白山 律

詩と小説を書きます。

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    今までに書いた詩をまとめています。

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    これまでに書いた小説をまとめています。短めなのですぐに読めると思います。気軽に読んでみてください。

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記事一覧

宇宙と、それに見合う価値について

君に命の輝きがありますように。 いつか、この星が壊れて無くなっても、 君はきっと無事で、まるで何もなかったかのように笑っているんだと思う。 ここから見えるあの小…

白山 律
5か月前

手に収まるほどの飛行機

昼下がり、ふと、窓の外を眺めていると、丁度飛行機が飛んでいるのが見えた。 真っ青な空に、白く細く伸びる飛行機雲。まるで写真の一枚のようだと私は思った。 今日は水…

白山 律
10か月前

親愛なる君へ捧ぐ

真っ暗な宇宙に、君がやってきて、呟く。 それは小さくて僕には聞こえなかったけど、それで良いのだと思う。 ありがとう、ここまできてくれて。 君が君でいてくれてあり…

白山 律
1年前
2

自然と人工の共存

散歩をしていると、電信柱の電線に鳥が3羽、間隔に並んでいるのが見えた。 何だか可愛く思え、しばらく眺めていたのだが、あまりにも動かないので少し心配になってきた。…

白山 律
1年前

また繰り返す

夜は誰にでも来る、ということを、すっかり忘れていた。 そして、それ以外の「平等」を私は知らないことも。 薄暗い路地裏のゴミ箱の上で、猫が欠伸をした。

白山 律
1年前
1

負の衝動

溢れてくることがある。 それは、まるで傷口から流れ続ける血のように、 いつまでも止まることはないんじゃないかと、 そう思わせるに十分なほどで、 私は怖くなって、…

白山 律
1年前
2

SNS疲れの人たちのための宿

その日の仕事が終わり、自分の部屋に戻ってきたオオノは、大きく伸びをし、机の上のパソコンを開いた。 オオノは、ある宿泊施設を経営している。 デジタルデトックスの店…

白山 律
1年前

僕のたった一つの

”悲しみの海”を眺めている。 足元には白く優しい砂浜。 穏やかな波の音。 海の上には大きな満月が浮かんでいる。 僕は、この海の中に棲む生物を想像する。 小さな蟹…

白山 律
1年前
1

主観的多様性

カフェで、男性2人が話をしている。 男1:…というわけでさ、最近規制が強くなったじゃん。その、多様性とか言って女性を性的な文脈で使ってはならないとか。面倒臭くな…

白山 律
1年前

眠った後に行く世界

気が付くと私は、白い部屋にいた。あたりには何もない。 「お久しぶりです。またお会いしましたね」 私の目の先には、スーツを着た羊が立っていた。 「…お会いしたこと…

白山 律
1年前
1

夜、とそれに付随する感性

乾いたそれの成れの果てに 君は何を思う。 運命を恨むか。 それすらも辛かろう。 この荒野に吹く夜風は 今日も冷たく まるでわたしたちを笑っているかのようで。 血…

白山 律
1年前

深い海の先に

海の近くを歩いていると、「こっちこっち」と声が聞こえた。そこには白い髭を生やした老人がいて、ちょうど防波堤の向こうから顔を出す形になっている。その老人が立ってい…

白山 律
1年前
1

優しい日に

今日もまた、私は一人死にました。 まるで木漏れ日の中、動物たちが安心して眠るように、 私は一人死んだのです。 誰一人として同じ人間はいないように、 全く同じ私は…

白山 律
1年前
1

流れる時間

子供たちの笑い声が聞こえる。 野原に敷いたブルーシートの上で、持ってきたチーズを一口齧ると そのブルーシートが、風で少し靡きました。 時間がゆっくり流れているよ…

白山 律
1年前

果て

人間は愚かだと認識させるには 十分すぎるほどの出来事が この世の中には沢山あって それはある意味、人間が発展しすぎたからかもしれない、 などと思ってみたりする。…

