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ロンドンで賃貸をしたら詐欺にあった話

 ロンドンで賃貸をする場合、どのような手段があるだろう。

1,不動産屋に探してもらう。
これが一番てっとり早い。
経済的に余裕のある駐在員なんかはまずこれを選ぶ。日本語対応している不動産屋もざらにある。仲介手数料がかかり、比較的高価な物件のみを紹介していることから、ダントツでお金はかかるが、ブルジョワジーであれば問題なく便利に使える。

では、ブルジョワジーではない人々は?
ワーキングホリデーという位置づけで、僅かなお金とビザだけを握り占めて渡英した私や、家族カードをもたされていないマイノリティの学生など、事情は様々。

私たちが賃貸をするのであれば、ロンドン在住の日本人なら誰もが知っている日本語掲示板サイト、MixB(ミックスビー)から探す。情報は玉石混合だが、これが最もメジャーな方法である。これが手段その2.

手段その3はホームステイ。
しかし、これはホストファミリーガチャの当たりハズレが大きく、博打に近い。
私は3日でホストファミリー宅を家出した過去がある。私の場合は異常な事件発生が家出の原因だったが、ホームステイは、ハウスルール(洗濯は週に1回だとか、帰宅は22時までだとか。)が面倒に感じるタイプにはあまり向いていない。

手段その4,これが最もおススメする方法。
ホステル、つまり安宿で暮らすという選択。
個人的にはコスパ面でもトラブルの少なさでも、これが最も良い方法だと思う。
ロンドンには、ロンドンホステルアソシエーション(LHA)という団体が運営しているホステルがいくつかあるが、多くの物件はセントラルの一等地に位置しており、
相部屋であれば週140ポンド程度から、個室であれば週240ポンド程度から一週間単位で更新ができる。この賃料はロンドンの家賃相場からみればずいぶんと懐にやさしい。
物件によっては食事も付いている。フィットネスジムが利用できる物件もある。
部屋の掃除はホステルがしてくれる。何よりも貸主側との賃貸トラブルが極めて少ないことが魅力的だ。

注意してほしいのは、これはLHAの話であり、その他の運営するホステルは酷い場所をあげたらキリがない。

この結論から、長らくホステルで暮らしていたはずの私だが、ビザの残りが3カ月となったある時、偶然ミックスビーで改装したばかりの小ぎれいな賃貸を見つけ、なんとなく内見へ行ったところ一目でその物件が気に入り、その場で値段交渉を始め、三日後にはそこへ引っ越した。

オーナーは口数の多い日本人女性で、1時間以上にわたる値段交渉と世間話を経て、家賃を相場よりも若干安めに落ち着けてくれた。
私は賃貸条件である敷金と前家賃3カ月分を、何の疑いもなく翌日にキャッシュで支払い、三ヵ月後に日本へ帰国したのだった。
前家賃は、通常短気滞在者へ賃貸をしていないという理由から発生した条件で、これはロンドンではよくあることだった。
預けた敷金は2カ月分。日本円でおおよそ25万円程度である。
これもよくあることだった。

帰国後1か月。敷金の返却は電気代の清算が済むまで待ってほしいと連絡があった。特段気にしなかった。

帰国後2か月。電気代の請求書が届かないから敷金の返金を待ってほしいと連絡があった。
ロンドンではありえないことではない。再発行をお願いしてもらうようにと連絡した。

帰国後3カ月。連絡が途絶えた。こちらから連絡をしても返信がなくなった。

帰国後4か月。音信不通が続き、私はようやく騙されたことに気が付いた。

調べてみると、帰国をした日本人に敷金を返金しないケースは多分にあるようで、被害者のほとんどは泣き寝入りをしている。

しかし、泣き寝入りをしている場合ではない。なぜなら帰国直後の、完全に無職の状態の私に25万円は大金だった。いや、何よりも金額の問題ではなく、あの一見人当たりの良いオーナーが、最初から私を騙すつもりでいたことが許せなかった。

さらにリサーチをすすめていくと、イギリスではインターネットコートという、少額訴訟のみに対応しているオンラインの裁判所があることを知った。自ら訴状を書き、裁判所から敷金の返金命令を出してもらうのだ。

しかし、訴状の書き方なんてもちろんわからない。調べても良いサンプルが見つからず、一から訴状を作るという膨大な労力に嫌気がさしていた中、事態は一気にカタがついた。

イギリスで裁判経験のある友人が、弁護士を紹介してくれ、帰国後6カ月目のある日、25万円は無事に私の口座へ届いたのである。

賃貸人のオーナーが皆、このように悪質であるわけでは決してない。
けれど、このようなトラブルは決して少なくもない。
オーナーが日本人だからといっても、全くもって安心できない。

私はとても運がよく、弁護士が介入し事態が収束したが、通常無償で働く弁護士などこの世に存在しない。彼がいなければ私は自ら訴状を書き、それを裁判所へ提出していたであろう。

イギリスで賃貸をする予定のある方は、いざとなったら、インターネットコートで訴訟することができる。ということを頭の片隅にいれておくといいかもしれない。
そして、いざとならないように賃貸をするときは、きちんと賃貸借契約を結び、敷金の返金期日を明確にすることをお勧めする。

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