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連作風10首『なまえをよんで』

たいせつなひとをどう呼ぶか、たいせつなひとにどう呼んでもらうか
誰かの名を呼ぶこととは、なまえとは

ありふれたきみの名前はいつからか左心室へと充填されて

特別な名前をくれよぼくたちが何であるかの名前をくれよ

きみの中CTRL+F(検索)したよぼくの名をどこにもいないどこにもいない 

この雨を五月雨なんて呼べるのは君が皐月である間だけ

きみの名をもう呼べなくて呼びたくもない呼び方で呼び止めている

砂浜に人差し指でもう呼べぬきみの名を書く(ないている海)

そこにいない誰かの名を呼ぶことは側にいるかのように想うこと

さいごまでぼくを名前で呼ばないで幕をおろした仮初めの恋

また恋をするならきみとしてみたい先ずはきみの名、呼ばせてほしい

うっかりときみの名前を呼ぶことは陰膳に似たわたしの祈り

(P.S.)Twitterで相互フォローの豆田✿麦さんが、同じく「なまえ」をテーマにした短編を書かれています。椎名林檎の『罪と罰』、『幸福論』をBGMにぜひご覧下さい。
おとぎ話の幸福論 *「人魚姫のほんとのお話教えてあげようか」


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