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読書日記214 【俳優・亀岡拓次】

 戌井昭人さんの作品。作家というか俳優や演出家もやっている方らしい。映画をやっていてあまり評価されてなかったんだけど、内容が面白くて原作を読んでみたくなって古本で購入した。近くのブックオフにはなかったんだけど、ネットで購入したものが近くのブックオフで送料無料で買えるというのがあって、地方の僕は重宝している。(いつまで続くかはわからないけど)

 脇役での評価の高い俳優、いわゆるバイプレーヤーズである亀岡拓次が織りなす俳優の仕事であったり、撮影が終わってからの生活であったりが面白おかしく書かれている。海外の有名な監督に評価されてスペインで撮影をするのだけど、そのときに日本好きの女性と知り合い、Haruki Murakami (村上春樹)の感想を聞かれ読んでないことに気づいたり、飲み屋で知り合った女性に入れ込んで雪道を走ったりする様は滑稽なんだけど哀愁もある。

 出てくる監督や俳優・スタッフはちょっと変わっていて、山奥での過酷な撮影のために殺伐としている撮影現場を和ませるために山菜を取りにいく亀岡拓次が転落をして足をくじいてしまう様は「きっとそうなのだろう」とおもわせるし笑える。ちょっと前に流行った「カメラを止めるな!」のような内輪話を観ているのもあるのかもしれない。

 昔のバラエティというかラジオとかなんかは、基本的に撮影スタッフなどの内輪ネタが多かったし、それ自体を知らないのだけど、何故かすごく面白いのもあって子供の頃はよく観ていた。(とんねるずなんか正にそれ)今は王道というかネタの応酬というか「大喜利の世界」が芸人っぽくなってきたけど、内輪ネタみたいなものも観てみたくなる。

 昔、滝田洋二郎監督の「木村家の人々」という映画があって、バブルの時代にただただ節約が趣味という両親に苦悩する子供という構図の喜劇映画があって、すごく面白かったのと父親役の鹿賀丈史さんが新聞を配達するシーンをみて「ホントの配達ってもっと過酷なんだけど」と思いながら、新聞配達が楽しくなったことを覚えている。ドラマというかって別の華やか人生を観るというのもあるけど、近くて共感できる世界もある。書かれている亀岡拓次は後者の方で何故か共感できる。

 閑話休題。休日に車で出かけずに何キロか歩いてお腹をすかして、街中華や市内にある小さなお店で食事をすることをしている。この前、市内を廻って見つけたお好み焼きのお店なんだけどランチを提供していてという店にたまたま入ったときに油淋鶏(ユーリンチー)の定食を食べたのだけど、ご飯がすごくうまくてびっくりした。

 ご飯って水の旨さというか水道水や濾過した水と天然水で炊くので味が全然変わるのってあって(長野の中でも名水の多い地域というのもある)名水を汲んでご飯を炊くと味が激変する。(個人的にはめんどくさいのでたまにやるだけで市販の天然水で炊いてます) きっと近くの湧き水を使ってるんだろうなとは思うのだけど業務的なのは汲むのが大変なので労力がかかる。お好み焼きとかも使ってるんだろうけど1000円もいかない定食に労力をかけるのって「個人的なこだわり」というか見えない努力ってある。

 そういうこだわりの世界って観たり食べたりを直接してみないとわからない。高級なところなら提供できる労力も安いものでも(天然水はタダ)労力も的に合わないものだってある。食事が出されて炊かれた米の味を確認するまでわからないことってある。そういう俳優のこだわりみたいな世界を覗けた面白い作品だった。

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