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散文詩

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スカイツリーとウクレレ 《詩》

スカイツリーとウクレレ 《詩》

「スカイツリーとウクレレ」

其の機能は全て 

論理的で倫理的であり

其れに伴う取り扱い説明書と

保証書が添付されている

スカイツリーはいつに無く

高くそびえ立ち

今もなお天高く 

伸び続けている様に見えた

救世主教会の尖塔 

頭頂部には其れが有り

地上の僕等を見下ろしている

街の路地裏は砂利で出来ており 

草すら生えない荒地だった

其処には 
無能、無知、馬鹿や偽善は

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有り余る余白 《詩》

有り余る余白 《詩》

「有り余る余白」

不自然な程の有り余る余白

形容詞の選び方や句読点の打ち方が

何処か微妙に
ずれた文体の中に僕は居る

世間とは外れた場所で

僕の中の何かが進行している

少数者の為にある様な文章を好んだ

其れを読む人間なんて
ほとんど居ない

誰かが僕に占いを信じますか 

そう聞いて来た

僕は即座に興味は無いとそう答えた

其処に並べられた 

とりあえずの道具に

特別な価値と力

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悪魔と青く深い海のあいだで 《詩》

悪魔と青く深い海のあいだで 《詩》

「悪魔と青く深い海のあいだで」

その水は何処までも
透明で純粋だったんだ

それを知る者は誰も居ない

灯りすらない夜の闇 

誰かの足音

くだらない
辻褄合わせに僕等は泣いている

銃声の音が聴こえますか

また大切な何かが失われて行く

知らぬ間に

目隠しをしていた愛の調べ

不釣り合いな恋に

傷付くのが怖かった

水平線の向こうには
花は咲いていますか

僕等の話を聞いてください

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Good Luck 《詩》

Good Luck 《詩》

「Good Luck」

ソファーで猫が眠っている

アメリカンショートヘア

バルコニーから夜の海 

その上に琥珀色の月が輝いて

僕はワインの瓶を静かに開ける 

そんな風景を信号待ちの
サイドミラーの中に描いて

素敵な夜を想像していた

信号は青に変わり

僕はアクセルを踏み込む

時事的で複雑な
定義に溢れた街を走り抜ける

思想性は何処にあるの 

助手席の彼女はそう僕に聞く

多分

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ハイボール 《詩》

ハイボール 《詩》

「ハイボール」

小さいけれど確かな幸せって

人は見逃してしまう

夏の夕暮れの風が心地良かったり

あの娘が笑いかけてくれたり

確か前に 

私は不適切な人間だと 
あの娘は話してた

其れは社会に対してであり 

また自分自身の心に対して

上手くコントロール出来無いんだ 

そう言って俯いた

居場所がわからないと

だったら此処に居れば良い

此処が君の居場所であり
僕の居場所だよ

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善導 《詩》

善導 《詩》

「善導」

其れは無意味で

硬直した幻想でしか無い

四方を囲む幻の壁 

其の中で僕は

単純で一面的な
発想の微笑みを浮かべる

疑心暗鬼を押し殺して

口に出すべき
事柄で無いものの中に真実はある

非論理的で無意味な心の通わぬ善導 

僕は今日も異論はありません 

そう笑って答える

世界の認識なんて知らない 

社会の秩序だってどうでもいい

お前達の事だって興味は無い

僕は自分の

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龍の国 《詩》

龍の国 《詩》

「龍の国」

金で買えない物なんて
誰も欲しがらない

いつから俺は

そんな世界の中に居るんだろう

神経が少しずつ狂い始める

まだ死ぬには早過ぎる 

理由なんて無い

ただ漠然とそう思っただけだ

尻の軽い女と口数の多い女は苦手だ

買収される奴と買収されない奴

世の中には明日の来ない
今日だってあるんだぜ

教えてやろうか 

それがお前の口癖

新月の闇 

その中に

