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【2022年】阪神タイガースまとめ

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2022年に行われたタイガースの試合について書いたnoteをまとめます。選手ひとりを取り上げることが多いです。あなたのお気に入りの選手はいるでしょうか。
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選手から監督になっても【12/29 対ジャイアンツJr戦〇】

今から10年前のシーズン。当時のタイガースに現れた若手のレギュラー候補。 それが上本博紀と大和だった。 この頃のタイガースは絶妙に世代交代が進んでおらず、中堅からベテランの選手中心に構成されていた。共に上位打線を担ったふたりの台頭は、新しいタイガース誕生を予感させた。 そして今、上本はジュニアチームの監督を務め、大和は年の離れた選手とのポジション争いをする立場にある。月並みな表現だが、月日が経つのは早いなとつくづく思う。 試合中のグラウンドでは表情を崩さず、ひたすらに寡

突然の別れを簡単に受け入れられるほど、僕は人間ができていない【12/9 試合なし】

裏で何が起こったのかよく分からないまま、今日この日をもって陽川尚将は阪神タイガースから埼玉西武ライオンズの選手になった。 選手の移籍を活発化させるために始まった現役ドラフトは完全非公開で行われた。誰がリストアップされていて、どの球団から指名が始まって、誰が移籍したか、その過程はブラックボックス。1つ明らかなのは、結果が発表されたその瞬間、1人あるいは2人が、タイガースの選手でなくなる。選手の尊厳を守るために非公開で良かったと思うけれど、現役ドラフトが始まった午後1時からはま

僕らは江越大賀に夢を見たんだ【11/5 対侍JAPAN戦●】

すべてのプロ野球ファンに愛された杉谷拳士が華々しく現役を引退した一方で、ひっそりと再スタートを切った選手がいた。 江越大賀と齋藤友貴哉。共に今シーズン終了後にタイガースからファイターズにトレード移籍した選手だ。トレードが発表されたのはすべての公式戦が終了したあと。フェニックスリーグで出場機会はあったものの、多くファンに見られる場で試合をしたのはこの日が初めての機会だった。 走・攻・守のすべてがハイレベル。 肩も強くて何より打球の力強さは半端じゃない。 当時の江越はそんな触れ

矢野阪神の四番打者【10/14 対ヤクルト戦●】

CSファーストステージ3戦目。劇的な勝利の瞬間を目の当たりにして興奮する一方、心のどこかでホッとしている自分がいた。 (大山がやり返すチャンスを、みんなが作ってくれた) この日ライトでスタメン出場した大山悠輔は、自分の守備位置に飛んできたゴロの処理をきっかけに、相手走者の更なる進塁を許してしまう。このプレーが一因となって、タイガースは2点目を失った。 近本光司のタイムリーで同点に追いついた6回の攻撃。なお0アウト2塁でチャンスは続いている。打席には大山。 大山はバットを

信じ続けるしかないじゃないか【10/13 対ヤクルト戦●】

タイガースに入団してからずっと、近本光司は同じ登場曲を使い続けている。男性ボーカルユニットC&Kの「ドラマ」。年ごとに変える選手も多いなか、近本の打席ではずっと同じ曲が流れていた。 そんな近本が、今年になって新しい曲を採り入れた。SUPER BEAVERの「人として」。1打席目から3打席目まではこれまで通りの「ドラマ」が流れて、4打席目以降からは新しい登場曲の「人として」が流れる。 そうなんだよ 信じ続けるしかないじゃないか 愛し続けるしかないじゃないか スマートにプレー

ただの負けだったら良かったのに【10/12 対ヤクルト戦●】

ペナントレースを連覇したチームは強い。 タイガースは、今日はうまくいかなかった。 それだけで終われたら、どれだけ楽だったか。 原口があんなに怒っているの、はじめて見た。 初回に3点を失った。だがまだ攻撃の機会は残されている。直後の攻撃、ファーストステージでは当たりのなかった大山悠輔がツーベースヒットを放った。4番のチャンスメイクで反撃の機運は確かに高まっていた。続くバッターは5番の原口文仁。ピッチャー・小川泰弘の投げるボールに必死に食らいついていく。ストレートを何度もファ

まだ矢野さんと野球がしたい【10/10 対横浜戦○】

試合が終わってから書いては消して、書いては消してを繰り返している。こういう試合のすごさや選手の頑張りを伝えるために、日々こうしてnoteを書いてきたし、勉強もしてきたはずなのに、的確な表現が思いつかない。 誰かに絞って書くなんて、とてもできない。 ドラフト同期で同い年の才木浩人のピンチを救った浜地真澄。 逆転への扉を開いた佐藤輝明の本塁打。 走攻守すべてでチームを勝利に導いた近本光司。 捕手へのこだわりを捨てて打撃を磨き続けてきた原口文仁の一打。 野手陣のがんばりを次につな

