三鶴

1986年、静岡県生まれ。エッセイを執筆。 高校卒業後、音楽の道へ。東京を中心に全国で…

三鶴

1986年、静岡県生まれ。エッセイを執筆。 高校卒業後、音楽の道へ。東京を中心に全国でライブ活動を展開。CDリリースやメディア出演の経験も多数。 現在、エッセイを中心とした創作活動を行っている。 2023年12月、初の著書「エッセイ・俳句集 海を眺めていた」上梓。

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記事一覧

固定された記事

好きって伝えたかったら、嫌いって書けばいい

 髪を切ってもらいながら、美容師さんの好きな音楽について聴いていたら、あるバンドの名前があがった。私はそのバンドのボーカルを少し知っている。だが、黙ってそのまま…

三鶴
3か月前
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共作小説【白い春~君に贈る歌~】第1章「ホスピス」②

「失礼します」 「あ。はーい」  ずいぶん明るい声だ。ホスピス病棟で、こんなに明るい声を聴いたことがあっただろうか。  カーテンを捲る、ほんの一秒にも満たない時…

三鶴
7日前
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共作小説【白い春~君に贈る歌~】第1章「ホスピス」①

第1章 ホスピス  青春ドラマが苦手である。テレビで目にしてしまったなら、すぐにリモコンの電源ボタンを押すほど拒絶してしまう。  でもそれは、羨ましいからだと最近…

三鶴
11日前
91

三鶴✖️仲川光 共作小説 「白い春~君に贈る歌~」 連載開始のお知らせ

noteの皆様へ いつもご覧くださり、誠にありがとうございます。 この度、温めていた新企画を謹んで発表させていただきます。 三鶴✖️仲川光🌸 共作小説「白い春〜君に…

三鶴
2週間前
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たんぽぽの綿毛が飛ぶように

 深夜、居間に一人でテレビを観ていると、祖母が入ってきた。 「親方は? ねぇ、親方は?」  祖母の口から親方なんて聞いたことがなかった。思い当たる人もいない。何…

三鶴
1か月前
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娘の朝に思い出す事など

 最初に断っておくが、今回のエッセイは、かなり親ばかな記録である。  ある程度はそのことを自覚しているつもりだが、思ったことをそのまま綴りたい。  保育園の送迎…

三鶴
2か月前
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そんな人間だから、君は成功できなかったんだよ

 ナースステーションの前を通ったとき、後ろから声をかけられた。 「あの、私、今度結婚することになったんです」 「それはそれは。おめでとうございます」    若い女…

三鶴
2か月前
101

繋ぎとめるもの、思いとどまらせるもの

 インドカレーが好きである。  特に好きなメニューはバターチキンカレーだ。チーズナンとサフランライス、そして野菜にオレンジ色のドレッシングも添えてあるのが最高で…

三鶴
4か月前
115

万年初心者の料理

 料理が苦手である。  とは言っても二児の父であるため、休日に料理を作ることはある。でも、かなりの確率で失敗する。これはクオリティの問題ではない。料理として成立…

三鶴
4か月前
120

二十年付き合っている強迫性障害のこと

 強迫性障害をご存知だろうか。  私は自分がこの病気になるまで知らなかった。  そして、まさかこんなに長い付き合いになるとは思ってもみなかった。  強迫性障害を簡…

三鶴
4か月前
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死にたいと思ったことはありますか?

 過去に「報われる」について記事を書いた。  この記事にも書いたが、十八歳の頃、よく周囲の人に 「今まで生きてきて報われたことってありますか?」と質問していた。 …

三鶴
5か月前
117

成人式から18年後 ~二十歳の自分へ~

 先日、三十八歳になった。もう少しで四十になる。  成人式から、もう十八年経っているなんて、およそ二倍も生きたなんて、なんだか不思議な気分である。  中学生の頃…

三鶴
5か月前
82

「エッセイ・俳句集 海を眺めていた」出版!

「エッセイ・俳句集 海を眺めていた」を上梓しました。  現在、Amazonで発売中です。  電子書籍:350円(kindle unlimited対応)  ペーパーバック(紙本):880円 ※…

三鶴
5か月前
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怒られた父のクリスマス

 クリスマスを間近に控えたこの季節、街のいたるところがイルミネーションで彩られ、鈴のきらきらしたクリスマスソングが聴こえてくる。小さい子どもを持つ親はプレゼント…

三鶴
5か月前
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Kindle本の出版計画 ~届けられなかった本~

「先生の半生って、おもしろいことばかりだね。ねぇ、先生。先生の半生をもとに小説を書いてよ。俺、先生が書くものだったら読んでみたい」  私の職場であるホスピスの、…

三鶴
5か月前
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ひたむきな、余りにひたむきな ~息子へ~

