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連作風5首『ぼくの手紙を山羊はたべない』

LINE全盛期、メールさえもめんどくさいといわれる現代において、かつては略式といわれた手紙は今や古臭いものなのかもしれません。
それでも、それだからこそ誰かに書いた手紙、誰かから貰った手紙というのは、差出人が宛名に向けて時間と想いをかけて綴ったものであり、その背景だけでわたしはわたしのこころの中にそれを深く刻むのです。

「不燃物とはどのようなものですか?」「燃やせないもの、例えば手紙」

空き瓶に込めた手紙は沖に出ずテトラポットの狭間漂う

濡らしても「冗談だよ」って浮き出ない別れの手紙直火で炙る

綺麗な目、綺麗な指先、綺麗な字 ぼく宛てでない綺麗な言葉

真夜中に書いた手紙は渡せずに一晩置いたカレーが旨い

たった一通の手紙が、人生を変える / 水野敬也

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