水鳥葛(mizudori kuzu)

一週間ごとの日記と短歌(時々俳句も)を主に投稿しています。日本近代文学、特に太宰治や坂…

水鳥葛(mizudori kuzu)

一週間ごとの日記と短歌(時々俳句も)を主に投稿しています。日本近代文学、特に太宰治や坂口安吾、檀一雄といった無頼派についての記事も書きます。音楽やお笑いの話題も少々。お酒も飲みます。時々ちいさな旅をします。 お便りはacidmongoloidman303@gmail.comまで。

マガジン

最近の記事

檀一雄「埋葬者」に登場するオフイ婆アについて

 太宰治研究で有名な相馬正一の著書に、厚さが辞書ほどもある檀一雄の評伝『檀一雄 言語芸術に命を賭けた男』があります。太宰治と違って現在でも刊行されている文庫本が多いわけではない檀一雄の作品の引用を頻繁に挟みながら、檀一雄の生涯と文芸について批評を交えつつ紹介した労作です。  その中で「檀文学の最高傑作と評されている」と紹介されているのが、太平洋戦争中に檀一雄が陸軍報道班員として中国を巡っている間に結核に感染してしまった初めの妻リツ子の看病とその死を描いた「リツ子・その愛」「

    • 檀一雄邸で振る舞われた「檀流クッキング」フルコース

       檀一雄が参加した坂口安吾についての座談会が収録されているということで、古本の通販サイトで『月刊噂 昭和四十八年三月号』を購入しました。  この本の、署名が無いので編集部が書いていると思われる「某月某夜」というコーナーに興味深い記述を発見しました。  それは「檀亭のフルコース」という題の文章で、檀一雄が自宅に友人や編集者を招いて行った饗宴で出されたメニューが列挙されています。下にそれを書き出してみましょう。 ①バーソー(豚肉とネギに香料を加えていためぬいたもの)  こ

      • 【水鳥の歌と生活】2024年5月19日日曜〜5月25日土曜

         五月十九日日曜  七時起床。多少体の重さはあるが二日酔いにはなっていない。良かった。鼻と喉の状態は快方には向かっているものの症状は消えていない。  radikoで「オードリーのオールナイトニッポン」を聴きながら朝の支度をする。  一週間の日記をnoteに投稿する。  仕事のBGMはスカート『アナザー・ストーリー』にする。新型コロナウィルスの影響を受けて経営が逼迫していた全国のライブハウスを支援するためのプロジェクト「MUSIC UNITES AGAINST COV

        • 【水鳥の歌と生活】2024年5月12日日曜〜5月18日土曜

           五月十二日日曜  七時起床。radikoで「オードリーのオールナイトニッポン」を聴きながら朝の支度をする。  一週間の日記をnoteに投稿する。  仕事のBGMはスカート『CALL』にする。そういえばスカートのアルバムをちゃんと聴いたことがなかった。美しいメロディのポップソング。  仕事を終えてPodcastで「トムブラウンのニッポン放送圧縮計画」を聴きながら温泉に行きツルヤで買い物をして家で晩酌をする。烏賊刺身、烏賊納豆、焼き鳥(ねぎま)を食べて、七笑を二合飲む

        檀一雄「埋葬者」に登場するオフイ婆アについて

        マガジン

        • 近代文学の話
          12本
        • ひとりごちる水鳥
          1本
        • 創作
          3本
        • 水鳥の歌と生活
          46本
        • 水鳥の本棚
          10本
        • 水鳥のアルバム
          18本

        記事

          【読書】木村弘一『安吾と檀(日本短編小説叢書)』を読んだ

           医科大学に通いながら小説を書いていた筆者の、坂口安吾と檀一雄との交流を書いた随筆二篇と、筆者自身の体験に材を取ったと思われる短編小説二篇を収録。Amazonで買った古本だが、町田市図書館の除籍本らしい。資料としても作品としてもとても興味深かった。 「安吾との出会い」  医科大学在学中の昭和二十一年に坂口安吾の「女体」を読んで感銘を受けた筆者は二十二年七月七日に当時目蒲線矢口渡駅にあった坂口安吾邸で初めて安吾と面会し、三時間の対話をする。そこで気に入られたのか、のちに安

          【読書】木村弘一『安吾と檀(日本短編小説叢書)』を読んだ

          【読書】坂口綱男『安吾と三千代と四十の豚児と』を読んだ

           坂口安吾にまつわるエピソードを集めようと思いAmazonに出品されている古本を十冊ほど注文した。  三千代夫人による『クラクラ日記』『追憶 坂口安吾』はすでに持っていたので、安吾の死後に残された証言や作品から書かれた評伝をいくつか買った。それらは文量がたっぷりしていてすぐに読み終わるようなものではないので、資料として必要に応じて飛ばし読みしたり、時間がある時にゆっくり読んでいこうと思っている。  同時代の作家やのちの研究者以外の本として、ご子息坂口綱男氏の『安吾と三千代

          【読書】坂口綱男『安吾と三千代と四十の豚児と』を読んだ

          【読書】山岸外史『詩と真実』を読んだ

           見たものをあるがままに書く。それは時代が要請する道徳や常識の制限を受けないということであり、美という枠に収めないことでもある。  自身も詩を書く評論家、山岸外史がボードレール、北原白秋、与謝野晶子、ドストエフスキー、ロダンの作品を挙げながら「真実」を表現するとはどういうことなのか思索する。  ここで挙げられている作家の作品はほとんど読んだことがなかったが、特に北原白秋の詩をもっと読んでみたいと思った。「まざあ・ぐうす」の翻訳が家にあったはずだ。でも翻訳ではない白秋自身の