 息子の幼稚園の生活発表会を観に行ってきた。  今通っている幼稚園は園児がとても少なく、息子の所属する年少クラスは五人しかいない。園児の多様性に富みながらも、先…

三鶴
6か月前
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好きって伝えたかったら、嫌いって書けばいい

好きって伝えたかったら、嫌いって書けばいい

 髪を切ってもらいながら、美容師さんの好きな音楽について聴いていたら、あるバンドの名前があがった。私はそのバンドのボーカルを少し知っている。だが、黙ってそのまま聴いていた。
 美容師さんの話は、だんだんと熱が入る。笑顔で相槌を打ちながら、Sさんのことを考えていた。

 Sさんは日本武道館で歌っていた。
 偉大なミュージシャンたちも、昔の恋人も、彼に夢中だった。
 人は彼を、カリスマボーカリストと呼

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共作小説【白い春~君に贈る歌~】第1章「ホスピス」②

共作小説【白い春~君に贈る歌~】第1章「ホスピス」②

「失礼します」

「あ。はーい」

 ずいぶん明るい声だ。ホスピス病棟で、こんなに明るい声を聴いたことがあっただろうか。
 カーテンを捲る、ほんの一秒にも満たない時間、上野さんの顔を想像する。なぜかわからないが、昔の恋人がつけていた香水の香りがほんのりと鼻をかすめた。が、もちろん、気のせいだった。
  
 真っ白い肌の女性が、ベッドの頭側を上げて座っている。テーブルで本を読んでいたようだ。ブックカ

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共作小説【白い春~君に贈る歌~】第1章「ホスピス」①

共作小説【白い春~君に贈る歌~】第1章「ホスピス」①

第1章 ホスピス
 青春ドラマが苦手である。テレビで目にしてしまったなら、すぐにリモコンの電源ボタンを押すほど拒絶してしまう。
 でもそれは、羨ましいからだと最近ようやく認められるようになった。僕には青春と呼べるほど、美しい時代がなかったのだ。

 愛する人と別れ、病を得て、夢に破れ……いつも憂鬱を抱えていた。振り返ると、後悔ばかりの人生を生きてきた。

 春が青くなかったら、何色になるのか。
 

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三鶴✖️仲川光  共作小説 「白い春~君に贈る歌~」 連載開始のお知らせ

三鶴✖️仲川光 共作小説 「白い春~君に贈る歌~」 連載開始のお知らせ

noteの皆様へ

いつもご覧くださり、誠にありがとうございます。

この度、温めていた新企画を謹んで発表させていただきます。

三鶴✖️仲川光🌸
共作小説「白い春〜君に贈る歌〜」5月最終週〜連載開始✨
(週2回更新予定)

【あらすじ】

【三鶴・仲川光🌸の自己紹介】

おそらく、お互いのアカウントには、三鶴をご存知ない方、仲川光をご存知ない方がいらっしゃると思うため、あらためまして2人の紹

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たんぽぽの綿毛が飛ぶように

たんぽぽの綿毛が飛ぶように

 深夜、居間に一人でテレビを観ていると、祖母が入ってきた。

「親方は? ねぇ、親方は?」

 祖母の口から親方なんて聞いたことがなかった。思い当たる人もいない。何のことを言っているのかわからない。
 こんなとき、どうすればいいのだろうか。
 返答に窮する間に、祖母の注意は切り替わる。少しバランスの悪い歩き方で、暗い廊下を歩き、玄関の方へ向かっていった。
 
「親方はここにいないよ」

 慌てて祖

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娘の朝に思い出す事など

娘の朝に思い出す事など

 最初に断っておくが、今回のエッセイは、かなり親ばかな記録である。
 ある程度はそのことを自覚しているつもりだが、思ったことをそのまま綴りたい。

 保育園の送迎。
 この時期に多くのパパ、ママを悩ませるものの一つだ。
 私も漏れなくその一人である。

 先日、二歳の娘が保育園に入園した。
 保育園に送り届けるのは私の役目である。昨日から出勤前に娘と園に行く生活が始まった。

 一日目、娘は泣かな

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そんな人間だから、君は成功できなかったんだよ

そんな人間だから、君は成功できなかったんだよ

 ナースステーションの前を通ったとき、後ろから声をかけられた。

「あの、私、今度結婚することになったんです」

「それはそれは。おめでとうございます」
 
 若い女性看護師のIさんだった。呼び止めてまで報告するような関係でもない。だから何か話したいことがあるのだと、すぐに察した。

「彼は……Aなんですよ。みつるさん、知ってますよね?」

「あ、ああ……知ってますよ」

 気まずい。もう話を打ち

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繋ぎとめるもの、思いとどまらせるもの

繋ぎとめるもの、思いとどまらせるもの

 インドカレーが好きである。
 特に好きなメニューはバターチキンカレーだ。チーズナンとサフランライス、そして野菜にオレンジ色のドレッシングも添えてあるのが最高である。
 ああ思い浮かべるだけで唾液が分泌されてくる。ここ数年食べていないから、無性に食べたくなる。

