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即興小説

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青年よ、シングアロング

耳たぶのピアスの穴は就職してしばらくするとふさがってしまった。忙しいという字は心を亡くすと書く、というが、しばらくは、本当に、暮らして行くのに必要なことだけしかできなかった。

夏には仕事を辞めた。

自分が情けなくて、恥ずかしくて、誰にも、連絡しなかった。できなかった。そうして引きこもるだけ引きこもって、少し心の余裕がうまれたとき、ツイッターをのぞくと、先輩がライブの告知をしていた。

【初ワン

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きみの酔いがさめるまで



―私のこと、どうおもってる?

あんこのような人だね。

―それってどんなひと?

きみの練り上げかたしだいさ。

―あなたは、なんて洒脱で美しく言葉を使うのかしら。私、あなたがだいすきよ。

好きだなんて軽々しく口に出すものではないよ。頭がわるくみえるから。



―ねぇ、私のこと、どう思ってる?

そんなこと口で言わせる気かい?それよりベッドにいこう。きみにいいことを教えてあげる。

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