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私のブルーウォーター

30歳のとき、私はブルーウォーターを手に入れました。


小学校1年生の授業で、アナログ時計の読み方の授業がありました。
1人1つずつ事前に購入した模型のアナログ時計をお道具箱にしまうとき、私はいつも時計の針を6時にしてしまっていました。
毎日夕方6時が大好きなアニメの時間だったからです。

当時NHKのBSで衛生アニメ劇場という平日の夕方から日替わりでアニメを放送する番組が流れていました。
私は毎日この時間が本当に楽しみで、放課後どれだけ友達と遊んでいても6時までには絶対に家に帰ると決めていました。
未来少年コナン、ガジェット警部、トッポジージョ、キャプテン翼…
その中で、ふしぎの海のナディアが特にお気に入りで毎週欠かさず見ていました。

私はこのアニメが大好きでした。
身軽な主人公、カッコいいメカ、マジで怖い敵、登場時は敵なのに後半では仲間になるキャラやシナリオ全てが幼い私のハートにロンギヌスの槍よろしくぶっ刺さり抜けませんでした。
今も抜けません。

海底二万マイルが原案のこのアニメ、観たことない方はなんとなーくラピュタを想像して下さい。
不思議な力を秘めた石(ブルーウォーター)を持つ主人公の女の子と彼女を守ろうとする男の子、石を狙う悪者、石によって復活してしまう古代文明の超兵器…そんなアニメです。
Wikipediaを見ると分かりますが、制作の経緯のせいか設定が少し似ています。

そんなアニメにハマるとどうなるか。
当然ブルーウォーターが欲しくなるんです。
もちろんラピュタに出てくる飛行石もめちゃくちゃ欲しかったです。
でも私の好みにクリティカルヒットしたのはブルーウォーターでした。
名前だってカッコいい。
ブルーウォーターって英語じゃん。トゥンク…

ブルーウォーター欲しい!お母さん買って!
いや、売ってないよ。(そらそうだ)

本当にどこにも売ってないの?
もちろん本物が欲しいわけじゃない。おもちゃで構わない。あの形をした青いものがあったら一生宝物にするのに!
セボンスターみたいな子どもっぽいネックレスなんかじゃなくて、あの深い青色で細かい複雑な模様が刻まれた、なんかすごい力秘めてますよ感溢れる見た目の石がどっか落ちてないかなぁ…(落ちてない)

欲しいなと思ったアニメグッズは毎年沢山世の中に出てきましたが、このナディア関連のグッズはほとんど見かけることはありませんでした。

セーラームーン
ママレードボーイ
魔法騎士レイアース
赤ずきんチャチャ
ご近所物語
こどものおもちゃ
怪盗セイントテール
ケロケロちゃいむ
神風怪盗ジャンヌ
少女革命ウテナ
カードキャプターさくら
沢山のアニメを見て、沢山のグッズがほしくて仕方なかった10代前半。懐かしい。

…どうだ、30代40代ホイホイな少女アニメを並べてやったぞフハハハハ!!
変な鳥肌が立った人はスキしてね。

そんなブルーウォーターへの憧れを胸の奥に秘めたまま大人になった私は、せいぜいカラオケでOP曲をシャウトして想いを馳せるくらいしか出来ませんでした。


時は流れて30歳のある日のことです。
ふと、母が昔からたまにつけていた翡翠のネックレスのことを思い出しました。
ペンダントトップに翡翠の管玉一つだけがついたシンプルなものです。
本当になんとなく、ふと思い出して深い意味もなく母に聞いてみました。

そういえば最近翡翠のネックレスつけないね。
どうしたの?捨てちゃった?

いやいや、捨てたりなんかしないよ。
単純にあんまりつける機会がないだけだよ。
あなたがつけるならあげるよ。いる?
あなたがつけてくれるならお母さんも嬉しい。

そんなつもりで聞いた訳ではないのにもらってしまいました。
しまってあったネックレスの革部分はもう劣化していたのでペンダントトップの石だけ。
母はこの翡翠を伯母からもらったそうで、鑑定書や金額は知らないから本物の翡翠かどうかはわからない、ただ伯母は本物志向の人だったから多分本物だと思うよ、と言っていました。
私の記憶にある母の翡翠のネックレスは、深い緑色でとても上品で、触ると少し冷たい石の温度を感じるものでした。
改めて手に取った石も相変わらず少し冷たくてきれいな深い緑色でした。

母から翡翠を受け取ったとき、子どもの頃欲しくてたまらなかったブルーウォーターが頭をよぎりました。
ナディアが持っていたブルーウォーターは親から受け継いだものです。
色も形も大きさも違うし、古代兵器を復活させるような不思議な力もない、もしかしたら翡翠という名前すらつかないただのガラス玉かもしれない。
でも紛れもなく長年母が身につけていた石です。

思わぬタイミングでもらった母の翡翠。
大事にしよう。
そしてできたら、いつか娘に譲ろう。
私のブルーウォーター。



エヴァンゲリオンで冬月先生を見るたびにガーゴイル…と思ってしまいます。
監督一緒だし、これナディアじゃん!と思えるデザインが随所に見られます。
さて、やっと公開です。長かったなぁ。


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