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読書日記239 【とわの庭】

小川糸さんの作品。物語の温和な入り方と題名である『とわの庭』に惹かれて読み進めていくと、大どんでん返しがある。

帯に書いてある「生きるってすごいことなんだねぇ」と納得してしまう内容で、ちょっと考えさせらる。それが全体的なテーマにもなっている。

前作の『ライオンのおやつ』のときもそうだけれど、こう結論づけしたいから、あえて1人称で書いているところがある気がする。

著者経歴

山形県山形市に生まれる。1992年に清泉女子大学に入学と同時に上京。卒業後マーケティング会社に就職。編集プロダクションに転職し情報誌のライターとして仕事を始めるものの、1号を発行して休刊伴いリストラ。住むところを失ったことで将来の旦那さんのもとで同居を開始。会社勤めに嫌気が差し就職せずにアルバイトをしながら、創作活動をする。2008年に『食堂かたつむり』でデビューしたとwikiに記載されている。

ストーリー

とわ(主人公の名前)は目が見えない。母親と二人で生活をしている。最初は母親に甘えるとわと愛情を振りまく母親のほのぼのとした物語が続く。オットさんという男性が食事を持ってきてくれるので、食事も困ったことがない。

目の見えないとわがもの語る文章なので、部屋の間取りや空間的ものをつかみとれない。ただ母親の名付けた「とわの庭」をとわは子供のときから楽しい場所と感じている。

時が経ち、ずっと家にいた母親が外に働きにいくと態度が豹変する。ちょっとした事で苛立ち、目の見えないとわに対して暴力をふるうようになる。母親に謝って赦しを乞わないと生きられないとわ。懸命に母親を愛そうとするとわ。

そして母親はいなくなる。オットさんが届けてくれる食事のみで懸命に生きるとわ。友達もいずに孤独で狭い家の中で目も見えない綱渡りの生き方が描かれる。

遂にオットさんの食事も滞ってしまう。おなかをいつもすかしているとわ。体力が限界になり、死が近づくときに物語が、「本当の世界」が周りはじめる。

映像化

『食堂かたつむり』が映画化・『つるかめ助産院』『ツバキ文具店』『ライオンのおやつ』はNHKでドラマ化されています。

感想

いつもながらに文章というかは読みやすい。ただ偏っているというか、描きたいもののために文章を曲げてしまっていいのか?という問いに苛まれる。(「ライオンのおやつ」の時もそうでした)

ただ、そういうことを除いても読み続けてしまう文章力が著者ある。文庫にもなっているので冬の夜長に読んでみるのもいいかもしれません。




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