3年前、息子が2歳半の頃に七五三の前撮りをしました。
髪置きとかいうやつです。

やるかやらないかは地方によりけり、というよりもはや個人による、と言ってもいいくらい千差万別なイベントです。

当時はまだ保育園に通い始める前で、子どもという生き物は息子しか知らなかった頃でした。

一度火が点いたら聞く耳持たず、
気分が乗らなければ聞く耳持たず、
気が散れば聞く耳持たず、
何を言っているか私も分からない喃語を一人で一生懸命話している、
息子はとにかく人の話を全然聞く気がない、
自分の世界で生きている2歳児でした。

でも2歳児ってそんなもんだと思っていました。

前撮り当日は機嫌は悪くはないけれど初めての場所でソワソワしている様子。
この程度の場所見知りなら大丈夫かな、と楽観視していました。

いざ衣装を選び、着付けを始めると
服を脱ぐのを嫌がり、
足袋を履くのを嫌がり、
着物を着るのを嫌がり、
写真に興味はなくスタジオのオモチャを触りたくて仕方がない、
スタッフがどれだけ気を引いても「知らんがな」な態度。
気が散るものが多すぎてカメラ目線どころじゃありません。

あの手この手で撮影しようとどんどん人数が増えてくるスタッフさんたち。
思ったように進まず、時間ばかりが過ぎていくことに苛立ちを通り越して情けなくなっていました。

和装、洋装の2着を撮る予定でしたが、2時間半かけても撮り終えることは出来ませんでした。
別日に再び撮影し直して、ようやく出来たアルバムは一度しか開いていません。

アルバムって結局見ないよね？え、ウチだけ？


3年前の前撮りの思い出はとにかく大変だったという記憶しかありません。
正直苦い思い出です。

そして3年経った先日、息子5歳半・娘2歳半の同時前撮りを敢行してきました。
本当は息子は去年が七五三でしたが、めんど…じゃなくて、娘と一緒に撮りたくて今年にしました。
結論から言うと、

いやぁー楽しかった。

今や息子も立派な言葉の通じる人類です。
写真がどういうものかも分かっています。
衣装を選ぶものらしい、というのも説明しなくても雰囲気で分かったようです。

私「どれがいい？」

息子「ぼく赤がいい」

私「いいよ」

3秒で衣装が決まりました。
一方で娘はというと。

私「娘ちゃんこれどう？可愛い？これにする？」

女「ウン。ムスメチャンコレ」

3年前の息子と比べると圧倒的に会話ができる娘。
第二子で女の子なせいもあると思います。
彼女との意思疎通は非常に楽です。
撮影を見に来た義母は娘がいないので、初めての女の子の七五三を楽しみにしていました。

感染対策で息子は更衣室に一人で入れられ、スタッフのお姉さんと二人でお着替えすることになったのですが

息子「いってきまーす！」

とご機嫌に入っていきました。

もうこれだけで感動。
3年前からは考えられないほどの成長。
初対面の人の指示に従いながら着付けができるなんて夢のようです。

5分も経たずに出てきた息子は、成人式で道路交通法や迷惑防止条例に触れながら報道カメラにピースをする新成人な感じに仕上がっていました。
赤の袴だからね。そうなるわな。(偏見)

義母・私「きゃぁぁぁぁぁ！！！
　　　　　かっこいいぃぃぃ！！！
　　　　　しゅてきぃぃぃぃ！！！」

夫「ほう。いいやん」

息子「ふふっ(ニヤニヤニヤニヤニヤニヤ)」

特別な装いを堪能する息子は、小道具の扇子が嬉しいらしくずっといじっていました。
その後息子を夫と義母に任せ、私は娘と更衣室に入りお着替え。

娘は全くの無抵抗で服を脱ぎ、足袋をすんなり履き、袖を通して立って着付けてもらいました。
されるがままに少ない髪の毛を少し結ってもらい、口紅も少しだけつけてもらいました。

予想はしていたけど娘のすんなり具合にびびる。
警戒心がなさすぎるのもいかがなものか。
でも可愛いからいい。可愛いは全てを解決する。

地上に舞い降りた天使か神話の女神を彷彿とさせる、ともすれば国家を3つくらい傾けそうな美幼女になった娘は、義母の絶叫と夫の静かな感激に迎えられました。

義母「あらぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！！」

夫「やばい……娘やばい……
　　可愛さが桁違い…やばい…かわいい……」

息子「ねぇぼくにもかわいいって言って！！！」

私「息子くん超可愛い！！」

娘「オキガエ、デキタヨ」

そのままちょっとテンションが上がった息子と娘は、ツーショット写真とそれぞれソロショットを小道具や背景を変えながら撮りました。

スタッフさんて本当にすごいですね。
子どもの気の引き方、笑わせ方にプロの真髄を見ます。

私は大人しく笑ってポーズを取って撮影される息子に感激し、夫と義母は娘の可愛さに悶絶した1時間でした。

1時間。

そう、1時間だったんです。
着替え→撮影→着替え(2人分)が1時間で終わったんです。

すごいな、子どもの成長って本当にすごいな。
息子は色んなことができるように、分かるようになったんだな。

七五三って子どもの今後の成長を願いながら、今までの成長を感じるイベントだったんだな。

分かってたけどちゃんと分かってなかったな……

そんなことを、隣の更衣室から飛び出してローリングオンザフロアをキメる男児(オムツ一枚)を見ながら思いました。

彼も聞く耳を持たないタイプでした。
気持ち的には彼のお母さんの背中をさすりたい。

子どもの写真撮影ってほんとに楽しくて嬉しくて大変だよね！