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サンフランシスコ→シカゴ引っ越し日記

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2021年の夏、サンフランシスコからシカゴへ引っ越しました。一瞬で過ぎ去る気持ちの備忘録です。
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記事一覧

冬の足音が聞こえてくる

冬の足音が聞こえてくる

ガソリン補給を促すランプが点灯し、スタンドへ立ち寄った。羽織りカーディガンの隙間から冷たい風が入ってくる。

忙しなく行き交う車をぼんやり見つめながら、身を縮めて給油の終了を待つ。携帯のお天気アプリには一桁の最低気温が並び、いよいよ本格的に訪れそうな冬の気配に構えた。

近頃、息子が描く絵の木々は、赤や黄色の葉っぱで彩られている。年中温暖なカリフォルニアで生まれた彼にとって、今年は初めて四季を濃く

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非日常が、日常になるとき

非日常が、日常になるとき

水のある暮らしについて思いを馳せている。

大きな川が流れる町で育った。ある女性シンガーの楽曲にも出てくるその川は、春になると曲線に沿って桜が満開になる。ぽつぽつと点在するベンチ。友達と泣きそうな空の下で語ったり、夜風にあたって酔いを覚ましたり、恋が生まれたり、失われたりした。幼少期から10代、20代にかけて、私の日々はその川と共にあった。

30代は海の思い出が多い。私が「カリフォルニアの海」を

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勇敢なファミリーの空模様

勇敢なファミリーの空模様

丁寧な暮らしをする人に憧れている。

部屋の彩りに季節の花を添えるとか、プラム酒を仕込んでいるとか、家族のためにおやつを手作りするとか。いいなぁすごいなぁと心から思う。自分には素質がないので、なおさら。

リビングに絵を飾りたい。でも、どういう絵を選べばいいのか分からなくて、夫に自分が好きな絵でいいんだよと言われても分からなくて、いつまで経っても買えずにいる。だからだろうか、代わりと呼ぶのはおかし

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通りすがりに母国を背負う

通りすがりに母国を背負う

新しい街の暮らしは「ちがう」を集めることから始まる。

シカゴ郊外の空は淡くて、水をたっぷり入れた水彩絵の具みたい。そんなふうに思った次の瞬間、ここは雨がよく降る地域だと気付き、ひとり納得を深める。関連性があるかはわからない。ただ、晴れの日が多いカリフォルニアの空は、パキッとした濃い青だったから。

恋しさは優劣から生まれるわけではない。それほどまでに、以前の生活が私にとって日常過ぎただけ。

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はじめましての街に降り立った

はじめましての街に降り立った

フライト中は、絶好の読書タイム。なんて、優雅な時間は遥か昔のこと。今の私にとって機内は戦場と化した。

どれだけ騒ぎ立てようが泣き喚こうが、絶対に降りられない機体のおそろしさたるや。エネルギー有り余る二人の男子をどのように収めればいいのだろう。そして、触るな、走るな、立つな、騒ぐな〜!!!をどうやってしおらしく言えばいいのだろう。公衆の面前。

迷子になったとき存在が知られやすいように、パッと見て

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寂しさは温もりをもらった証

寂しさは温もりをもらった証

未練は、街よりも人に強く残るらしい。

マリナ油森ちゃんが宿泊しているエリアまで会いに来てくれた。一度日にちを決めたが、うちの次男がかるく風邪を引いてしまい、断念した約束。おかげさまでリベンジできてうれしい。

待ち合わせ場所のスタバはホテルから歩いて行ける。外はあいかわらずの快晴。日陰のテーブルに身を置く。最近どうしてる?を皮切りに、いまの書くスタンスやnoteまわりで思うことなど、つらつらと話

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遅れてきた感傷とレモンの木

遅れてきた感傷とレモンの木

物事に対して現実味を感じづらい。そう気付いたのはいつぐらいだっけ。

あんたってみかんに似ているよね、とうちのお兄ちゃんは言った。みかんは柑橘のほうではなく「あたしンち」という漫画に出てくる女の子のキャラクターのこと。

いつも空想に耽っていて、ふわふわした思考の持ち主。注意力が散漫。うっかりが多い。鍵や財布、パスポートを失くしたエピソードに事欠かない私をよく知っている兄上ならではの見解だ。

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