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連載小説|ウロボロスの種

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連載小説|ウロボロスの種

 大蛇が自分の尾をくわえている。  ウロボロスである。  ウロボロスは自らの尾を飲み込み、…

連載小説|ウロボロスの種

▲ 前回 一日目 私は港にいた。  一人の漁師が、濡れてもつれた網を解きほぐしていた。  …

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▲ 前回 二日目 翌日、私はひとしきり町を歩き回ったあと、ブランデー蒸留所を訪ねてみるこ…

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▲ 前回 四日目 私は砂浜にいた。  私は長い枝を拾い、砂に円を描こうとした。うまく描けず…

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▲ 前回 五日目 私は大聖堂で腰をかけ、白い鳩のステンドグラスを眺めながら、パイプオルガ…

連載小説|ウロボロスの種

▲ 前回 六日目 目が覚めると、私は身支度をして、ホテルのレストランで朝食を取った。レス…

連載小説|ウロボロスの種

▲ 前回 七日目 朝が来て、私は海へと向かった。道すがら、昨日の子どもたちとすれ違った。子どもたちは騒がしく飛び跳ねたりしながら歩いていた。  海に着いた私は、目を疑った。遠くからでもわかるほど、私の立てた枝は太く高くなっていた。もはやそれは枝というより幹だった。そこから生えた枝も増え、さらに枝分かれまでしていた。  数人の人々がそれを囲んで見ていた。少しの躊躇のあと、私はその場所に行ってみることにした。  「砂浜に木が生えるなんて」と、人々は口々に言っていた。  犬を連れ

連載小説|ウロボロスの種

▲ 前回 八日目 朝、身支度をし、ホテルのレストランで朝食をとると、私は海に向かって歩い…

連載小説|ウロボロスの種

▲ 前回 九日目 朝、私は公園へ行く前に、〈木〉を見にいくことにした。  海に着くと、〈木…

連載小説|ウロボロスの種

▲ 前回 十日目 朝が来た。私は身支度をして、朝食をとり、海に向かって歩いた。  海への道…

連載小説|ウロボロスの種

▲ 前回 十一日目 朝、目が覚めると、全身に奇妙な感覚があった。体中に蛇がまとわりついて…

連載小説|ウロボロスの種

▲ 前回 十二日目  意識されていなかった闇に、意識が向けられる。するとそれは闇ではなくな…

連載小説|ウロボロスの種

▲ 前回 十三日目 雨が降り続いていた。  私はホテルの蝙蝠傘を借りて、外へ出た。海の方角…

連載小説|ウロボロスの種

▲前回  種があった。無限小の種。答えるための種。それは問いそのものだった。  「答えなさい」  この、無限小の問いに、私は答えようとした。影によって答えようとした。  「答えなさい」  そう言った種は膨らみ、自らを吐き出した。頭を吐き出し、胴を吐き出し、尾をくわえた大蛇になった。  それを見て、私は言った。  「やっぱり君だったか、リリィ」