すわぞ

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すわぞ です。 twitter(@suwazo)でついのべ(140字小説)を書いてます。不思議な話、不穏な話、バカな話など。

最近の記事

140字小説(ついのべ)2023年6月分

堤防で夜釣りをしているとよく野良猫と人魚が現れた。僕の釣った魚を勝手に食ってはじゃれあって遊んでいた。そのうち人魚は来なくなったが、野良猫から飼い猫にした猫はもう三十年生きている。人魚が何かしたのだろう。僕にも何かしたかもしれないが、その答え合わせはまだできないでいる。 20230628 パーティーの音楽がここまで聞こえる。私は馬車の御者として、ここで時間が過ぎるのを待っている。12時の鐘が鳴ったらシンデレラの魔法は解け、私もただのネズミに戻る。それまでのひととき、人として

    • 140字小説(ついのべ)2023年5月分

      奥さん、まさか全て偶然だと思っていたんですか? 貴女の通勤路に探偵事務所ができたこと。いつも忙しいはずなのにすぐ依頼が通ったこと。所長が幼馴染みだったこと。いいえ、彼はずっと辛抱強く待っていたんです。追いつめられた貴女が自分から階段を昇ってくるのを。貴女を助けるために。 20230531 子供の頃、霊が出ると評判の家があった。高校の頃、その霊が出るのは公園だという話になっていた。一度引っ越して戻るとまた違う場所に変わっていた。娘が小学校で聞いてきた噂ではさらに場所が変化して

      • 140字小説(ついのべ)2023年4月分

        おっ父は、獲物を狩ってきては、旨いところだけ食べて残りを捨てる。捨てた部分をオイラたち兄弟が食う。長いことそう思ってたが、最近わかった。おっ父は肉の固いところを食って、柔らかくて旨いところをオイラたちにくれてたんだ。いい話だろ? 「人食い鬼に囚われて聞く話じゃなければね」 20230424 村の本家長男には、神社で祀っている神の名から漢字一字を貰って名付けるのが決まりだった。僕は貰えなかった。父が母の不貞を疑っていたという噂だ。ある夜、神社に雷が落ちて全て焼けた。その年、一

        • 140字小説(ついのべ)/世界で一番美しいのは?

          「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」「厨房の老メイド長です」「それは誰目線で?」「彼女の夫である庭師のジョン目線で」「いいわね」「ちなみに下町の飾り紐売りの娘も世界一美しいです」「誰目線で?」「彼女の一つ年下の幼馴染みの少年の目線で」「今日もいい話を聞かせて貰ったわ」 (2021.11.08)

        140字小説(ついのべ)2023年6月分

          140字小説(ついのべ)/私を助けてくれたのは

          つい夫を殺してしまった私を助けてくれたのはホームレスの男だった。何の関わりもないのに。「なぜ優しいの」手際よく死体の始末をしながら男が答える。「旦那、浮気してたんだろ」「ええ」「あんたが作ったオニギリを毎朝公園のゴミ箱に捨ててた」「ええ」「オニギリ美味かったよ」 (2013.2.13)

          140字小説(ついのべ)/私を助けてくれたのは

          140字小説(ついのべ)/ レコードを買ってみたけれど 他10作

          2023年3月の140字小説(ついのべ)その1。 10作。 隣家の娘さんがピアノを習い始めた。かすかに流れてくる拙い音。日々、ぎこちない旋律が美しくなっていくのを聞いた。彼女が遠い立派な学校に行ってしまうと静けさが戻った。レコードを買ってきて聞いてみたが、彼女の演奏ほど楽しくなかった。レコードは毎日成長も変化もしてくれないから。 (2023.3.10) 事故により、彼の記憶は一日しかもたないのだそうだ。だが僕の熱心なファンなのだという。僕の作家デビューは彼の事故より後なの

          140字小説(ついのべ)/ レコードを買ってみたけれど 他10作

          140字小説(ついのべ)/何千冊の本の家 他11作

          2022年9月後半の140字小説(ついのべ)11作です 本好きの叔父は独り暮らしの家にこれでもかと本を積み上げていた。いったい何百、何千冊あるのか、本人も把握していない。「俺に何かあったら始末を頼むよ」「冗談でしょ」私の返答に叔父は言った。「あの山のどこかに、お前が十五のときに初めて作った同人誌が埋もれてると言っても?」 (2022.9.21) 子供の頃、忍び込んだ屋敷でお嬢様に見つかって仲良くなった。病弱で外に出して貰えないのだという。「あなたルパンね! アニメで観たわ

          140字小説(ついのべ)/何千冊の本の家 他11作

          140字小説(ついのべ)/ 1月10日はヒトの日にしようニャ他15作

          2023年2月後半の140字小説(ついのべ)15作です。 「1月10日はヒトの日にしようニャ」「むなしく自滅した生き物を偲ぶ日ニャ」「愚かさを反面教師にするニャ」「しかし喉の撫で方は最高だったんジャよニャ……」「年寄りがまた思い出を語ってるニャ」「思い出は美化されるニャ」「それにちゅーるを発明した功績もあるニャ」「それはそうニャ」 (2023.2.23) 資産家の叔母が亡くなった。血縁は僕一人。「どうせあの冷酷女、遺産は全部犬にでもやるつもりだろ」「まさか」と弁護士は言っ

