27 父
4限のテスト後、校舎から外へ出たらムワッと暑い。逃げ場のない、じりじりと肌を焦がすような重たい暑さ。
そういう暑さをこの身で感じる度に父親のことが頭に思い浮かぶ。
父親は屋外にいる時間が長い仕事をしている。
父親は仕事場のことを”現場”と呼ぶ。
現場は夏は焦げるように暑く、冬は刺すように寒い。
私は特に夏の現場、これからの時期が心配である。
今日の暑さなんてきっと序の口、もっともっと気温が上がり日差しが強くなるのであろう。
私なんか長時間炎天下にいるだけでもクラッとしてしまうだろうに、父はその状況下で仕事をしている。
父親が弱音を吐いているのは見たことがないが体力的にも年々負担が大きくなっているのではないかと予想する。
けがをして帰ってきた日も何回かある。
暑さは集中力を奪い、けがをも誘発しうるであろう。
だから父が凄く心配である。
内心、早く私(と一つ下の弟)が十分な稼ぎを得て、父にはリスクのない穏やかな日々を送ってほしいと思っている。もうリスクはおなかいっぱいだよ。私が想像するに、父が居るのはその位危険で過酷な現場なのだ。
しかし父親は仕事人。仕事が数日休みになると体の調子が狂うと言うし”現場で人生を終えたい”と言うくらいである。
父にとって、収入を得るという目的と同等かそれ以上のものが現場にはあるのだと想像する。
父は185cmくらいの強面である。
スーツにサングラスをかけるとバチバチにキマる(≒それなりに怖い人になる)。
肌は黒い。母はかなりの色白なので二人が並ぶとインパクトがある。
肌があんなに黒いのは1年中現場で日差しと向き合っているからだと思う。
父は、外見から受ける印象とは大きく異なりとても優しい人である。
焦っている姿も見ないな、いつでもずっしりと構えているし何にも屈しない強さがある。
口癖が「彼氏いないのか?」なことに対しては日々イラッ×10とするが、いつでも私の味方である。口には出さないが、私のことを愛してくれている。
父には大きな安心感を抱く。何があっても家族を守ってくれると思う。
まず母(妻)、次に私、次に弟3人。(いざという時はまず母を助けると昔言っていた気がする。20年の愛、トッププライオリティ)
父は母のことが大好きである。母も父のことが大好き。
父はやんちゃで破天荒、母は超がついてもいい程の優等生。
バックグラウンドは正反対で、絶対に交わることがないとさえ言えてしまうくらいの対極な性質やエピソードをお互いに持っているのに、どういうことなのか交際、結婚、今でも相性最高な夫婦である。
愛し合い支え合い続ける仲のいい二人を見て、私も自分を一生愛してくれる人と一緒になりたいと思う。
自身の将来…結婚と出産のことを考える時にも父のことが浮かぶ。
きっと、結婚式なんて開いた日には決して涙を見せない父親が涙を浮かべるのだろうなと思うし、孫を幸せそうな顔で抱く父親が想像できる。
どちらも現実味がないし強い願望もないし予定も計画もないけれどね。
私に”テレサ”という名前を付けてくれた人。
父親の尊敬するマザー・テレサから頂いたとのこと。
私は託された。
ここまで、彼女のような人間になるように育ててくれたのだと思う。
名前負けだけはしたらダメだといつも思ってる。
名前と、両親に恥じない人間になります。
テレサって名前あなたにぴったりだね、と人様から言われるように、思われるように。
半年後には成人。子どもが20歳を迎えるということは、保護者にとっては子育ての完結とも言えるのではないかと思う。
これまでの親の存在や役割や立ち位置と、20歳からのそれらは大きく変わると思っている。大人になるんだから。
だから10代ラストスパートのタイミングで両親について書きたいと思った。
母についてもいつか。
本日のBGM:MONO NO AWARE ”行列のできる方舟”
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