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整数論とアラビア数字

~日本における代数的整数論の開拓者~ 楽譜が無くても音楽は存在し、文字が無くても民話は存在する。同じように数詞が無くても数学は存在するのである。 紀元前3世紀頃、日本には文字も数詞もなかった。古代ギリシャやローマにおいても、アルファベットを組み立てて数字を表していた。漢数字は亀甲文字由来で中国が発祥地である。 算用数字とも呼ばれるアラビア数字が普及していない社会で「数論」は成立できるのだろうか。 <アラビア数字の起源と普及> アラビア数字の起源はインドにあるという

    • 作図の話題二つ

      <三平方の定理の始まり> 古代バビロニア王国(紀元前1830~紀元前1530)の時代の粘土板には、すでに「三平方の定理」に関する記述が残されているという。 その後、ピタゴラスが発見したという逸話が生まれ、ヨーロッパでは「ピタゴラスの定理」と呼ばれるようになる。 また、古代中国では「鈎股弦の定理」と呼ばれ、日本にも伝えられる。 <和算の中心から規矩術へ> そして、日本では江戸時代に「和算」の中心となる定理として活用・発展する。 その実用的な発展の一つが、木造大工の技術である「

      • 五角形と円の平面充填率

        <タイル張り> 同じ形、大きさの図形で隙間なく平面を埋め尽くすことは、古代ギリシャ時代から「タイル張り」の問題として研究されてきた。 そして、正多角形で平面を「隙間なく埋め尽くすこと」(以後「充填」とする)ができるのは、正三角形、正四角形、正六角形の3種のみであることが明らかになる。 理由は簡単で、正三角形の一つの内角は、「60」度であり、正四角形、正五角形、正六角形の一つの内角は「90,108,120」である。そうすると、正三角形の一つの頂点には6個の正三角形が集まると「

        • 「数字と計算」とラマヌジャン

          <数字の起源> 数字の起源は約二万年前だという。1960年にナイル河源流のコンゴで発見された「イシャンゴの骨」と呼ばれるヒヒの腓骨に刻まれたモノが最古の数字であると言われている。 ちなみに、この頃には「原文字」は存在したかも知れないが体系化された「文字の出現」は約六千年前だと言われている。メソポタミアのシュメール人の楔形文字が残されている。 <計算の起源を示すものか> 記録を残すためだけではなく、数字と数字の関係が分かる記述は約六千年前のメソポタミア文明として、楔形文字の

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          2本

        記事

          「ひ」から拡張する数体

          <はじめに>  はる、なつ、あき、ふゆ。これらの四季を表す言葉は規則正しく「2音」である。そして、「はる」と「あき」は1音目にアクセントがあり、「なつ」と「ふゆ」には2音目にアクセントがある。 なぜだろう。そんなことを考えると、言葉には歴史があり、現在の言葉に至る経緯があることが分かる。 四季を表す言葉も同時に発生したのではなく、「はる」と「あき」が「なつ」や「ふゆ」より早いのかも知れない。 数万年前に、日本人は芽吹きに感動して「はる」を、収穫の喜びと西日の美しさに「あき」

          「ひ」から拡張する数体

          二つの成長(自己相似性)

          生物の「成長」は細胞数が増え、体が大きくなることだと考えられている。 しかし、受精卵の「卵割期」はそうではない。 <卵割期> 受精卵の初期の細胞分裂の様子は不思議である。受精卵の大きさは一定のまま、細胞の数が「2」、「4」、「8」と増加する。したがって、個々の細胞はどんどん小さくなる。それで、この時期の細胞分裂を「卵割」と呼ぶ。次図は40時間経過したヒトの受精卵の様子を表しているという。 <外部に自己相似な図形が・・・> 生物を含めて、鉱物や結晶などあらゆる自然界の「成長

          二つの成長(自己相似性)

          視覚

          私たちの視覚には、目の構造ばかりではなく脳の働きも関わっているらしい。それで、いろいろな錯視が起こるという。 下図は最も単純なもので、同じ長さのA,Bでも、「B(上下)が長く見える」という錯視の例である。 <錯視ではないが・・・> ここでは「錯視」ではないが、視覚が陥りやすい傾向性について考える。 それは、形を捉える時に「面積や体積に重点が置かれる」ということで、「輪郭線の長さ」は軽視されがちである、ということである。 私たちは「山」を見る時に、稜線の美しさに感動しつつも

          偶数と奇数(2)

          <ゴールドバッハ予想> 旧プロイセン王国(首都はベルリン)に生まれたクリスチャン・ゴールドバッハ(1690~1764)は、数学者オイラーに宛てた書簡の中で次のように述べている。 「四以上の全ての偶数は二つの素数の和で表せる」 これが、ゴールドバッハ予想と呼ばれるもので、2023年現在も証明されていない。 (例) 4=2+2    6=3+3    8=3+5 その後、ゴールドバッハは次のような「弱いゴールドバッハ予想」を発表する。 「7以上の全ての奇数は三個の素数の和で表

