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【獺祭】旭酒造の蔵見学レポート!驚愕の日本酒ワンダーランドをのぞいてみよう

山口県が世界に誇る日本酒「獺祭」を醸す、旭酒造。

数年前までは「山奥の小さな酒蔵」を自称していた旭酒造ですが、現在は巨大なビルで酒造りをおこなっています。製造担当者は170名(2022年6月時点)と、製造量に対しては日本で最も多い蔵人が所属。年間550万リットル(2021年7月~2022年6月/令和3酒造年度の製造量)を製造しています。

いまや日本を代表する「一大日本酒メーカー」へ拡大し、1年中フル稼働している旭酒造。その秘密を探るべく、蔵見学に参加してきました。

※一部、通常の見学コースにはないエリアも紹介しています。

山口の山奥にある巨大蔵へ

場所は山口・岩国。山口県内ですが、山口市や下関よりも隣県の広島に近く、地元の人が遊びにいくのはもっぱら広島だそう。(東京の)町田みたいだなと思いました。(いい街ですよ町田)

これが本蔵!蔵の概念がゆらぎます

旭酒造があるのは、岩国空港(米軍基地が入っていた!)から車で40分程度走った山の中。道路以外人工物の見ない山道に、突如「本蔵(ビル!)」が現れます。こちらは2015年施工です。

なぜ(他に建物のない山地で)わざわざビルを…と思っていたのですが、この辺りは山地のため、蔵を広げるだけの土地がなく(山を切り拓くしかない)、仕方なく上へ上へと拡大したそうです。本蔵のすぐ横には第二蔵、近隣に発送用のセンター、そして山の麓近くに精米場があります。

今のキャッチコピーは「山口の山奥にある酒蔵」。さすがに「小さな」は謳わなくなった

精米機メーカーも見学にくる「巨大精米場」

こちらが旭酒造の「精米場」です。全国22府県の契約農家さんから仕入れた酒米・山田錦を100%自社精米しています。

広い…。このサイズの建物が4棟並んでいます。
かっこいい。それ以外説明の言葉がでてこない
未来!

未来感がはんぱない精米機は、全56台。

旭酒造では基本的に全て大吟醸(精米歩合50%以下)で、高価格帯は23%以下という獺祭のお米を精米(米の周りを削る)するには、巨大な精米機を3-4日ぶっとおしで稼働させる必要があるそう。さらに獺祭は1年中日本酒を造っているため、常に精米機の半数(28台)をフル稼働させています。

ここまでゴリゴリと精米機を使い倒す蔵は他にないらしく、「精米機メーカー」さんが見学にくるほどだとか。

また、「精米=米を削る」と、どうしても米の粉が出てしまうのですが、ここではダクトを使ってスムーズにお米と粉を分類。なので、どこを見てもとても綺麗なのが印象的でした。

いよいよ本蔵に潜入! 

エアシャワーで埃を落としてから入ります

ここからは、蔵長の三浦さんの案内のもと「本蔵」を見学します。
この「本蔵」は12階建て。会長夫妻の住む最上階(蔵に住む、というのがとても素敵)以外が酒造りのスペースです。基本的に工程ごとにフロア分けされています。

ちなみに旭酒造さんは、洗米、麹、発酵、瓶詰めなど酒造工程ごとに分けた分業体制をとっています。またこれとは別に、全行程一貫で洗米から搾りまで関わる縦割りのチーム制も取り入れています。

複雑な日本酒造りですが「工程ごとに集中して学ぶ」&「全工程を学ぶ」チーム運営によって習熟の速度を上げているそうです。

(洗米・浸漬・上米)がっつり手作業!蔵人が貴重な米と向き合い、1日1000回米を運ぶ

最初に行う作業は、貴重な米を「洗い」「浸漬し」「蒸し」すること。ここでの「何秒間水を吸わすか」という調節が、お酒の質に大きな影響を与えるそうです。

1回の作業は10kg単位。「最近、より少量ずつにしました」と三浦さん

ベルトコンベアーで自動に…みたいなことを想像していたのですが、手作業です。浸漬具合を狙い通りにするため、常にストップウォッチと睨めっこ&水が冷たいという、なかなか過酷な作業。それも1日約10トン(ということは毎日10kgを1000回?)…本当にご苦労様です。

こちらは自動洗米機

また、旭酒造では自動の連続蒸米と手動の蒸米の両方を併用しています。アナログは高得点を狙えるがムラができる、自動は平均点だがムラがない、2つのいいとこ取りを目指しているとのこと。

(麹)灼熱の中で一斉にシャカシャカ!一体感はまるでスポーツチーム

(奥行きが)広い!!
(人が)多い!

この2つの画像、1枚目を左、2枚目を右と、横に並べたところを想像してください。それが旭酒造にあるの麹室の全体像です。これが2フロアあるといいます。

この麹チームは、若手新入社員の「配属されたいチーム」No1なのだとか。たしかに「日本酒造り」っぽさがあります。

蒸した米を手でよくほぐす。これも全部手作業

麹室は室温40度近く。麹チームは高温の環境下で(もちろん休憩はあり)ずっと作業をします。これは大変だ。

こちらが「麹菌」を振るところ、日本酒造りのハイライトとしてよくみるシーンです。旭酒造ではチーム全員で息をそろえて行います。シャンシャンシャンシャンと、リズムよく麹菌を振っていきます。

これは、たしかにやってみたい。なんだか楽しそうです。

麹を振るカップ。布を輪ゴムで固定した、お手製グッズです。この布はなんとスカートの裏地。作りたい人は「ベンベルグ」で検索!
「舞う」とどこかの雑誌で書かれていましたが、もうちょいポップにわさわさしてる印象
お疲れ様でした!!