          140字小説(ついのべ)/ 1月10日はヒトの日にしようニャ他15作

          140字小説(ついのべ)/ 俺の家が代々仕えていた家が他15作

          2023年2月前半の140字小説(ついのべ)15作です。 俺の家が代々仕えていた家が没落した。当主がクズだったせいだ。影響を被るような時代ではないから構わないが、俺としては、幼馴染みであるそこの優秀な孫息子が何も手を打たなかったことが不思議でならない。「欲しいものがあったから傍観してたんだ」「何をですか?」「お前のタメ口」 (2023.2.4) 飼い主が出勤している間、猫は一匹ぼっちである。でもときどき飼い主が変な時間に帰ってくることがある。猫を撫でまくり、たまに少し泣

          140字小説(ついのべ)/ 俺の家が代々仕えていた家が他15作

          140字小説(ついのべ)/ 古い喫茶店を居抜きで買ったら他4作

          2022年10月前半の140字小説(ついのべ)4作です。 古い喫茶店を居抜きで買ったら幽霊物件だった。探したら床下から人骨が出てきた。行方不明だった前の初老のマスター。あのダンディな幽霊に会えなくなるのは少し淋しいなと思ったが、結局、彼が成仏したのはその数年後だった。つまり、彼が認める珈琲を僕が淹れられるようになってから。 (2022.10.13) とっても可愛い猫少女。幼いとき親に売られて改造手術を受けさせられて、こんな可愛い猫少女にされた。戦ったり裏切ったり騙したりし

          140字小説(ついのべ)/ 古い喫茶店を居抜きで買ったら他4作

          140字小説(ついのべ)/ 「龍にはみんな逆鱗があるの?」他13作

          2022年10月後半の140字小説(ついのべ)13作です。 「龍にはみんな逆鱗があるの?」「おとなの龍にはある」「こどもにはないの?」「むしろ逆鱗がないとおとなにはなれないんだ。弱味がないなら、守るべきものがないなら、その者はまだ成龍とは言えない」龍はまっすぐな目で言いました。「人の娘よ、もはやお前が私の逆鱗そのものなのだよ」 (2022.10.31) ばけものたちは満月の夜に集まってばけものの皮を脱ぐ。ばけものの中身は美しい女たちで、たまに男も混じっていることもある。皆

          140字小説(ついのべ)/ 「龍にはみんな逆鱗があるの?」他13作

          140字小説(ついのべ)/「顔採用されまして」などと自分で言う探偵助手他15作

          2022年11月前半の140字小説(ついのべ)15作です。 「顔採用されまして」などと自分で言う探偵助手君はかなりの美男子で、頬を染めた女達(ときに男も)が何でもボロボロ喋っており、確かにこれは捜査がやりやすそうだった。「肝心の人には効かないですけどねこれが」助手君の視線の先には名探偵がいて、人には人の悩みがあるのだなと思った。 (2022.11.13) 「私にもどうしようもないのよ」嘆く彼女はダイヤの精だった。所有者が必ず一年後に死ぬという呪われたダイヤの指輪。「僕が君

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          140字小説(ついのべ)/ゴミ捨て場で人型執事ロボットを他15作

          2023年1月後半の140字小説(ついのべ)15作です。1作だけ続き物が混じってます。 ゴミ捨て場で人型執事ロボットを拾った。顔を拭いてあげたらダンディな紳士の顔で、「初めまして、新しい旦那様」と挨拶された。足の電子系統が完全に壊れていて歩けない彼を背負って持ち帰った。今は僕のスケジュール管理その他をしてもらっている。古い車椅子を乗りこなしながら。有能だ。 (2023.1.26) 「若い頃、山の神様に見初められたことがあってね」祖母が言う。「私はただの人間だから、いずれお

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          140字小説(ついのべ)/推理小説を書くのはもうやめる他15作

          2023年1月前半の140字小説(ついのべ)15作です 推理小説を書くのはもうやめると言うと、友人は「それは困る」と喚いた。僕の小説の殺人トリックはすべて友人が発想したものだ。「書いてくんなきゃ、俺、実際に試したくなる……」泣きながら言われて、渋々もう少し続けることにした。後日、友人が持ってきたネタの被害者は推理作家だった。(2023.1.10) メイドロボの修理をしていた若手が「えっ」と声をあげた。「どうした」「中の部品が一つだけ違うメーカーのなんスよ」「お前、初めてか

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          140字小説(ついのべ)/台所の床磨きをしていたら他15作

          2022年11月後半の140字小説(ついのべ)15作です。 台所の床磨きをしていたら突然見知らぬマダムが現れた。ドレスや宝石を出して、華やかなパーティーに連れていってくれた。物凄く楽しかった。「なぜこんなことしてくれるの?」「証明するためよ」「女の子は誰でもシンデレラになれるって?」「女は誰でも魔法使いのおばあさんになれるって」 (2022年11月17日) それを見た瞬間、「おいで、おいで、おいで」と三回唱えると、流れ星は僕に向かって落ちてきた。僕の額にぶつかって一回跳ね

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          140字小説(ついのべ)/花魁の前に現れたのは 他15作

          2022年12月後半の140字小説(ついのべ)15作です。 花魁の前に現れたのは狐だった。怪我して死にかけたのを、人の男に救われた。人に化けて恩返ししたいが人の美醜がわからない。美しいと評判の貴女の姿に化けてもよいか。「いいとも」花魁は言う。「私の顔と姿で、愛する男と添い遂げるといい。私には叶わぬ望みを叶えてくれたら私も嬉しい」 (2022年12月27日) 「あああ……こんな雪の山荘に閉じ込められるなんて、とっておきのトリックを試して密室殺人を起こす千載一遇のチャンスなの

          140字小説(ついのべ)/花魁の前に現れたのは 他15作