          偶数と奇数(2)

          偶数と奇数(1)

          自然数(1、2、3、・・・)を、偶数と奇数に分けて考え始めたのはいつ頃のことだったのだろうか。記録に残っているものでは、古代ギリシャ時代のピタゴラス学派によるものだという。 また、他説によれば、偶数の源は「ペア」であり、古代ギリシャ時代より遥かに遠い時代に遡るはずだ、という。 そして、偶数、奇数に付随する「文化的な意味」は、今日まで続いている。 <偶数と奇数の文化> 例えば、日本では「奇数」が「善」で、祝金の額は「一、三、五」がヨシとされる。 それに対して、西洋では「偶数

          偶数と奇数(1)

          1から9までの数字で遊ぶ

          1から9までの「9個の自然数」だけからでも 数学の世界を覗くことができる。 ここでは「数字遊び」を楽しんでみたい。 まず、助走として、「1,2,3,4」の4個の数字を考える。 4個の合計は「1+2+3+4=10」であり、「(1+4)+ (2+3)」と和を2等分することができる。 このことをもとに、次のように4個の数字を並べることができる。 一行目と二行目の和が「5」で等しい。 ところが、一列目の和は「3」で、二列目の和は「7」となり異なる。「2」と「3」を入れ替えても列の

          1から9までの数字で遊ぶ

          数学は誰でも好き

          <数学は誰でも好きなはず!と、その根拠を示す旅を続ける。> <描く> 小学1年の子どもたちに(オトナでもよい)、それぞれ九枚の正方形のカードを渡して「一番好きな並べ方」を示してもらう。カードには異なる色が塗ってある。 すると、Aさん、Bさん、Cさん、・・・がそれぞれ異なる並べ方を次のように示してくれる。(一部の例示) ここには、子どもたち一人ひとりの個性に満ちた表現がある。 このような「遊び」は、子どもたちを「○○好き」にする。 <書く> さて次に、同じ九枚のカードに

          数学は誰でも好き

          素数の意味

          重力加速度「g」(g=9.80665m/s^2)は「物理定数」の一つである。真空中の光速を表す「c」(c=299792458m/s)も代表的な物理定数である。 すなわち、「物理定数」は地球の質量や光の速さなど「モノの性質」を単位の付いた「量」で表している。 それに対して、「数学定数」は「モノの量を算出する」根拠になることもできるが、本来の意味は、「モノの世界」とは異なる「数の世界」の「キーポイント」となる実数や複素数のことである。分かり易い数学定数としては「0」や「1」が

          素数の意味

          コラッツ予想の分析

          自然数において、偶数は「2で割り」、奇数は「3倍して1を加える」という作業を続けると「すべての自然数は1に至る」というのがコラッツ(1910~1990)の予想である。 例えば、「5」は奇数だから「3倍して1を加える」と偶数になる。それを2で割ると「8」である。「8」は偶数だから「2で割る」と「4」になり、・・・と続けると次のように「5回のステップ」で「1」に辿り着く。 5 → 16 → 8 → 4 → 2 → 1 途中の最大値は「16」になるが、この例を見るまでもなく、「2

          コラッツ予想の分析

          巨樹としての自然数

          樹齢は数百年、地上から「130cm」の位置の幹周が「300cm以上」の生きている大木を「巨樹」と呼ぶらしい。 自然数の歴史は千年を超え、今なお「生きて」いる。そして、自然数の姿は多様で「樹木」の姿を見せることがある。そんな類似点から、自然数を巨樹と呼んでみたいのである。 自然数は直線状に「1,2,3,・・・」と並んでいる。あるいは螺旋状に並び広がっている、などのイメージがもたれている。 そして、具体的に自然数を並べてみると、いろいろな並べ方があることに気が付く。一行

          巨樹としての自然数

          素数のちから

           素数は、自然数の中に散在している。一から百までの自然数の中には25個の素数が存在している。 その25個の素数を、自然数の中から合成数をふるい落として浮かび上がらせる「エラトステネスの篩」に必要な素数は「2、3、5,7」の4個で十分なのである。すごい威力である。 また、素因数分解を用いれば、全ての自然数は「素数と乗法」だけで表現できる。自然数全体の姿は素数と乗法によって明らかにできるかも知れない。素数の力は、はかり知れない。 さらに、素数の力を再認識させられるものに、

          素数のちから

          自然数を4行に並べる

          自然数(1,2,3,・・・)は一直線状に並んでいるイメージが強い。しかし、螺旋状に並べたり、2行、3行、4行、・・・に並べることもできる。 上図のように自然数を4行に並べた場合、第一行は「4で割る」と「1余る数」が並ぶ。同様に、第二行は「2余る数」であり、第三行は「3余る数」で、第四行は「余りが0」の4の倍数が並ぶ。  余りで分類すると「剰余類」となり集合の記号で示すと{0,1,2,3}となる。  さて、上図を見ると、「2」以外の素数は第一行と第三行に存在している。特に第三

          自然数を4行に並べる