鈴木龍也

鈴木龍也

最近の記事

金曜日の金曜日性についての向き合い方(エッセイ)

「FRIDAY NIGHT ESSAY CLUB」投稿作  ◇  金曜日と聞くとどこかドキドキした気分がする。それは週末という希少性がもたらすイメージが大きいように思えるが、金という言葉から直接的に黄金やお金のことがイメージされてしまうことも大きいように感じる。こう考えると、「華金」というあまりにも消費主義的すぎる言葉ができてしまうのも無理はないように思う。英語でフライデーと言うことからも明らかなように、金曜日にはそれ自体に、浮き上がってどこまでも飛んでいってしまえるよう

    • すべてのこと(詩)

      常になにかと戦っている それは生活のこと それは経済のこと それは喜びのこと 猜疑のこと ミラーボールの 異国のこと 故郷のこと 光の すべてのこと わたしに見せない顔があるのが許せなかった だからわたしにはわたしのすべてを見せるほかがなかった すべてのこと 常になにかと戦っていた 挨拶をするときみの内側に吸収されてしまう 固有名詞の恣意性がこわかった それはほころびのこと 遠い過去の遊戯会のこと 色褪せたお気に入りのぬいぐるみ 消えてしまうことが怖かった 意味がうまれて

      • 20240414(散文日記)

         気がついたらシャツ1枚で街を出歩くことができる気候になっていた。今日に至ってはシャツですら暑く、その存在がうっとおしく感じられた。気がついたらと文頭に書いたが、本当に気がついたらそうなっていた。たまたま暖かくなったから。たまたま日が照っていたから。たまたま気分が良かったから。それでも僕はいずれ暖かくなることを経験として知っていた。明確なタイミングはいつも分からないが、気がついたらそうなることを僕はちゃんと知っていた。  季節のことを懲りもせずにまた綴っている。今年の冬も相

        • ラブ・アンド・ピース(短歌20首)

          短歌連作 ラブ・アンド・ピース 鈴木龍也 ◯ 晩春にだけ咲く桜のバージョン みすぼらしい助詞を好んで使う ポップ・ミュージックの歌詞のように喋って、不安な時は靴を揃えて、 作中の男の子が恋をしてた アニメみたいだとかなり思った Wikiで(連合赤軍の記事を)見る タイムラインが流れて行く 遠い国で主菜で食べられているらしい果実の切り方が分からない 伝えられなかったことの総和 珍しく都内で雪が積もった 暴力のような会話 届いても見てない時間 必要な会話 遠い

        金曜日の金曜日性についての向き合い方(エッセイ)

          生活のこと

           ここ最近、「生活」という言葉がずっと頭の中にある。なんて言うか、諸所の行動や思想、創作の所出をこねくり回して、カッコつけた理由で大義名分を立たせてたような気がするが、結局は「生活のため」だっていうことが最近の気づきである。生活のため。自分自身の生活のため。去年ラップスタア誕生でvalkneeが、HIPHOPを「暮らしを良くする向上心」と言ったことも、young zettonが自曲の中で、「暮らしを良くしてくのがこの歌のテーマ」と歌うことも、藤本哲明が、「等しく降りそそぐ、罪

          生活のこと

          2023/12/28

           2023年が終わろうとしている。誰から頼まれたわけでもなく始まった年は、地球の公転とともに終焉を迎える。それはあまりにも自然なことなので、何も感じない。年の瀬であっても、何も書きたいことはないけれど、何かを書こうとしている。  すべての文章は私的なものだから、こんな公の場に書くことは何もない。例えばあなたのこと。それをもしぼくがこの場に書いたとして、ただそれが消費されていくことに何の意味があるのだろうか。そんなものはあなただけに向けて発信されるべきもので、それを言葉として

          季節について

           12月に入ってしまった。すっかり街は冬の様相だ。冬に入って、身体は疲れが溜まっているものの、思考はかなり元気だ。  思考というものは、暑さに弱いのだと思う。ぼくが暑さに弱いというのもあるだろうけど、夏には無駄なことは考えないし、ただこの暑さでどうサバイブしていくかということに必死になる。これが良いことか悪いことかは分からないが。実際に、寒い地域ほど、自死率や精神病を患う率が高いらしく、日照時間が短い分陰鬱になってしまうらしい。ただ、ぼくは夏が嫌いだ。  今年仲良くなった

          季節について

          1984

          noteに散文を書くと決めてから、本来の趣旨である、意味のなくただ消化されていくことを目的とした文章が書けていない。なのでもっと、取るに足らない、消えてしまうはずの、光を持つものは消えてしまうはずの、話を書きたい。 ◯ 四字熟語についてあまり造形は深くないけど、一番素敵な四字熟語は「猪突猛進」だと思う。「猪突猛進」は猪が速く突進するだけで、ただ、その妄信さが羨ましい。 ◯ 今日はお客さんと吐くまで飲んだ。吐くまで飲んでいる時に、ぼくがこうして吐くまで飲んでいる時に、あ

          色について語る時にぼくの語ること

           ぼくは、その人の好きな色を聞くのがその人の本質を知るのに一番適した質問だと思っている。生活にはあまりにも多くの色が溢れている。ぼくらは、生まれてから数えきれないほどの色に囲まれている。図工の時間に、まず出てくるのは、目の前の白紙の画用紙をどの色で埋めるのかという問題だ。そこで、受動的にせよ、能動的にせよ、ある特定の色の選択を迫られる。色について、本質的に考える人が少ないからこそ、自分の潜在的意識が色の好みに表れると思っている。  ぼくの最近の大きな変化としては、嫌いとも言

          色について語る時にぼくの語ること

          円環の可能性

           ふと思い立ったので、しばらく散文を書いては人の目に晒すといった(非)生産的な活動を行うことにした。理由はさまざまなものがあるはずだが、現在制作中の作品のための息継ぎなのだろう。ていうよりかは、言い訳。言葉は安易に消化されるべきではないことは確かで、それはそうなのだけれど、そうしたプレッシャーからか、日々絶望感と焦燥感との奮闘を繰り返している。  もっと、容易くすんなりと消費をして欲しいという思いから、推敲もなくただ書くための場所が欲しいという願望から、書いている次第である

          円環の可能性

          Wings(小説)

           2022年教養ゼミ寄稿作品  ◇ 「蝉はね、一夏の間に命を燃やし尽くしてしまうの」 「蝉?」 「そう。蝉は、七年もの間地中で、外の世界のことを思い続けるの。そして、ようやく世界の姿を目の当たりにしても、一夏の間しか生きられない。それでも蝉は、限られた生命を全うしようと、叫び続ける。自らの力の全てを使って。とうとう叫ぶ力もなくなると、大地に仰向けに倒れて、空を見据えるの。自らの死期を感じながらね」 「蝉にとって、命は儚いものなのかな」 「さあね。でも、蝉にとってはそれが一

          Wings(小説)