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フォトエッセイ

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何気ない日常の中で、ふと気になってしまうモノ・コト。季節の写真を添えて、短い言葉にまとめたエッセイ集です。
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世界遺産「高野参詣道 三谷坂」を歩いて③【和歌山】

三谷坂を登り切り、無事、天野の里に到着。花盛祭の渡御行列を見るために、私たちは世界遺産・丹生都比売(にうつひめ)神社まで歩きました。 丹生都比売神社 花盛祭 丹生都比売神社の鳥居をくぐると、境内には参道の両側に色とりどりの花が飾られており、とても華やかな雰囲気でした。 ほどなく始まった渡御行列は、天狗の姿をした道開きの神・猿田彦さまが先頭です。 猿田彦さまに続いて、笛を吹く人、弓や刀を携える人、獅子頭を持つ人、お神輿を引く子どもたち……時代衣装をまとった行列が粛々と進ん

世界遺産「高野参詣道 三谷坂」を歩いて①【和歌山】

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」のひとつとして登録されている、高野参詣道 三谷坂。かつらぎ町三谷の丹生酒殿(にうさかどの)神社と、高野山の守護神・天野の丹生都比売(にうつひめ)神社を結ぶ、約5.5㎞の急登です。 古い時代、丹生都比売神社の鎮座する天野は聖地とされ、人の住むことが許されない地でした。神職はふもとの三谷に家を構え、そこから毎日、天野まで山の中を歩いて通っていたとのこと。その道筋が三谷坂なのだと伝えられています。 そんな歴史ある三谷坂を2024年4月半ば、紀州

如月の京都めぐり【大原 出世稲荷神社・三千院】

2月18日・19日、久々に京都の寺社を巡ってきました。 1日目は大原へ。数年前に訪ねた時は三千院の近くまで自家用車で行ったのですが、今回は京都バスを利用し、「戸寺」で降りて畑の間をてくてく歩いてゆきました。 大原観光保勝会が発行している「大原の里歩きマップ」の「風の道」をたどるコースです。 この日の天気予報は雨。でも降ってはおらず、空一面に重い雲が広がる中、切れ間からひとひらの青空がいつも頭上に覗いている、そんな不思議なお天気でした。 大原の里の道々には斜面に積み上げられ

厄除け祈祷 ~丹生都比売神社へ~【和歌山】

今年は前厄なので、年が明けてから早いうちに厄除けのご祈祷をお願いしたいと思っていました。 地元の氏神様や、毎月一日にお参りしている和歌浦の玉津島神社さんなど、信用してお任せしたいところはいくつかあるのですが、なぜか、 「厄除けは丹生都比売(にうつひめ)神社でご祈祷を受けたい」 しっかりとそんな気持ちになったのです。 丹生都比売神社はかつらぎ町天野に鎮座する、高野山の守護神。弘法大師空海が密教を開く場を探していた際、高野山へ導く助けをしたとされる女神・丹生都比売さまがおまつり

あけましておめでとうございます

新年あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いいたします。 昨年は「紀州かつらぎ熱中小学校ライター部」にて、 みんなで文章を書く、 みんなで取材に行く、 そんな経験をさせていただきました。 ひとりでは見えなかった景色を見て、 ひとりでは気付かなかったことに気付き、 たくさんの学びをいただけた一年でした。 今年は「種まき」を始めたいな、と……。 成果を期待したり、失望したり、ではなく、 楽しいと思えることを、こつこつ、 自分のできる範囲で、種をまいてゆきたいと

南紀熊野 奇岩巡り⑥ 「神倉神社」

「那智駅」の次に向かったのは、新宮市の「神倉神社」。 「熊野速玉大社」の境外社で、源頼朝が寄進したと伝わる、500段を越える石段を上った先にある巨石「ゴトビキ岩」がご神体です。 ここからは縄文時代の祭祀跡が見つかっており、パワースポットとしても知られています。 私は三度目の参拝になるのですが、やはり石段はかなり手ごわく、ことに上り始めの傾斜の厳しさと、踏み石のばらばらな角度には難儀しました。 ひどい巻き爪に悩まされている次男は途中で断念し、一人で「熊野速玉大社」の方へ。何事

南紀熊野 奇岩巡り⑤ 「那智駅」

少し間が空いてしまいましたが……南紀熊野への旅の続きに戻りますね。 しばし時間を戻して、晩秋の陽光を楽しんでいただけると幸いです。 「那智大社」と「青岸渡寺」へ参拝した後は、那智勝浦町にある「湯快リゾートプレミアム越之湯」に宿泊。 昭和を感じさせる少し古いお宿でしたが、ベランダの下はすぐ海となっており、魚が泳いでいるのが見えました。遠くの島を望んでの眺めも良く、開放感を満喫できる部屋でした。 そして翌日、私たちが朝一番に向かったのはJR「那智駅」です。 3年前の冬至の日