白山 律
1年前

変わらない空

ふと、スマホから目を外して、 青空に一筋の雲をみた時、 私は途方もない寂しさを感じてしまって きっとそれは、 そこに懐かしさを感じたからだと思いました ふと、夏…

白山 律
1年前
1
宇宙と、それに見合う価値について

宇宙と、それに見合う価値について

君に命の輝きがありますように。

いつか、この星が壊れて無くなっても、

君はきっと無事で、まるで何もなかったかのように笑っているんだと思う。

ここから見えるあの小さな星は、今日もここであなたを見つめている。

明日も、きっと晴れる。

雨が降ったのは、どのくらい前だったかな。

今ここに届いている光は、何万年も前の光だと言うよ。

過去を思い出して、小雨。

手に収まるほどの飛行機

手に収まるほどの飛行機

昼下がり、ふと、窓の外を眺めていると、丁度飛行機が飛んでいるのが見えた。

真っ青な空に、白く細く伸びる飛行機雲。まるで写真の一枚のようだと私は思った。

今日は水曜日だが授業を入れていないため、1日休みの日だった。大学生は人生の夏休みと言われるわけだ。

外で声がしたので顔だけ窓から出して上から眺めると、数人の学生が自転車でこのアパートの前を通り過ぎていった。

今日は昼から古本屋に行って面白そ

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親愛なる君へ捧ぐ

親愛なる君へ捧ぐ

真っ暗な宇宙に、君がやってきて、呟く。

それは小さくて僕には聞こえなかったけど、それで良いのだと思う。

ありがとう、ここまできてくれて。

君が君でいてくれてありがとう、と僕は思う。

僕を忘れてくれてありがとう。

僕を探さないでくれてありがとう。

君ではない君と、いつまでも静かに見つめ合える。

だからこの宇宙の星はいつまでも眩しく綺麗に輝いて。

この流れ星もない閉鎖的な空間で。

自然と人工の共存

散歩をしていると、電信柱の電線に鳥が3羽、間隔に並んでいるのが見えた。

何だか可愛く思え、しばらく眺めていたのだが、あまりにも動かないので少し心配になってきた。

私はスマホを取り出し、写真を撮ってからその鳥を拡大して観察してみた。

…普通の鳥だが、どうも生き物の感じがしない。

自分の気のせいかもしれないし、どこにそう感じるのかと言われれば困ってしまうのだが…。

スマホから顔を上げ、鳥の方

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また繰り返す

また繰り返す

夜は誰にでも来る、ということを、すっかり忘れていた。

そして、それ以外の「平等」を私は知らないことも。

薄暗い路地裏のゴミ箱の上で、猫が欠伸をした。

負の衝動

負の衝動

溢れてくることがある。

それは、まるで傷口から流れ続ける血のように、

いつまでも止まることはないんじゃないかと、

そう思わせるに十分なほどで、

私は怖くなって、覆ってしまいたくなるけれど

そんなことでは効果がないような

私は何もできないような気がして

立ち竦んでしまうのだ。

流れた血は、どこへ行く?

地面に染み込んで、何になる?

血の止まらない傷を抑えながら、

それでも歩こう

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SNS疲れの人たちのための宿

SNS疲れの人たちのための宿

その日の仕事が終わり、自分の部屋に戻ってきたオオノは、大きく伸びをし、机の上のパソコンを開いた。

オオノは、ある宿泊施設を経営している。

デジタルデトックスの店。すなわち、スマホ、特にSNSに振り回されていると感じている人たちに対し、社会の喧騒から離れてリラックスしてもらう趣旨のものだ。

一応断っておくが、これは病院ではなく、あくまでサービス業である。本当に真剣に悩んでいるのであれば専門の病

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僕のたった一つの

僕のたった一つの

”悲しみの海”を眺めている。

足元には白く優しい砂浜。

穏やかな波の音。

海の上には大きな満月が浮かんでいる。

僕は、この海の中に棲む生物を想像する。

小さな蟹たちの泡が、波に揉まれて消えていく。

あるいは、岩穴に潜む鱓。

あるいは、水中でひっそり漂う海月。

波が大きくなった気がする。

まるで僕を呼んでいるみたいだ。

やっと、ちゃんと向かい合う時が来たのかも知れない。

足を浸

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主観的多様性

カフェで、男性2人が話をしている。

男1:…というわけでさ、最近規制が強くなったじゃん。その、多様性とか言って女性を性的な文脈で使ってはならないとか。面倒臭くなったんだよね。俺もある程度考慮に入れて入れているはずなんだけど、どうしても批判する人が一定数いてさ。これは性的だとか何とか。どうしても批判が来るんだよな。

