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タダヨシユキ「デザイン技術と感性の考察」

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デザイン力を向上させるノウハウや考え方をまとめたコラム集
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記事一覧

絵の技術と成功についての考察

絵に対する一般的な見解は、「うまい」「へた」という言葉で表されがちですが、その背後には多くの意味があります。この記事では、絵の技術と成功についての考察をしてみたいと思います。 まず、絵がへただと言われた場合、そのフィードバックをどう受け止めるかが重要です。クリエイターの先輩や上司からの指摘を素直に受け入れ、成長のためのヒントと捉えることが肝心です。なぜなら、もし私がクライアントの立場だったら、絵の技術に自信のない人に大金を払って、仕事を依頼することはたぶんないでしょう。だか

手を動かさないデザイナー - クリエイティビティの源を求めて

クリエイティビティを発揮するためには、手を動かすことが不可欠です。しかし、多くのデザイナーやクリエイターは、頭の中で考えることに集中しすぎ、実際に手を動かさない傾向にあります。この現象について考えてみましょう。 最短でクリエイターに近づきたいのであれば、頭よりも先に手を動かすことが必要です。何度も考えてはみるものの、アイデアを形にすることなく、机の上で悩んだり、ネットで調べ物をするだけでは、新しいものは生まれません。実際に手を動かして、アイデアを形にすることが重要なのです。

デザインを言葉で説明しない。

デザインの本質と感動の力 デザインの真髄は、その観察から始まります。優れたデザインは、言葉を使わずとも人々を感動させる力を持っています。この種のデザインやプロダクトは、見る者の心に直接語りかけ、深い印象を残します。消費者が製品に惚れ込むことができれば、その製品の小さな欠点は重要ではなくなることがあります。 共感と幸福感の創出 このような製品は「これしかない」と感じさせるほどの魅力を持っており、それによって消費者だけでなく販売者も共感し合い、全員が幸せな関係を築くことがで

モノづくりの成功に欠かせない協力業者とのコミュニケーション術

私が普段お付き合いしている協力業者さん、製造メーカーさん、とモノづくりを行う上でいつも心掛けている内容をまとめてみました。交渉にあたってのノウハウも記しておきます。 皆さんのお仕事に何か役に立てればと考えてブログとして簡素にまとめます。 1.協力業者との対等な関係構築【アクション: 50/50(フィフティ、フィフティ)】 協力業者を下請けではなく仲間と見なし、対等な関係を築くことが重要です。上位企業であるかのような態度ではなく、心のこもった付き合いが大切です。フィフティ

クリエイティブの共通項:音楽のサンプリングとリミックスがデザイン開発にもたらすインスピレーション

イントロダクション 音楽とデザイン開発は、見た目と聴こえに違いはありますが、共通のクリエイティブなアプローチを共有しています。特に、音楽制作におけるサンプリングとリミックスと、デザイン開発における市場調査やアイデアの吸収、再構築といった要素には驚くほどの類似性が見受けられます。この記事では、音楽とデザインがクリエイティブな観点で繋がり合う魅力的な側面に焦点を当てます。 サンプリングの本質 サンプリングは音楽制作において、特定の音の素材を得るための手法です。これは、楽器の

30秒ドローイング

30秒ドローイングは、一瞬の瞬間を捉るジェスチャードローイングの手段として広く利用されている練習ツールです。posemaniacs.comが2005年に初めてWEBサイトで公開して以来、その独特の魅力が多くのアーティストに受け入れられ、クロッキーやクイック・ドローイング、ジェスチャー・ドローイングの練習において欠かせない存在となりました。 使い方: 時間制限の中での表現 このツールの使い方はシンプル。指定された秒数ごとに表示されるランダムなポーズに対して、アーティストはそ

「美大、行かなくて良いです。」美大に頼らず、デザイナーになるための方法

デザイナーになりたいという夢を抱く人々の中には、「まずは美大に行きたい」と考える方がいるかもしれません。しかし、結論から言うと、デザイナーになるために美大に行く必要はありません。 美大の誘惑と金額の問題 美大に通うためには膨大な学費が必要です。しかし、その金額に見合うだけのリターンが得られるかは疑問です。美大では基本的に個人で研究することが求められます。言い換えれば、独学が得意でない人にとって美大はあまり意味がありません。教授や講師が存在する一方で、基本的には自己学習が求

