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2022年11月5日の日記

 「地元の河川敷からオフィス街の公園になって、リプトンの紙パックは鬼ころしになった」などとカスのaikoみたいなことをほざいていたら、都会の喧騒が一瞬だけ止んだような気がした。しかしすぐにまたザワザワと喧騒が湧き起こって、またもとの都会の片隅の風景に戻った。見上げた高層ビルディングの上階のあたりはまだ光が灯っている。都会の片隅の地べたで人工の星たちを眺めながら呷る安酒は、銀河鉄道の1等車で嗜むカクテルとはたして何が違うのだろうか。

 外気を浴びながら野良飲酒ができるギリギリの季節になってきた。地べたに酒を置いて、冷めた出来合いの惣菜を広げる。斜向かいのビルディングを細目で見て「都会でしょ」って気取ってみたりする。
 堂島川のほとりは、都会と都会の間に生じた暗渠のような場所で、北側に梅田、南側に淀屋橋と北浜を擁している割に人の流れは少ない。デートを一通り終えた若いカップルがクールダウンしていたり、小走りのランナーが一定間隔で現れるくらい。

 黄金を抱いて翔べ、という小説の舞台がこの堂島川だった。一攫千金など夢にも考えたことはないが、なんかこう、地べたから見上げる高層ビルってのは、私の心の底にある粘り気のない欲望を、さらりとかき回すようだ。

 

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