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読書日記115 【藤田田の頭の中】

 ジーン・中園さんのビジネス書。日本マクドナルドの創立者である、故・藤田田(ふじたでん)さんのことが書かれている。ソフトバンクの孫正義さんとか、今の名だたる経営者が見習う人で、名言もすごく残している。

 アメリカでマクドナルドを大きくしたのは、実は創業者のマクドナルドさんではなく、レイ・クロックという人で、ここら辺の映画で有名なのが「ファウンダーハンバーガー帝国の秘密」という映画でマイケル・キートンの熱演がすごくて面白い。

 そこから、藤田田さんがこの伝説的な経営者レイ・クロックから日本のマクドナルド経営を任せられたというのは、すごく面白いことだなと思う。iPhoneの販売権利を最初にソフトバンクが手にして、最大手のドコモから販売されないという日本人がびっくりした契約がなされた。iPhone欲しさにソフトバンクに契約を変えた人もいた。僕らが直に見た「経営戦略」というか、最初の交渉というのが大事なんだというのがすごくよくわかる。


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 藤田田さんの名言や行動は色々あって、その中でもアメリカの悪徳業者かに騙されて、その当時の大統領のジョン・F・ケネディに手紙をだしてそれが本当に読まれて、アメリカの悪徳商人を懲らしめた話はあまりに有名で、藤田田さんの自伝でも書かれている。今の日本のどの経営者が書いたところで読まないだろうなとは思うことを敗戦国の日本でやったのは、すごいの一言につきる。

 「文化は高い所から低い所へ流れる」

 これも、有名な「文明流水理論」で、先進国の流行っているものが「普遍的」に売れるというもので、ブームがあるとそれが永続的というか長く続くか?は先進国から生まれたブームだと続くという理論で藤田田さんが言っていた理論の一つで、それの最たるものが「テニス」「サッカー」「ゴルフ」となるらしい。イギリスが発祥地であるゴルフはスポーツ文化の高いところから持って来ている。このブームは長く続くということになるらしい。確かにゴルフ場は至る所にある。

 ハンバーガーというものが「アメリカ」という「食文化の高い国から持ってきた」というところから、全国展開を始めていく。企業当時の1971年ころから「目標売上1000億円」を目指していたというからすごく驚く。それと、株式上場するまでの何十年も「個人商店」として運営していた手腕もすごい。サントリーもそうだけど「大鉈を振るう」という行為ができるのもそういう背景があった感じがある。

 椅子もない狭い店のことを、マックの会社内では「場外馬券場」といったらしい。そういう場所でも、徹底的にロケーション(場所)を優先したらしい。「場所が良ければ売れる」と最初の出店には気を配ったらしく、銀座に1号店を作った時も狭くて借りてのいない所でも「ここなら大丈夫」と借りたらしい。アメリカのマックの本社は、郊外の大型店形式だったし、それを薦めたらしいけど、そういう発想は藤田さんにはなかったらしい。

 「ルールは時代で変わる。ルールを覚えて先に実行したものの勝ち」というのも、藤田さん自身がアメリカに戦争で負けて東大という学位を持っていたけど、お金がない時代に進駐軍で働いた時に「英語を覚える」という新しいルールに真っ先に飛びついたらしい。それまでは「敵国の言語」として意味嫌われていたものを真っ先に覚えて、進駐軍で働き、そのお金と英語力で貿易商として仕事を始めたらしい。アメリカにはいろいろなハンバーガーショップがある中でこれだけ売れるハンバーガーチェーンにしたのは確かに「先見の明」があったんだと思う。

 今の会社の大きさって「時価総額」になる。いろいろな人がトヨタを抜いたといっている「テスラ」は時価総額およそ39兆円になった。ただ、売り上げとか製造とかでいうと遠く及ばない。こういう形態の企業の在り方は昔の日本なら「風船を膨らますようなもの」といって嫌われた。ホリエモンのライブドアもなくなってしまったし、そういう形態の会社は日本ではひろまらなかった。

 多くの企業がそれで株式を「持ち株」して外国の企業からの買収を阻止した。ただ、藤田田さんの理論でいくと市場経済の最先端をいくアメリカで起こった「企業戦略が続く」とみたら、やはり対処は変わっていたかな?とは思ってしまう。

 そういう名言の詰まった一冊。読んでいて面白い。

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