​​クロッキーのすすめ

クロッキー(croquis)とは、フランス語で「対象を素早く描くこと」または「素早く描かれた絵」を指します。このアートの形式は、主に動きを感じさせる対象や、動きを伴う対象を短時間で描くことを特徴としています。本稿ではクロッキーとスケッチの違いと、クロッキーの魅力を追求します。 クロッキーとスケッチの違い クロッキーは、主に動きを感じさせる対象を描くことが多く、例えば人物や動物の静止した状態や動いている状態を数分程度の短時間で描くことが一般的です。動くことによって変化する対

不確実性こそが新しい世界を切り開く原動力

新しい暮らしを創り出すプロダクトデザインは、既存の枠にとらわれず、大胆なアプローチが求められます。創造性を育むには、まずリスクを受け入れる覚悟が必要です。確実性のない未知の領域に踏み込むことで、革新的で魅力的なプロダクトが誕生する可能性が広がります。 リスクを取ることは、新たなアイデアを試みる第一歩です。従来の概念や慣習にとらわれず、大胆な発想を形にすることで、ユーザーにとって本当に価値のあるプロダクトを提供できるでしょう。過去の成功体験や確実性へのこだわりを捨て、未知の可

コンセプトストーリーを紡ぎ、未来を切り拓く

デザインには美しさ以上に、その背後に潜む物語や哲学が真の魅力を生み出す鍵となる。私が注力しているのは、商品やプロダクトに纏わるコンセプトストーリーだ。なぜこの商品が誕生し、どのような源流から発展してきたのか、その思想や哲学が商品にどのように表れているのか、これがデザインの本質への鍵である。 コンセプトストーリーは、デザインスケッチを通じて形になるものだ。私はデザインスケッチを通して、商品が環境や社会とどのように結びついているかを視覚的に具現化する。その背景には、SDG(持続

デザインの未来:CG主導の時代におけるデザイナーたちの課題と可能性

先日行われた建材プロダクトデザインコンペの審査を通じ、約400点の応募作品から20点を選び出す中で、デザイナーたちの作品には多様性がありました。しかし、CGによる仕上げがほとんどで、手描きのスケッチや本来のコンセプトが欠如している傾向が見受けられました。これにより、作品が一時的な満足感に終わっている印象を受けました。 提案されたアイデアの多くが家具や雑貨、照明器具など、誰でもアプローチしやすい部位に集中しており、生活様式を変えるような斬新なアイデアは見当たりませんでした。デ

手仕事の美:自ら作り上げることで育むクリエイターの審美眼

「自分の手で作る」ことが審美眼を鍛える重要な手段である。審美眼は芸術的な要素や美的な価値を正確に評価する力であり、これはクリエイターにとって欠かせないスキルだ。本稿では、審美眼の重要性とその磨き方に焦点を当て、なぜクリエイターがこれに注力すべきなのかを探求する。 審美眼の本質 審美眼は、美的な要素や芸術的な要素を的確に見極め、評価する力を指す。これは主観的な視点に基づくものであり、個々の感性や経験が影響を与える。クリエイターが優れた作品を生み出すためには、独自の審美眼を発

シンプルに考えることの大切さ

私たちは日々、さまざまな問題や課題に直面しています。しかし、その際に、私たちは本当にシンプルに考えているでしょうか? シンプルに考えるというのは、物事の本質や目的を見極め、無駄や余計な要素を排除し、最も効果的で効率的な方法を選ぶことです。シンプルに考えることは、単純化や簡略化と同じではありません。単純化や簡略化は、物事を理解しやすくするために、重要な部分を省略したり、細かい部分を無視したりすることです。しかし、シンプルに考えることは、重要な部分を明確にし、細かい部分を整理す

手と思考の調和:ドローイングの魔法

ドローイング、それはペン、鉛筆、木炭などの単色画材を用いて手によって紡がれる芸術の一環である。線の奏でるリズム、濃淡の対比、そして太さの微妙な変化が、作品に息を吹き込む。この芸術形態は、時折「素描」や「デッサン」と同じ呼び名で語られることもある。しかし、それぞれの微妙な違いが、この芸術の奥深さを際立たせている。 ドローイングは、まるで手と思考が共に舞い踊る訓練のようでもある。輪郭や表情を捉え、細部にわたって観察することは、まさに手と思考の調和のプロセスである。これは、モノの