ植えのように、おしゃべりの花が咲いている。 「なんだかんだ言って、意外と面白かったな。ドラえもんの映画」 俺は向かいに座る友也に言った。 ゴールデンウイークも後半に入ったところで、「見たことない世界を観に行こう」と友也が誘ってきた。3月から公開されているドラえもんの映画は、もうすぐ公開終了が迫っていた。 バイ
場違いな音楽が鳴り出し、男は目を覚ました。 布団の中に入ったまま、腕だけ伸ばして音を頼りに手探りでスマホを探す。怖い存在から隠れるように震えながら鳴いている端末を掴むと、軽く画面に触れて大人しくさせる。 画面には、「5/1(水) 6:02」と表示されている。 また、今日が始まる。 私は身体を起こすと、玄関に向かい、置いてある砂時計をひっくり返す。30分測れる高さ10センチほどの砂時計だ。 音もなく砂が落ちるのを見て、またやってしまったと思う。今日こそルーティンを崩