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鐘の音はいつも高らかに。

 今日はのど自慢の日なのだそうだ。
 
 昭和二十一年の一月十九日に日本放送協会のラジオで「NHKのど自慢」の前身である「のど自慢素人音楽会」という番組が放送されたのを記念して設けられているそうである。

 第一回放送の人気曲は「リンゴの唄」や「旅の夜風」など当時の流行歌だった。
 
 初期の頃は番組を象徴する鐘の音はまだ登場しておらず司会のアナウンサーが合格の時は合格ですと言い不合格の時は結構ですとお断りをするスタイルだったそうだ。

 のど自慢は素人が人前に出て歌を歌うという点が画期的で腕に覚えがある歌自慢が集まる番組として大好評を博した。

 番組開始から現在に至るまで約八十年の歴史を誇る超長寿番組である。

 私が熱心にのど自慢を観ていたのは小学生の頃で当時離れに住んでいた祖父母と一緒に番組を鑑賞していた。

 日曜日のお昼というまったりした時間帯に上手い人からそうでもない人までが自慢の喉を披露するのは観ていて単純に楽しかった。
 
 歌う事が好きだった祖母は若者向けの新しい歌も実によく知っていた。

 そして祖父は歌を聞いて鐘の音がいくつ鳴るかを当てるのが得意だった。

 今さら説明するまでもないと思うが鐘の音は三種類あり、完全な不合格は鐘一つ、惜しいもう少しという場合には鐘二つ、文句なし合格という場合にはめでたく鐘三つが高らかに鳴らされる。

 私も祖父と一緒になって鐘の音予想に精を出したものだが、いかんせん知らない曲が多いのでそれが上手いのか下手なのかいまいち掴めなかった。

 祖父も人前で歌うような陽気な人ではなかったが耳が良かったのか的中率はかなり高かった。

 私が最も不思議だったのは番組に登場する人の中に必ず民謡を歌う人がいる事でしかもほぼ確実に合格する事だった。
  
 なので祖父と当てっこをしている時に民謡がかかるとはい、この人は合格~とふざけながら太鼓判を押していた。

 そんなたわいもない遊びをするのが結構癖になりわりとのど自慢を観ていた方だと思う。
 
 高校生の頃に自分の町にのど自慢がやってきた時は大きく盛り上がった。

 当時はちょうどカラオケが大ブームだったので会場には予選会から多くの人が集まっていた。

 放送の日には私は知り合いがテレビに映らないかと思って画面に張り付いていたものである。

 地元のローカルな話題を楽しそうする合格者を見て何だかちょっぴり恥ずかしい気持ちにもなった。

 のど自慢は去年の春から生バンドの演奏からカラオケに切り替わったそうである。

 それが大きな理由でもないのだが、最近はあまり番組を観ていない。

 今時あれだけ牧歌的でのどかな番組も珍しいのでもっとちゃんと観ようかなと思っている。

 実に味わい深い時間を過ごすことが出来るはずである。

 そんな事を考えながらも昨日の晩御飯の話をば。

 昨日は格安で鶏モモ肉が手に入ったので鍋。

 もも肉はソリレスという一足の付け根のお肉で一羽から四十グラムわずか二個しか取れないという貴重部位だった。

 野菜は直売所でゲットした白菜と大根、春菊。

 豆腐ももちろん入れる。

 野菜をザクザクと切って下拵えが済んだら副菜を作る。

 レンコンを皮を剥いて厚さ三ミリくらいの輪切りにして酢水に浸ける。

 それをザッと洗ってカツオと昆布の出汁、酒、砂糖、ほんの少しの醤油であっさりと煮る。

 火を止めて余熱で味が染みるのを待つ。

 これでスタンダードなレンコンのきんぴら一丁上がり。

 もう一品の副菜は大根葉とキムチの炒め物。

 大根葉を刻んでゴマ油で炒める。

 しんなりしたらそこにキムチを入れる。

 仕上げに塩昆布を少々加えて混ぜ合わせたら出来上がり。

 後は板わさをササッと作る。

 ようし、今晩はこんなものでしょうと思って妻を呼ぶ。

 昨日のお酒は芋焼酎のトマトジュース割り。

 分量は焼酎とトマトジュースが半々。

 氷を入れたグラスで作って乾杯。

 芋の風味とトマトジュースの酸味がケンカしないで調和している。

 たまにはこういうお酒もいいよねと言うお味。

 鍋に火を点けて珍しく鍋の素のキューブを沈める。

 味は鶏白湯。
 
 鍋が沸くまでの間にレンコンのきんぴらから食べる。

 ショリショリした歯応えで出汁の味がジュンと染みている。

 こういうものがあると食卓が落ち着いていいなと思いつつパリパリ。

 次に板わさをパクッ。

 ワサビをつけすぎてややツーンとする。

 そろそろ鍋が沸いてくるので具をドサリドサと入れる。

 鶏のソリレスも惜しみなく大量投入。

 沸騰したら火を弱めてクツクツ煮ていく。

 大根葉キムチをつまんで二杯目の芋ディマリーをツピリ。

 鍋が煮えたらまずはソリレスを味見。

 歯ごたえがしっかりしており旨味がとても濃い。

 まるで高級な地鶏のよう味わいを感じる。

 少々珍しい部位なので初めて食べたが驚くほど美味しい。

 白湯スープを吸った白菜や大根もしみじみといいお味である。

 春菊は入れてすぐに引き上げてフレッシュな苦みを楽しむ。

 三杯目のお酒を飲みつつ豆腐をホフホフ。

 ソリレスを堪能して締めは糖質三十パーセントオフのうどんを一玉。

 つるりと啜ってお腹八分目でご馳走様。

 いやぁ鶏肉の部位って自分の知らないものがまだまだあるのだなと新鮮な気持ちになった晩御飯だった。

 さて、ようやく週末。

 日曜日は出かけないでのど自慢を観るぞぅ。

 いつか出られるものなら出てみたい。

 三番、未来へを歌います。

 ほぉら、あしも…♪ カーーン

 ってなりそうでちょっと怖いでげす。

 

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