京都でゆったり紅葉旅 ~光明寺・善峯寺~

「この秋は京都で紅葉を楽しみたいな」 そうは思ったものの、今年の京都には多くの観光客が押し寄せそうで、ちょっとためらいが。 そこで、京都の中心部から少し離れた長岡京市の光明寺と、京都市西京区の善峯寺(よしみねでら)を11月下旬、訪ねてみることにしました。 光明寺へまず訪ねたのは光明寺です。京都市左京区在住の長男のところに前泊をして、そこから車で約40分程度で到着。 平日の午前10時ごろ、参拝者はまだ少なくて、見事な紅葉の表参道をゆっくり歩くことができました。お天気にも恵ま

南紀熊野 奇岩巡り④「熊野那智大社」・「青岸渡寺」

「那智の滝」を堪能した後、私たちは徒歩で「熊野那智大社」と「青岸渡寺」へ向かいました。 どちらも地図上では「那智の滝」のすぐ近くなのですが……長い階段が折れ曲がりつつずっと続き、上っても上ってもたどり着かない……。 果てがないのかと思うほど上った先に、やっと「熊野那智大社」の鳥居が見えてきました。 「熊野那智大社」 鳥居の上には小さな馬の雲が。「お疲れさま」と言ってくれているようで嬉しかったです。 「熊野那智大社」の主祭神は熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)。「ふ

南紀熊野 奇岩巡り① 「一枚岩」

10月下旬、家族で南紀熊野の奇岩を巡る旅をしました。 「南紀ジオパーク」としてユネスコにも認定されている一帯です。 最初に訪れたのは古座川町の「一枚岩」。 文字通り、板のような大岩が空に向かってそびえています。 高さは100m、幅はなんと500mもあり、日本の地質百選に選ばれた「古座川弧状岩脈」の一部だそうです。 体をそらすようにして見上げていると、なぜか大気が小刻みに震えているような感じ……。 2022年にはこの岩をスクリーンにして「大地を見上げる映画祭」がおこなわれたそ

翅脈

朝の陽に透ける、立ち枯れた紫陽花。痩せた翅脈にも見えるそれは、うっとりと目を細める生き物のよう。 でも、そんなふうに思う時、きまって私の中では、 「これは紫陽花だよね。生き物なんておかしいよ」 と、常識的な声が響いてくる。 長く生きていると、それまでの経験が学びになることが多い分、感性が既存の枠にガッチリと嵌められてしまい、そこから外れることをためらう気持ちが大きくなる。 ただこのごろは、敢えて逆らってみよう、自分の中から生まれる声に素直にしたがってみよう、と。 痩せた

「ハルメク365」への原稿

今年4月から女性誌「ハルメク」のwebサイト「ハルメク365」で記事を書かせていただけることとなりました。 見出しも含めて1000文字程度という字数制限があるため、どこまで文章を削ぎ落して、かつ魅力的な記事にできるのか、と、悩みながら書いています。 私の記事はついつい重量級の長いものとなってしまうので、今の時代に合った軽やかなものを書くすべも身に付けるべく、日々精進。 自分の中の「執着心」と向き合うことにもつながっているように思います。 「ハルメク365」では同世代の女性に

吉野水分神社の桜【奈良・吉野山】

もうすっかり春の深まった時期ではありますが、あとひとつだけ桜の風景にお付き合いくださいね。 4月4日には、奈良・吉野山へ桜を見に行きました。 朝5時に起きて6時には和歌山を出発、7時30分には吉野山に着いたのですが……なんと、いつもの下千本の駐車場はすでに満車!近鉄吉野駅近くの駐車場まで回ることとなりました。 昨年の吉野山では花々に勢いがあり、山を歩いているだけで明るく気圧されるような感じがあったのですが、今年はもうすでに葉桜への準備を整えている、そんな落ち着いたソメイヨ

1年ぶりの更新

ほぼ1年ぶりの更新となりました。みなさま、お変わりございませんか。 前記事からの続きとなるのですが、昨年5月28日、母は静かに他界しました。 今は弟が暮らす宝塚市の見晴らしの良い墓地で眠っています。 いろいろとこだわりの多いひとだったので、生きている時よりも幸せなのではないかな、と、これは私の勝手な思い込みなのかもしれませんが……。 先に天で待っていたはずの父や祖母と再会して、穏やかな魂となっていることを願っています。 私自身の状況も少しだけ変化があって、昨年秋に開校した