人事で一番大切なこと(著・西尾太)
人事って何ができる人でしょうか。
わたしは本社・事業本部・生産工場とさまざま場面で、「人事」と「事業」がかかわりあう場面に出会い、「人事」はどのような専門性や特殊性で「事業」に影響を与えるのか、うまく表現できない自分がいました。2023年末にこの本と出会い、今更ですが自分の価値観が少し整理され、他者にうまく話せるようになったと感じさせてくれた一冊です。
とても多くの学びがあり、想いを書ききれないのですが少し本書の一文を引用しながら感想をご紹介します。
とても興味深い2つの「問い」から始まります。思わず、そうだよなと感じてしまいました。所属する企業にとって「いい人」はどのような人なのか?人事はこのことの対峙から始まると日々感じていた自分を振り返りました。
従業員100人の企業には100通りのキャリア(人生)があり、それぞれの経験から「いい人」が定義されていきます。まさに100人の「いい人」が頭の中に想定されているのだと思いますが、人事が100人の想いを整えていくと「明るく元気で素直な人」に近づいていき、より一般化されていきます。
ただ「みんなにとっていい人」を採用しようとしても、求職者からは自分ごとにならず出会いは本当の意味の「join the team」にはつながらないと考えています。
「わたしたちだけの”いい人”を求めていく」ことがたった一人の人材と出会う人事の役割なんだと改めて感じた一文でした。
ちなみに別の方の本では、いい人定義を絞り込まず「深く心の底を掴みにいく」お話もあり、感銘を受けている自分もいるので複雑です。
人事を伝えるむずかしさ
人事をうまく表現できないことの中に、人事職の専門性が人に伝わりにくいことがあると思っています。本書にその要素が2つの構造で書き示されていました。
ひとつめは「考え方」が大切な職種だということです。本書でも「人事の軸=人事ポリシー」の作り方がChapter3でくわしく説明されています。人事がいかに経営に影響を与えるか、膨大な人事施策を1つの人事ポリシーにつなげていくのかは難しいテーマです。そのポリシーが常に表出するのではなく、先ほどの一般化した考えでも目の前の仕事は成り立っているように見えるので、専門性や特殊性が伝わりにくいのだと考えています。
ふたつめは、構造の多様性です。本書ではわかりやすい表現で的確に分類していただいています。人事職は幅の広い職種です。従業員はいろいろなシチュエーションで人事と接するので、面接?評価?配置?キャリア?研修?など「なんとなく人事って・わたしにとって人事って」という認識でまとめられるのでしょう。
後半は・・・
このように人事という仕事を大きな概念から的確に指し示してくれている本書ですが、後半は具体的な人事アクションに対しても書き示してくれています。人事ポリシーという軸をもとに、ベタ人事からおもしろ人事まで、ひとつひとつがこれまたわかりやすい。
人事はもっともロジックから遠いように見え、優秀なビジネスパーソンであればできそうな分野でありますが、わたしは、世の中にある心理学・社会学・組織学・経済心理学など数多くの論文や理論の組み合わせであると考えています。今は少し人事とは距離を置いていますが、常に学びだなと感じています。本書はまさに専門家による専門誌として楽しませていただいた一冊です。
感謝。
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