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【俳句】【短歌】の記事

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俳句・短歌関係の記事をまとめました。
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記事一覧

【俳句】弟の句をよむ 令和六年春 

 我が兄弟航路は、実の兄弟の二人組である。共有のアカウントを舟に見立て、文学の大海原にしがない航跡を描いている。  だが、昨年の七月に次女を授かった弟は、育休を宣言し、二人の娘の父として日々奮闘している。近々、新しい住まいに引っ越すようで、まだしばらくは、腰を据えて執筆する余裕はなさそうである。  そんな中でも、筆者の作品を航海する直前は、弟が必ずこの舟に戻ってくる。最初の読者という、唯一無二の役割を担うためである。  感想にしろ、指摘にしろ、それは実に朴訥たる、短い言葉

【俳句】みんなの俳句大会・旬杯参加

 鈴蘭を活けて深まる月明り  蛍火を祈るや森のせせらぎと  古びたる扇子を佩いて新茶買う  旬杯(俳句・短歌・川柳)募集要項

【俳句】夏の句をよむ

 まだ朝晩は寒いですが、日中は汗ばむときも増え、花鳥のあかぬ別れに春暮れて今朝よりむかふ夏山の色(玉葉和歌集・夏・293)と詠まれたように、山々は蒼翠を帯び、風薫る夏の到来を感じます。  本稿では、夏の句をいくつか紹介し、私なりの感想を述べたいと思います。解釈が本筋から外れていることもあるかもしれません。ご参考程度にお読みくだされば幸いです。  穂高とは穂高連峰、穂高岳でしょうか。その険しい山々は今まさに雲を吹きおとしています。その瞬間、作者は立夏、夏の到来を実感したよう

【俳句】続・春の句をよむ

 今年は、五月二日が八十八夜、五月六日が立夏になります。早くも惜春の候を迎えて、日によっては夏を先取りしたような汗ばむ陽気です。  前回に引き続き、春の句をいくつか紹介したいと思います。私の解釈が本筋から外れていることもあるかもしれません。ご参考程度にお読みくだされば幸いです。  「隙のなき」の言葉で、どこまでも広がる空の青を実感できます。夏をむかえようとしている朝は果てしなく爽やかです。  山の斜面につくられた田のまわりには、つつじが咲いています。日をうけて光輝いてい

【俳句】春の句をよむ

 だんだんと暖かくなり、春を実感できる日が増えてきました。花は咲き、草々は芽吹き、虫を目にすることも多々あります。雨が降れば山々は潤い、盆地では田畑の準備が着々と進んでいます。  万葉集の”石ばしる垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも”と詠まれたように、山滴る時へむかう躍動感ある季節です。  本稿では、春の句をいくつか紹介し、私なりの感想を述べたいと思います。解釈が本筋から外れていることもあるかもしれません。ご参考程度にお読みくだされば幸いです。  周囲を見渡

【俳句】新年の俳句鑑賞

 あけましておめでとうございます。  新年は書道の書初め、将棋の指し初めなど、いつもとは異なる厳粛な雰囲気が漂います。俳句も例に漏れず、新年詠は一年の予祝ともいえる句が多い印象です。  しかし、新年、誰しも明るい状況ばかりではないかもしれません。今回は、歳時記「新年」の明るい句をご紹介し、少しでも皆様のお力になれればと思います。解釈は、あくまで私個人の感想ですから、ご参考程度にお読みくだされば幸いです。  正月の雪真清水の中に落つ 廣瀬直人  正月にふる雪はなにか特別です

【俳句】十六夜杯・みんなの俳句大会参加

 虚栗手あつく置きし木こりかな  盆地と空一面のあう葡萄棚  馬の子を秋の七草とりまけり  以下、十六夜杯(主催:十六夜様)ご担当の「みんなの俳句大会」様へのリンクです。  十六夜杯(俳句・短歌・川柳)募集要項とオープニング動画発表

【随筆】俳句水族館

 夏の歳時記をながめていると、魚や昆虫など生き物の季語が豊富で、生き物好きの私はワクワクしてきます。歳時記には、季語の説明だけではなく、例句がいくつも掲載されています。テレビや図鑑等の映像でみるのと、また違った魅力があります。たとえば、季語「章魚(たこ)」をつかった句にしても、ちいさな真蛸だったり大きな水蛸だったりと、読者の経験や感性によって、解釈も多様になりましょう。  本稿は”俳句水族館”と題して、海の生き物の句を鑑賞していきたいと思います。句の選定や鑑賞内容は私個人の好

【俳句】鶴亀杯2022夏をよむ

 前回の宇宙杯に続き、鶴亀杯に参加できまして、心より感謝申し上げます。拙句の成績はあまり振るわなかったのですが、審査員の皆さまや読者の方々に温かいお言葉をいただき、たいへん嬉しく、大いに励みになりました。  また、投稿された380句以上すべてを拝読しまして、読者側の楽しさも味わうことができました。すべての句に作者の顔といいましょうか、お人柄がみえる思いでした。  短歌を専門とする方々の句は、とても情熱的で、まるで小説の一場面のようでした。また、短詩型を専門外とする方々でも、

【俳句】鶴亀杯 みんなの俳句大会参加

 山なみの空に溶け込み夕薄暑  連山の流れの果ての瀑布かな  岩壁を亀裂走れり山百足

【随筆】加藤楸邨(かとうしゅうそん)句の鑑賞

 今回は、短詩型文学を主に扱う飯塚書店出版の『加藤楸邨の一〇〇句を読む』石寒太著をもとに、楸邨句を鑑賞していきたいと思う。  楸邨は苦学の生活のなか短歌や俳句とであい、造詣を深めていった。啄木や茂吉、白秋を学び、俳句では村上鬼城に〇✕の添削をうけていたそうだ。その後、水原秋櫻子との縁を得て、師事することとなる。  「船戸」の前書きがあり、江戸川と大利根川の間の船宿だそうだ。深い雪に沈みながら一歩一歩進んでいくと、船戸の河畔で船をみたという句である。苦労しながら歩む作者と、

【俳句】取り合わせの妙味

 ※本稿は先日読了した月刊誌、角川俳句令和四年五月号の特集『取り合わせの距離感』を、私なりに上書き、紹介する記事である。  俳句の大半は、「季語」と「何か」で構成される。たとえば、飯田蛇笏氏の句”苔咲いて雨ふる山井澄みにけり”であれば、「苔咲いて」と「雨ふる山井」だ。雨の日、山の井戸周辺に苔の花が咲いている景色である。作者は可憐な苔の花と澄んだ井戸水(もしくは湧き水)の様子に感動したのだろう。苔が咲いたことでいつもの景色が変わった驚きである。  このように、季語と何かの組み

【俳句】宇宙杯 みんなの俳句大会参加

水湧いて水湧いて鱒集いけり 牛は引く琉球躑躅の昼日中 北へ鳥南へ花の甲武信岳

【随筆】令和俳壇・四月号の鑑賞

 俳句の専門雑誌のひとつである角川出版の「俳句」より、一般読者からの投句をいくつかご紹介したい。いずれも、プロの俳人に高い評価を得たものであり、俳句の魅力をお伝えするに適した作品であると考えている。  また、一般読者が投句されてから雑誌に掲載されるまで、四か月かかるため、今の季節、春に合わない冬の句である点はご了承願いたい。  また、句の選と解釈は私個人の感想であるためご参考程度にお読みくだされば幸いである。解釈の数は、読者の数と同じだけあると考えている。  句の引用はすべ