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試験前の大学生。

 只今、七月後半。ちょうど大学生の試験期間中である。大学生は遊んでばかりで「人生のモラトリアム」だとしばしば揶揄される。しかしながら、こればかりは裁判所で自信をもって宣誓できる。今の時期だけは本当に大変。

 そんな大学生の大変さは電車内で垣間見ることができる。今の時代、電車内でスマホを使っている人が多数を占めている。そして大学生も漏れなくそれに当てはまるのだ。電車内で基本書を読んでいる奴なんてそうそういない。

 しかし、試験日だけは違う。みんな手にしているものが変化するのだ。そう、その手にはスマホではなくレジュメがある。誰もが時間ぎりぎりまで、できる限り詰め込もうと勉強するのだ。

 そもそも、日本の大学なんてそう簡単に留年しないと言われているんだから、余裕をもって勉強しておけば大丈夫だろ、と突っ込まれるかもしれない。
 「はい、おっしゃる通りです。ぐうの音も出ません。」
 だが、普段はモラトリアムに浸っている大学生にそんな論理は通用しない。

 そんなわけで試験日の電車内は何とも言えない緊張感が漂っている。始めのうちはそうでもないかもしれない。しかし、最寄り駅に近づくにつれて大学生の割合が上昇し、そういった雰囲気が徐々に増してくる。

 大学というもの、高校と違って留年する可能性が現実に存在する。高校では赤点をとったとしても、なんだかんだで卒業はできる。しかし、大学はそうもいかない。試験で60点以上取ることができなければ、後日返ってくる通知は「不認定」。そして、そんなものをコレクションしていると、大学にもう1年留め置かれてしまう。
 そういった点では、できるだけ良い点を取りたいではなく、絶対に最低限の得点だけは取らなければならない、という低レベルだが切実な戦いをこの時期の大学生は強いられるのである。

 しかし、そんな時間も永遠ではなく、いつかは終わりを迎える。試験を終えた学生は次々を帰路についていく。

 帰りの電車では彼らは何をしているのだろうか。意外とスマホをいじっている人は少ない。彼らはホームで友達と試験について盛り上がっているのだ。人間大変だったことがあると、なぜか他の人と共有したくなってしまう。傍から見れば、たいして勉強していないかもしれない。しかし、それでも試験からの解放感はとてつもなく大きい。そんな気持ちを外に出さずにはいられないのだ。

 いつもは暇そうな大学生。しかし、よくよく見てみると、ある時期だけはいつも違う姿を見せてくれる。そんな変化を観察してみるのもまた面白いかもしれない。

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