 東京に住んでいた頃、隣の駅近くに行きつけのインドカレー屋があった。
 そこへ友人や恋人をよく連れて行き、夜遅くに一人で食べに行くことも

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万年初心者の料理

万年初心者の料理

 料理が苦手である。
 とは言っても二児の父であるため、休日に料理を作ることはある。でも、かなりの確率で失敗する。これはクオリティの問題ではない。料理として成立しているかどうか危ういのだ。簡単な材料や工程の少ないものでも酷いものである。

 たとえば目玉焼きは卵料理の一つらしいが、卵を割ることに失敗しフライパンに殻を入れてしまうし、焼き加減もうまくいかず生っぽかったり、焦げてしまったりする。おまけ

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二十年付き合っている強迫性障害のこと

二十年付き合っている強迫性障害のこと

 強迫性障害をご存知だろうか。
 私は自分がこの病気になるまで知らなかった。
 そして、まさかこんなに長い付き合いになるとは思ってもみなかった。

 強迫性障害を簡単に言うと、病的に極端なマイナスイメージが頭に浮かび、それを打ち消すために何度も同じ行為を繰り返す精神疾患である。

 発症したのは、およそ二十年前。それから現在に至るまでこの病気と付き合っている。私の人生において強迫性障害でいる時間は

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死にたいと思ったことはありますか?

死にたいと思ったことはありますか?

 過去に「報われる」について記事を書いた。

 この記事にも書いたが、十八歳の頃、よく周囲の人に
「今まで生きてきて報われたことってありますか?」と質問していた。

 同じ頃にもう一つ、問いかけていたことがあったのを、ふと思い出した。
 それは、「死にたいと思ったことはありますか?」である。
 この質問をすると、多くの人からこう言われた。

「死にたいって簡単に口にするな」
「生きたくても生きられ

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成人式から18年後 ~二十歳の自分へ~

成人式から18年後 ~二十歳の自分へ~

 先日、三十八歳になった。もう少しで四十になる。
 成人式から、もう十八年経っているなんて、およそ二倍も生きたなんて、なんだか不思議な気分である。

 中学生の頃、理想の成人式を強くイメージしていた。そのときに思い描いていた、二十歳の自分はこんなものである。

1.髪を明るく染めている。
2.歌とギターがプロ並みに上手い。
3.既にミュージシャンとして成功し、有名になっている。
4.上記の要因で人

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「エッセイ・俳句集 海を眺めていた」出版!

「エッセイ・俳句集 海を眺めていた」出版!

「エッセイ・俳句集 海を眺めていた」を上梓しました。
 現在、Amazonで発売中です。

 電子書籍:350円(kindle unlimited対応)
 ペーパーバック(紙本):880円
※お値段が高いですし、著者にとっても全然元は取れないのですが、それでも個人的に紙本をお勧めします!

 出版に至るまで、なかなか大変だった。Kindle本の作成方法について全く知識がなく、パソコンも苦手。そんな

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怒られた父のクリスマス

怒られた父のクリスマス

 クリスマスを間近に控えたこの季節、街のいたるところがイルミネーションで彩られ、鈴のきらきらしたクリスマスソングが聴こえてくる。小さい子どもを持つ親はプレゼントやケーキの準備に忙しい。
 この時期になると、よく思い出すことがある。
 それはまだ私が小学二年生の頃、両親と兄弟三人でデパートに行ったときのことだ。

 そのときもデパートは華やかにクリスマス一色で賑わっていた。
 クリスマス限定のキャン

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Kindle本の出版計画 ~届けられなかった本~

Kindle本の出版計画 ~届けられなかった本~

「先生の半生って、おもしろいことばかりだね。ねぇ、先生。先生の半生をもとに小説を書いてよ。俺、先生が書くものだったら読んでみたい」

 私の職場であるホスピスの、患者Jさんからいただいた言葉である。

「いやいや、無理ですよ。僕なんかが書けるわけないじゃないですか。読む専門ですよ」

 私は照れる気持ちを隠しながら返答した。

 Jさんは、日本文学をこよなく愛し、私が病室を訪ねるといつも本を読んで

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ひたむきな、余りにひたむきな ~息子へ~

ひたむきな、余りにひたむきな ~息子へ~

 息子の幼稚園の生活発表会を観に行ってきた。
 今通っている幼稚園は園児がとても少なく、息子の所属する年少クラスは五人しかいない。園児の多様性に富みながらも、先生方の尽力のおかげで個性の発揮できる環境が整っている。以前の園で過剰適応になってしまった息子も、現在は徐々に自分らしさを表現できるようになってきているようだ。

 生活発表会では先生と園児たちで作った歌や踊り、劇などを舞台で披露する。わが子

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