リードオフ・マンの存在【10/9 対横浜戦●】

ファーストステージここまでの2試合で、自分の持ち味をいかんなく発揮しているタイガースの選手がいる。1番の中野拓夢だ。矢野燿大監督はクライマックスシリーズ開始前の記者会見で試合のキーマンとして中野と近本光司を挙げている。近本は1戦目に先制のタイムリーヒットを放ち、中野は4安打をマークした。2戦目に出た安打は1本のみだったが、そのヒットを足がかりにしてチームは一打同点のチャンスを作った。 矢野監督が1軍の監督に就任してからこだわってきたのが走塁だ。積極的な走塁は敵にとって大きな

唸るスイングと切り裂くアーチ【10/8ファーム日本選手権●】

イースタンリーグ優勝チームとウエスタンリーグ優勝チームが対戦し、日本一チームを決めるファーム日本選手権。ここ10年近くは宮崎県のひなたサンマリンスタジアム宮崎で行われていたので、関東に住む僕にとってはテレビ中継で見るものでしかなかった。 しかし、突然決まった福岡県への転勤。しかも移り住んだ年にタイガースは2軍優勝。なんだか急に身近に感じられるようになった。CSファーストステージに思いを馳せつつ、宮崎まで行ってみることにした。 横浜で行われているCSにメンバーを多く派遣してい

最後の”キリフダ”【10/8 対横浜戦○】

8回裏の守り。キャッチャーの梅野隆太郎は急ぎでキャッチボールをして出番に備え、ピッチャーの湯浅京己(ゆあさ あつき)はリリーフカーに乗ってグラウンドにやってくる。ほどなくして、場内アナウンスで選手の交代が告げられた。 終盤のピンチにリリーフの湯浅を投入。ここまではシーズンでも何度か見た光景だ。いつもと違ったのは、湯浅が8番の打順に入ったことだった。 8番:坂本誠志郎→湯浅京己 9番:岩崎優→梅野隆太郎 直前の攻撃は坂本で終わっていたので、9回の攻撃は9番打者から始まる。

そうなった経緯とか全部抜きにして才木にはナイスピッチと言いたい【10/2 対ヤクルト戦△】

僕はこの日の投手起用やベンチ入り選手の是非について、とやかく言うつもりは全く無い。否定も肯定もしない。 ただ、シーズン最終戦のサヨナラ勝ちを信じて、ベンチ入り投手のラスト1人となった才木が延長3イニングを無失点に抑えた― そのナイスピッチングを書いて残しておきたいと思った。ただそれだけだ。 1点ビハインドの9回2アウト、榮枝裕貴がプロ初打席で同点タイムリーを放った。この劇的なヒットを、ブルペンの才木浩人はどんな気持ちで見ていたのだろう。 シーズン最終戦を前に3位が確定したこ

一打にかける男の所作【9/28 対ヤクルト戦○】

いつもの手順。もしくは日常の仕事、日課。 辞典で「ルーティン」を調べたらこのように出た。やや表面的で差し障りのないような言い回しだ。プロ野球選手のなかでもルーティンを持つ人と持たない人がいるが、ルーティンの存在がその選手の個性を際立たせ、魅力的にさせる。イーグルス・鈴木大地やベイスターズ・楠本泰史の特有のルーティンは、球場の遠くの座席で見ていてもすぐにわかる。 タイガースの原口文仁もまた、印象的なルーティンを持っているバッターのひとりだ。原口は打席の中でバットを構える時、

自分のために、チームのために【9/27 対ヤクルト戦○】

「選手がまだ戦ってる途中でしょうが!」 例の報道を見たとき、心の中の黒岩五郎さんが声を荒らげた。 どこからどのようにして情報が公になったのか、どうしてこのタイミングだったのか、報道から読み取れないことは多い。 ただスワローズのリーグ優勝が決まった後に発表されたのは、優勝できなかった時点で今シーズンは終わり、そんな解釈をされた気がした。 ペナントレースはあと3試合が残っている。もちろん消化試合なんかじゃなくて、Aクラス入りするために選手やチームは必死に戦っている。 矢野監督

虎メダルはふざけてなんかいない ~某評論記事を読んで~

2022年シーズン最後の「伝統の一戦」はジャイアンツの勝利で幕を閉じた。 試合が終わった後、日刊スポーツから試合の評論コラムがアップされた。評論を担当した人は複数球団で活躍し、コーチ経験も豊富な某球団のOBだ。タイガースでコーチをつとめた経験もある。 評論コラムでは試合の明暗を分けたポイントについて解説したのち、タイガースのベンチについて触れていた。佐藤輝明が先制のホームランを打ち、矢野監督が虎メダルを授与した場面だ。 「メダルをかけるパフォーマンスを喜ぶファンもいるのだろ