あるはずの無

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ALL YOU NEED IS LOVE 《詩》

ALL YOU NEED IS LOVE 《詩》

「ALL YOU NEED IS LOVE」

時の海の中にひっそりと漂う

今は無き物質と其の記憶が

長く白い砂浜を音も無く歩き続ける

彼女はまだ僕の中で歩き続けている

確か随分前にも君を見かけたよ

同じ時間に同じ場所で

そう 話しかけたかった

微かな波の音が聴こえた

太陽は動かず時間は止まる

時々僕は彼女に出逢う 

ふとした瞬間に

何処か遠い世界にある場所で僕等は
強く繋が

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鏡の中 《詩》

鏡の中 《詩》

「鏡の中」

ある種の鳥が

綺麗なビー玉を収集する

来る日も来る日も集め続けている

其れは世界を構成している精神性な
ファクターであるかの様に

ある結論をもたらす

大切な因子であるかの様に

僕の前では頭の狂った人間達が

其れにうなずいている

夜は足速に過ぎ去り 

僅かな月明かりに照らされて

鏡がゆっくりと静かに光を持つ

其処に僕が映し出される

しばらくして奇妙な事に気がつく

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道化のグラス 《詩》

道化のグラス 《詩》

「道化のグラス」

僕は其の限り無く純粋な水を

道化と言う名のグラスに注ぐ

華麗な結晶が輝くとか

輝かないとか

僕等は瓦礫の山の
赤茶けた地面にトンネルを掘り

銀行を襲う計画なんだ

僕は才能の枯れ尽きてしまった

作曲家と写真家と絵描きを誘った

才能の枯れ尽きた
詩書きなら此処に居る 

そう言って笑った

失われた音符と失われたフィルム

失われた絵の具と失われた言葉

それでも其

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二人称単数 《詩》

二人称単数 《詩》

「二人称単数」

過去の記憶と現在の感情が

時間軸を隔て まるで違う人物の
二人称の物語を描く様に流れて行く

其れは常に平行しており等価であり 

全てが僕個人に含まれている
欠片だと気が付かない

僕の意志とは無関係な所で

選ばれた事柄が進み

また 

僕の意志とは関係無く失われて行く

其処に居る僕は

揺るぎない確信を探し求めている

この場所に君が
一緒にいてくれたならと

僕は

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ジョンレノン 《詩》

ジョンレノン 《詩》

目には見えない程の細かな雨 

白夜の様な清潔な静寂

何処かしら温かみを欠いた
無機質な風が吹く

誠実な靴音を響かせて歩く人

しかし其れは硬く的確に
不透明を排除する音の様に聴こえた

原色が至る所に塗り付けられた

肖像画は難解では無いが

その絵の意味する事柄が

僕には読み取れない

何ひとつとして
怠りの無い光が床に射し込む

違和感は無いが

匿名性を帯びコンセプトを持たない

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車窓 《詩》

車窓 《詩》

「車窓」

限られた目的が
人生を簡潔化して行く

其処には言語化される事の無い

自分自身のルールが存在している

平坦で無個性な街を

行き先表示の無い電車が走る

僕は座席に座り窓の外を見ていた

いったい何処へ行くんだろう

多様な選択肢が目に入り消え去る

時間の進みが早過ぎて 
僕は世界とのバランスを失った

上手く行かないのは

僕のせいじゃ無い

そう 誰にも聞こえない様に呟いた

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正しい場所 《詩》

正しい場所 《詩》

「正しい場所」

日付を持たぬ日々が通り過ぎて行く

僕は自分自身が存在して無い事に
気付いていない

違う 

存在しない者として 
ただ生きていた

其処にある時間軸に従いながらも

生の欠落を感じとっていた

僕は空にある雲に触れた 

其れは 

硬質で鈍色な塊 

其処には

虚無で深い沈黙だけが渦巻いている

聞こえる 

何の意味も持たない音が

大量のウィスキーが眠りに誘う

意識

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