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詩集B(20代の頃に書いた作品群)

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社会派ミステリー小説、PHASEシリーズの著者 悠冴紀が、大学時代から20代の終わり頃にかけて書いた(今へと繋がるターニングポイントに当たる)詩作品の数々を、このマガジン内で無料… もっと読む
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#親友

詩 『曼珠沙華』

作:悠冴紀 赤い大地 血のような 炎のような 曼珠沙華が咲き誇る 鮮やかな赤 毒々しくも繊細で 雨ざらしの野に 凛と伸びる 曼珠沙華が萌える 混沌の記憶の中に 血のような 炎のような 一面の赤 ── 無彩色の季節を越え 今 再び 懐かしいような 初対面のような 野生の赤い曼珠沙華 私の歩む畦道に また かつてに増して鮮やかに 神秘的な赤い花一輪 ※ 2003年(当時26歳)の作品。 曼珠沙華とは、言わずと知れた彼岸花のことです。その翳のある妖艶な姿はしかし、思わ

詩 『親 友』 (20代前半の作品)

作:悠冴紀 自分に何をしてくれるか 自分にどんな利益をもたらすか そんな選び方はしない 恩人は皆 親友? 得るものが無くなったら さようなら? そんな浅はかな判断はしない その生き方が その意志が その欠点さえもが 私を魅きつける 一緒に生きたいと思う 喜びを 憂いを 思想さえも 共有したいと思える 定義など無い 存在そのものが 親友でいる理由 誰にも代われない 誰にも真似できない 私がいて あの人達がいて 親友という関係が成り立つ 親友だから大事なのでは

詩 『悪 夢』

作:悠冴紀 昨日 悪夢を見た これまで味わったこともない恐怖の味 そこには親友がいない 私には “ 今 ” しかなかったのに 親友が “ 今 ” のすべてだったのに “ 過去 ” の亡骸 “ 未来 ” の虚無 私には “ 今 ” しかなかったのに 親友がいるから生き延びてきたのに 生きるか否か 迷っていた そこには親友がいない 永久に相容れない大勢と 家族という名の他人に囲まれて 私は呆然と立ち尽くしている まるで糸の切れた操り人形 生き甲斐そのものを失っ

詩 『 JANUS 』 (二十代後半のときの作品) 注:闇描写です🙇

作:悠冴紀 許せないのに 想っている 恨みながら 感謝している 突き放しながら 案じている 男でも女でもない 架空の生き物のような 恋心も持たない 乾いた人間だった私には 君との繋がりが 神聖だった あまりにも 私の人格は 二つに分裂してしまった 君が私を引き裂いた 信じていないのに 受け入れている 失望したはずなのに 敬っている 背を向けながら 見守っている 君は私に全てを与え やがて私から全てを奪った 私の魂は黄泉に落ち 自らの血にまみれて這いずり

詩 『蝶』

作:悠冴紀 私は羽ばたく者 変化を拒まず受け容れる者 飛び出す勇気を持てない君の分まで 高く舞おうと 大きく羽を広げ 出し得る力を 出し尽くす ほかならぬ君がそう求めた 私はいつも 君の生の代役だった 私は共に飛びたかったのに ジレンマが二人を裂き とうとう私は飛びたった 二人分の重みを背に 二人分の羽ばたきで 二人分のエネルギーを消耗して 私は今 甕覗き色の空を舞う 君と私 二人分の願望を胸に この命を削りながら いつの日か 私の鱗粉が君の繭に降りかかり 君

詩 『私の中のラグナロク』 (20代後半の作品)

作:悠冴紀 貴女は私のすべてだった 過去の私にとってのすべて 家族愛を得なかった私の 家族代理 導く者を得なかった私の 教育者代理 欠落の多い私の半身を担う 自己代理 すべてを共有できた 絶対の親友 貴女一人いれば 他には誰も要らなかった 貴女に愛される人間を目指し 生まれ変わることで 自分を愛せるようになった 貴女に認められる作品創りを目指し 文字を綴ることで 文筆家になれた 疎まれ 誹られ 虐げられて 自分を無能と思い込んでいた私の中に 創作家としてのもう一つ