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精神状態が悪いと、結構心は折れやすい

うつ病になって教師を辞めた男の話⑨

30歳の足音が近づいてきた頃、さすがにこのまま毎年1年契約で仕事を続けていくのは心配だなと思いました。
臨採も、実は今ほど充実した保証がなかったんです。
退職金はなかったし。
今は臨採で働き続けていれば、その年数に応じた退職金がもらえます。

真剣に採用試験に取り組もう!
と思い、勉強会にも参加し始めた頃でした。
同じ志を持った人たちとたくさん出会え、勇気をもらえる場所でした。

精神面には相変わらずガタがきていましたが。
平日毎朝吐くのは当たり前。
むしろ吐くことが上手になってました。
今思えばやばいマインドになっていたなぁ。

そんな時に来た臨採の話。
臨採は、正教員の人事異動が終わって、そこから各学校に足りない人材を当てはめていきます。教育委員会が。
人事異動が大体3月の第3金曜。
で、そこから「臨採しませんか?」という電話がかかってきます。
あ、大体仕事が順調になってくると、2月には連絡が来る時があります。
「この人には引き続き、どこかしらの学校で働いてもらわねば」
的な、人材確保がされるわけです。

それにしても2月です!しかもそれは珍しい話だし。
基本は大体3月!
やばくないですか?一般職に比べて、採用が決まる遅さ。
3月、下手したら4月の頭に連絡が来て、それで仕事できるんです。

逆にいうと、電話を待ってて、連絡が来なければ仕事がないままです。
でも教師の仕事がしたければ他の仕事ができないわけです。
すぐに動ける人が必要だから。
これは本当につらいことだと思います。
足元を見られているような気持ちになります。
「教員の仕事あるけど、明日からいける?あ、バイトしてる?じゃあ行けないか。え?辞められる?ほんと?じゃあ頼むわ」的な。
「教員したい?保証のない非常勤講師ならあるよ?15万もあれば生活できるでしょ?もちろん社会保険とかないけど」的な(これは、似たような感じで実際に言われたことがあります)。

3月に電話が鳴りました。
「4月から、臨採の仕事があるんですけど。場所はまだ言えないんですけど(断られないようにか?)、学校のほうから直接連絡があるので、そこで。ええ。え?採用試験があるので担任はできない?それは直接言ってもらっていいですか?」

数日後に学校の校長先生から連絡が来ました。
「○○中学校です。ええ、先生にぜひ臨採で来てほしくて。ええ。それで、2年生の担任を受け持ってほしいんですが、できますよね?」
僕は勇気をもって言いました。
「申し訳ありません。正採用されたくて、採用試験の勉強がしたいんで、担任はしたくないんです」

担任、副担任、どっちが大変ってことも実際はないんです。
でも、時間的余裕は、僕は副担のほうがあると思います。
基本的には道徳、学活は担任の仕事のことが多いですから。
それで2時間空きます。あとは、生徒指導で、メインになって話をしていくことが多くなる。特に自分のクラスは。
それと、僕のこの年の前年までの2年間が担任で、精神的疲弊がものすごかった、ってのもあります。

それで断って、採用試験の勉強をしよう!と思って言いました。
そうしたら校長先生が、
「あ~、そうなんですか・・・ちょっと考えてみますね」
といい、とりあえず電話を終えました。
学校は分かった。

翌日また電話がありました。
「先生、申し訳ないんですが、配置の関係で、どうしても先生に担任をお願いしたいんですが、お願いできませんか?」

すごく悩みました。
僕の性格上、絶対勉強どころではなくなる。
担任は確かに楽しい。
言い方がどうかわかりませんが、自分の考えを思いっきり伝えることができる場所ができるという、ものすごい魅力があるんです。

でもその分負担も多くなる。
一人一人にしっかり対応したい。
というかしないと申し訳ない。

だから悩みました。
でも、校長先生にここまで言わせて申し訳ない。

「わかりました。担任を受けます」

そうしてこの年の仕事が始まりました。
やんちゃな子も結構いる学校で、なんとかスタートした4月、同僚の先生が言いました。

「そういえば校長先生から聞いたよ。『どうしても担任やらせてほしい』って言ったんでしょ?3月に、職員の説明するときに先生の説明で、校長先生が、『どうしても担任をやらせてくださいって言われていた先生です』って言ってたよ?」

・・・・・は?・・・・・・え?ちょっと待って・・・・え・・・・・??
何が何やら理解ができませんでした。

今なら理解ができます。いや、当時でもわかっていたはずです。
大人でも、自分に都合のいいようにウソをつく人はいるんだってことを。
でもその時の僕はそこまで頭が回りませんでした。「校長先生」がウソをつくってことある?え?「校長先生」よ?

訳が分からず、そのまま校長室に行き、訊ねました。
「さっき、『僕がどうしても担任をやりたがっている』って言ったって聞いたんですけど。ぼく、勉強がしたいからって断りましたよね?そんな風に言ったんですか?」

明らかに校長先生の目が泳ぎました。そして、
「え?そんなこと言ってないけどなぁ・・・そんなことないと思うけどなぁ・・・」

本当に、心の底からがっかりして、「裏切られた」「嘘をつかれた」と力が抜けました。
そして、いままで何とか耐えていた心が折れる音が聞こえたような気がしました。

僕は、「この人となら、この人の下でなら働きたい」と、忠義のようなものを感じる性格です。
バイトの経歴でも、心から「この店のために」と思えばいくらでも頑張れたし、逆に、「あ、こいつ(失礼)ダメだわ」と思えばすぐ「辞めます」と言ってしまう人間でした。

「仕事」に対するモチベーションが、間違っていたのかもしれません。
でも、この校長だめだ、と思った瞬間に、もうダメでした。

結果的に、1学期中に何度か休んでしまい、その度に、『なんで自分はこんなにダメなんだ、できないんだ。休んでばかりで子どもたちにも申し訳ない。』と思っていました。
なんとか学校に行っても全然仕事に集中できず、2学期を迎えてすぐ、連続で何日も休んでしまいました。
朝になると起き上がれず、起きてもすぐ吐いてしまい、目まいがしていました。自責の念はどんどん膨れ上がっていました。
絶望しかありませんでした。

校長から電話が来ました。
「ちょっと家の近くまで行くから、喫茶店ででも話そう」と。
こんなに休んでしまっている自分なんかのために家の近くまで来てもらって申し訳ない。と思いながら、なんとか喫茶店まで行き、状態を伝えました。
「しかたないね。どうする?」

「辞めてくれ」とは言いませんでした。言っちゃいけないみたいです。
申し訳なさで心があふれかえっていた僕は、
「辞めます」
と自分から伝えました。

そこからすぐ辞めることになりました。
自分で、自分の意志で辞めた、ということになりますね。

9月でした。

長い文章になって申し訳ないです。
思いのままにつづっています。
同じような、ぎりぎりの精神状態の人には、あまりお勧めできる文章ではないかもしれません。

でも最後にこれだけは言わせてください。

自分の意志をどれだけ伝えられるかがとても大切。

他人なんかのために自分が「申し訳ない」と思う必要は1ミリもない。
(失敗してたら別ですが)
ましてや自分のことしか考えてないようなヤツのために!
(この校長は、他の先生も「ダメな人間」と言ってました)

あなたが「申し訳ない」と思っているそれは、本当にそんなに「申し訳ない」ことなのか!?
結構そんなことないことが多いはずです。
大丈夫です。
申し訳なくない!!!


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