令和源氏物語 宇治の恋華 第百六十一話
第百六十一話 浮舟(二十五)
暁の別れはいつでも辛いもの。
しかし、此度の別れを殊更に辛く感じるのは浮舟が薫の物でまたいつ逢えるかともわからぬからでしょうか。
匂宮の困ったところはいつでも本気で女人に溺れ、その時に呟いた言葉はすべて真実の心からであるのです。その後にどう心が変わろうがそれはまたその時の本音なのですが、翻弄される女人たちの哀しきことよ。
しかし目下の処匂宮の心は浮舟に囚われて、胸に浮かぶはあの可憐な姿ばかりで恋しくてなりません。
恋の病で食が細り、顔が青ざめ