          【読書】山岸外史『詩と真実』を読んだ

          【読書】山岸外史『芥川龍之介』を読んだ

           この『芥川龍之介』は山岸外史の二冊目の長編評論で、昭和十五年(1940年)三月二十日にぐろりあ・そさえて社の新ぐろりあ叢書の一冊として刊行された。棟方志功が装丁をしている。  以前に読んだ池内規之『評伝・山岸外史』によると、当時まだ芥川龍之介の人と文学を単行本としてまとめて論じたものはほとんど初めてといっていいほどであり、視点も新しかったため好評で瞬く間に版を重ね、十三版にもなったという。また戦後改めて再刊、文庫本での再刊、またその文庫本の再刊がなされている。現在廃刊にな

          【読書】山岸外史『芥川龍之介』を読んだ

          【読書】池内規行『評伝・山岸外史』を読んだ

           私は太宰治の作品や檀一雄「小説 太宰治」で山岸外史を知り、これまでには山岸の「人間 太宰治」「人間キリスト記」を読んだだけなのだが、物事をサッパリと見極めて楽天的理想主義とも言える言葉や振舞いを貫く山岸に興味があった。  この評伝では幼少期のやんちゃな山岸からなかなか文壇に認められず貧窮して筆を折りかけた時期、太宰と出会い青い花・日本浪曼派・コギト等で活躍した時期、戦争を経て政治と文学について悩み書きあぐねた時期、青い花を復活させ後進に目をかけた晩年が書かれていて正に「人

          【読書】池内規行『評伝・山岸外史』を読んだ

          +30

          【水鳥のアルバム】2024年5月16日ーー飛騨大鍾乳洞

          【水鳥のアルバム】2024年5月16日ーー飛騨大鍾乳洞

          +29
          +30

          【水鳥のアルバム】2024年5月16日ーー木曽福島宿〜飛騨

          【水鳥のアルバム】2024年5月16日ーー木曽福島宿〜飛騨

          +29
          +30

          【水鳥のアルバム】2024年5月15日ーー木曽町ねざめの床

          【水鳥のアルバム】2024年5月15日ーー木曽町ねざめの床

          +29

          【読書】城山三郎『そうか、もう君はいないのか』を読んだ

           城山三郎『そうか、もう君はいないのか』を読み終えた。  後半になるにつれ少し散漫な印象があって終わりも唐突なように感じたのだが、あとがきで未完の原稿群を編集したものだということがわかった。城山自身も癌によってこの小説を書き終えることができなかったのだという。内容は穏やかな抑制の効いた回想で、過度な感傷が無いのでするすると読めた。それでいて亡くなった妻への想いは行間に溢れていて、城山にとって理想的な「作家の妻」であり何より魅力的な女性だったんだなと自然に好感が湧いた。  

          【読書】城山三郎『そうか、もう君はいないのか』を読んだ

          【水鳥の歌と生活】2024年5月5日日曜〜5月11日土曜

           五月五日日曜  七時起床。radikoで「オードリーのオールナイトニッポン」を聴きながら朝の支度をする。   揚雲雀晴れて頭が痛いほど  一週間の日記をnoteに投稿する。  仕事のBGMはYazoo『In Your Room』にする。2008年に再結成した際にリリースしたコンピレーションアルバムで、二枚のオリジナルアルバムとシングルのカップリング曲、レア音源をまとめたものとのこと。  午前中は仕事が無かったので、radikoで「問わず語りの神田伯山」を聴きなが

          【水鳥の歌と生活】2024年5月5日日曜〜5月11日土曜

          【水鳥の歌と生活】2024年4月28日日曜〜5月4日土曜

           四月二十八日日曜  七時起床。radikoで「オードリーのオールナイトニッポン」を聴きながら朝の支度をする。  一週間の日記をnoteに投稿する。  仕事のBGMは黒沢健一『V.S.G.P』にする。ストリングスを従えて行ったライブ音源とそこにさらに多重録音を施した音源の二枚組。サブスクリプションでの再生なので、多重録音、ライブと続いて流れるのが便利だ。   あの時の言葉を何に変えればと詮無きことをまた考える   怒られても不遜であれよカウンターカルチャーを見て育

          【水鳥の歌と生活】2024年4月28日日曜〜5月4日土曜

          霜降り明星せいやの執筆スタイルは檀一雄のデビュー小説と一緒

           先日、Xのタイムラインに霜降り明星のせいや氏の次のようなポストが流れてきました。  確かに、現代の作家のほとんどはもう原稿用紙などに小説を手書きすることはなさそうですし、PCやタブレット端末で執筆をした方が便利で書くスピードも早くなりそうです。  ただ、私は近代文学が好きなので原稿用紙に手書きをしていた作家の本ばかり読んでいます。そこでふと思い出しました、白紙に手書きで小説を書いたという話を読んだことがあるなと。  それは緒方健主演で映画化もされた小説「火宅の人」の作

          霜降り明星せいやの執筆スタイルは檀一雄のデビュー小説と一緒