宇野常寛
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「個人的なノートブック」を再開します。
突然ですが、個人のノートブック(定期購読マガジン)を再開します。3年ほど前に、実は少しだけやっていたことがあるのだけれど、そのときは手が回らなくて(ウェブマガジン「遅いインターネット」)の立ち上げの時期でした)数ヶ月で閉じちゃいました。でも今回はしっかり続けたいと思っています。
なぜ、このタイミングで再開するのか……というと、書きたくなったからとしか言いようがありません。この4年ほど、僕はどちら
「多様性」をマジックワードにせず、しっかり機能させるために一番大切なものとはなにか
今日は「多様性」という言葉について考えてみたい。この言葉は今日においてほとんど「正義」という言葉と同義になっている。多様性が低い、という言葉を僕たちは明確に「ダメ出し」として使っているし、しばしば伝家の宝刀のようにこの言葉を振りかざされる。ただ、僕はこの言葉のイメージはそれこそ「多様化」したほうがいいと思っている。というか、用いるときに少し気をつけたほうがいいと思うのだ。
たとえばあるところに
「性愛」を経由しない対幻想(のポテンシャル)と「共同体ではなくチーム」を僕が選ぶ理由について
今日は昨日の三宅香帆さんとのトークショーで出た話題を延長して考えてみたい。それは「対幻想」をめぐる議論のことだ。2時間弱の対談で何度かこの話題に触れたのだけれど、たとえば僕は村上春樹が近年同性の「友人」を度々登場させていることに注目する。『ドライブ・マイ・カー』には高槻という青年が登場する。同作が収録されている『女のいない男たち』には、この高槻のように男性主人公の同性の「友人」的な存在が度々登場す
もっとみるSNSの時代に世界にとって必要な「批評」とはどういうものか、改めて考えてみた話
今日は昨日に続いて「批評」について考えてみたい。いや、まあ「批評」という言葉を神聖化しても仕方ないのだけれど、僕なりに長くこの仕事をしているので、考えることは多い。たとえば僕は書き手の傍らマイナーな媒体をもう10年以上運営してきているのだけれど、よく考えるのは「僕らみたいな媒体じゃないとできないこと」はなんだろうか、ということなのだ。
最悪なのは「その少し前に流行った本のタームを使って別のもの(
出版人の一人としていま「批評」本を売り出すことの意味を考えてみた話
今日は少し「出版業者」として考えていることを書いてみたい。
今日、三宅香帆さんの新著『娘が母を殺すには?』がPLANETSから、つまり僕のところから発売になった。
三宅さんは、前著の『なぜ働いていると本が読めないのか』が10万部超のベストセラーになっている。版元としては、新刊を出す著者の直前の(それも分野の全く違う)本がベストセラー化するというのはほとんど棚からぼた餅のような展開で、ああ、やっ
人間は「対幻想」から「自立」できるかという問題を戦後史から考える
気がつけば5月も半ばが近くなってしまった……。明後日5.15は僕たちPLANETSから三宅香帆さんの『娘が母を殺すには』が発売になる。本の内容については、下記の大垣書店のイベントなど出版後にいくつか触れる機会があると思うので、そちらで詳しくコメントしようと思うのだけれど、今日は連休中にこのゲラを読みながら考えたことを書いてみたい。
要するに、この本は母娘間の共依存特有の問題をえぐり出し、その相対
「仕事で自己実現する」という物語(と、それができない人が暴走しがちな問題)を因数分解して考えた話
さて、今日は昨日の「働く」ことについての議論の続きだ。
阿部真大は、現代の労働市場の「やりがい搾取」への処方箋に仕事の「役割」、つまり社会的な使命への再評価と啓蒙を主張する。阿部は『職業社会学』を確立した尾高邦雄の「職業の三要素」を「生計の維持」「個性の発揮」「役割の実現」を引用する。「やりがい搾取」とはこのうち「個性の発揮」への欲望を悪用した労働者に対する搾取だというのが、阿倍の位置づけだ。実
平成の「改革」という「物語」が終わったあとに、この国の政治に必要なことは何かを考えた話
さて、やはり先日の衆議院補選についてはさすがに書いておかないといけない。僕は東京15区で乙武洋匡さんを応援した。さすがに、小池百合子と組むのはないんじゃないかと思ったし、それを本人に下記の動画でぶつけたりもしたけれど、応援した。
理由は二つあって、それは乙武さんの「政治」への生半可ではないこだわりを個人的に知っていたからで、そして良くも悪くも節操のない彼なら、もし小池百合子が日本初の女性総理にな
僕が江東区の自民(維新)支持者だったら、(いろいろ文句はあるが結局)乙武さんに入れるしかないのではと考えるその理由
さて、今週末には衆議院の補選が3つある。与党自民党の「裏金」問題と、選挙区の情勢を掛け算すると、3選挙区とも立憲民主党が勝つ可能性が高い。それは妥当な結果で、長期的にはこの国の民主主義にプラスの効果をもたらすかもしれない。もちろん、島根のあの人が当選するのはむしろ旧自民党の封建的な土着支配を強化するだけじゃないか、とかいろいろな見方はあるのだと思うけれど、そういったことは僕よりも詳しい人がすればい
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