麹菌をふりおわると、作業はひと段落。みんな別室(涼しい)で休憩です。汗を拭き、スポドリをごくごく飲んでいるようすは、運動部の部室のようです。

ちなみに三浦さん曰く「(温度は)1ヶ月で慣れます」とのこと。人間ってすごいです。

(もろみ管理)2フロアで200のタンクを管理!

続いては、三浦さんの大好物だという「もろみタンクの管理」フロア。お酒を発酵させていく工程が行われています。発酵具合を把握しながら、タンクごとに温度調節をし、搾るタイミングを見極めます。

本蔵では2フロアで300タンク。隣接する第2蔵の56本を合わせると356本になるそうです。

海で水平線を撮るイメージでした
発酵中のもろみ

この部屋に入ると大吟醸の日本酒のいい香りに包まれます。

このジャンパー欲しい

タンクのフロアは、先ほど見た灼熱の麹室とは逆に、低温に設定されています。蔵人のみなさんはDASSAIオフィシャルジャンパーなどを身にくるみ作業にあたっていました。

非常に細かいのですが、タンクの上にのっかっている「お神輿+ホース」のようなものが、米や水をタンクに投入する機械。なるほど、こうやってタンクに入れていくんですね、はじめて知りました。

(酒母室)まだ見ぬ未来の獺祭は蔵人の閃きから

他のフロアと異なり、ここはひとりの蔵人のみ

見学の途中で三浦さんが立ち寄った酒母室。獺祭は「生酛(伝統製法)」や、若手蔵人による「クラフト獺祭」をリリースするなど、実は新プロジェクトを次々立ち上げる日本酒蔵でもあります。ここ、酒母室は、そのような実験が行われる場所でもあります。

「新獺祭」になるかもしれない金の卵が、ここで生まれているのです。

なんかザルで濾してる…気になる

(搾り)貴重な「遠心分離機」と対面!

タンクの間を通って別のエリアへ。迷路のようです
ヤブタ!

こちらができたお酒を搾るエリア。写真に写っているのは、圧力をかけてお酒を搾る「薮田式自動醪搾機」(通称ヤブタ)です。
ちなみに、ヤブタのコントローラーは、動かす方向を「右左」ではなく「東西」と表記しています。クレーンなどの機器ではこれが普通だそう。

これが遠心分離機!意外とちいさい!

そしてこちらが、日本酒蔵の中でも使っている蔵はごく少数という「遠心分離機」。これを使えば、お酒に圧力をかけず、ストレスのない状態で搾ることができるのです。

獺祭のラインナップのなかでも一部の高級酒に使われているすごいやつです。一方、費用がかかるわりに量が取れないそうで、広報の千原さんは「歩留まりが本当わるい…」と嘆いていました。

(分析室)すべてタンクのお酒を監視する司令室

急に雰囲気が「研究室」っぽくなります

こちらが、すべてのタンクの「数値」を分析している検査分析室。酒造りので使われていた「勘」を、データ化することで理論的に分析し、再現可能にしたことが獺祭の飛躍の要因ともいわれています。まさに旭酒造の司令塔です。

数字が苦手な人にとっては、もはや読めない

現在動いているタンクごとに数値を分析し、1タンク1シートに記載。醸造リーダーがこれを見て、次の指示を出します。

最新の数値を書き込んでいます

また、このフロアではできたお酒のテイスティングも行われます。社長・会長含め、蔵のトップたちが一堂に介してしぼりたてのお酒を吟味するのだそうです。もちろん、現場の蔵人もここではテイスティング可能です。

「獺祭」はたくさんの「人」でできている!

これ、全部獺祭!出荷の多い月初は1日に3万本以上出荷することも!

その後、瓶詰め・火入して発送(近隣の自社専門施設にて)され、日ごろ酒屋さんなどで目にする「獺祭」になります。蔵見学、1時間以上におよぶ大満足のコースでした。

今回の見学で特に印象に残ったのは、
・全部でかい
・全部きれい
・人が多い!
ことでした。

最近、旭酒造の新卒初任給30万・蔵人の所得倍増計画が各メディアでニュースになっています。人材獲得に力を入れており、実際にここ数ヶ月で30%ほどの人員増につながっているそうです。それだけ製造量を増やすのかといえば…実はそうじゃないのだとか。

三浦さん「人を増やしても、その分お酒の量が増えるということはありません。(積極採用は)各工程の負担を減らしたり、清掃などの酒造りに必要な点をより強化するためです」

蔵長かっこいいです。

おまけ!質問に獺祭の方が応えてくれれます!

本蔵のすぐ目の前には、獺祭の直売店・獺祭ストアがあります。

こちらで、今回の旭酒造見学レポートは終了となります。

さらに今回、旭酒造さんにご協力をいただき「記事を見ての質問」を受け付けます。コメントをいただけます(SNSでもOK)と、記事公開から1ヶ月後に僕のほうでまとめて旭酒造さんに問い合わせし、できるかぎりお応え(多分コメントか記事の追記で)を書きたいと思います。

旭酒造さん、広報の千原さん、蔵長の三浦さん、お忙しい中本当にありがとうございました!!!

その他の写真ギャラリー

本蔵の前の獺祭ストアでは、最高級ラインの「獺祭 その先へ」が有料試飲できます
獺祭ストアにて。漫画家・弘兼憲史氏の獺祭誕生秘話の漫画があるのです
本蔵前の獺祭ストアには初号機がいます

もちろん、お酒を飲みます。