男2:ほぉ。

男1:それで俺、考えたわけ。過激に批判した人たちを集めて、そこで

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眠った後に行く世界

眠った後に行く世界

気が付くと私は、白い部屋にいた。あたりには何もない。

「お久しぶりです。またお会いしましたね」

私の目の先には、スーツを着た羊が立っていた。

「…お会いしたことありましたっけ?」

私が恐る恐る尋ねると、その羊は

「ええ。しかし覚えていないのは仕方のないことですからね」

と言った。

「すいません。そもそもここはどこなんですか?」

と聞くと、

「ここは、夢の中です」

と答えが返って

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夜、とそれに付随する感性

夜、とそれに付随する感性

乾いたそれの成れの果てに

君は何を思う。

運命を恨むか。

それすらも辛かろう。

この荒野に吹く夜風は

今日も冷たく

まるでわたしたちを笑っているかのようで。

血の流れるトカゲに目を向けた私は

どうして彼を見捨てることができようか。

呻く声がまたひとつ消えた。

灯りはまだ遠く、

夜明けは訪れない。

深い海の先に

深い海の先に

海の近くを歩いていると、「こっちこっち」と声が聞こえた。そこには白い髭を生やした老人がいて、ちょうど防波堤の向こうから顔を出す形になっている。その老人が立っている場所は海のはずだが、向こうはどうなっているのか。

「僕ですか?」

「君以外に誰がいるんだ」

その老人は怪訝な表情で言った。

「え?本当に?」

「そうだ。早く乗ってくれ」

戸惑っていると防波堤の上に登るよう促した。言われるがまま

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優しい日に

優しい日に

今日もまた、私は一人死にました。

まるで木漏れ日の中、動物たちが安心して眠るように、

私は一人死んだのです。

誰一人として同じ人間はいないように、

全く同じ私は存在しないのです、

もちろん、あなたも。

今日と明日の私は確かに違っていて、

今日はいつの間にか昨日になっている。

優しく抱きしめることができたなら。

流れる時間

流れる時間

子供たちの笑い声が聞こえる。

野原に敷いたブルーシートの上で、持ってきたチーズを一口齧ると

そのブルーシートが、風で少し靡きました。

時間がゆっくり流れているような気がした私は

そっと後ろを振り返って

この時間が平等に流れていることを確認しておきたかった。

また優しい風が吹きました。

その風がいつどこで生まれたものか誰も知らない。気にも留めない。

それでも

風が吹くその事象そのも

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果て

果て

人間は愚かだと認識させるには

十分すぎるほどの出来事が

この世の中には沢山あって

それはある意味、人間が発展しすぎたからかもしれない、

などと思ってみたりする。

厳しい自然界で生きる動物や植物の方がよほど、

真っ当に生命としての役割を全うしているという矛盾。

進歩したために後退してしまった人間の矛盾。

これはもう、簡単には止められない流れになっていて、

いや、もう止めることはでき

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変わらない空

変わらない空

ふと、スマホから目を外して、

青空に一筋の雲をみた時、

私は途方もない寂しさを感じてしまって

きっとそれは、

そこに懐かしさを感じたからだと思いました

ふと、夏の風に当たったあの人の横顔とか、

夏祭りの喧騒とか、夜風に振り向いた瞬間とか。

この空は、全てを記憶していて、私をじっと見ていたのかもしれない

このまま忘れてしまっても良いのかもしれないけれど、でも寂しさはあって。

自分を

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