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2022/5/17『真珠』

広々と後悔している
女が喜びをカラス貝にしている
ハッブル宇宙望遠鏡の眠ろうとする時
キャノンの一つ星が
油売りのぎたぎたとした手の
こもれび、アジサイの頃の、ハローともしび
広々とナザレの人の声がする
それでは女が黒真珠の見つめる卓上の
エニシダは放心のマゼランの星雲へと
あぶく、沈みつつある、球体の、その
幽暗の誇りなどというものは
浜辺を歩く時にハマヒルガオの歌う
その揺られている歌は
進化する、波打際で、目覚めているものは
女は真珠の指輪を指にはめる、そして
微笑むことだろう
ヤシの木は海風を望むのだろう
発光するインカの宝石の眼を緑の石を
わたしは海岸の動力をひたひたと感じる
貝殻を踏みしめて、白くかがやく、波と波の間を
マヤの香料は燃えながら、煙たいわたしの喉の
血を分けて、沁みるわたしの血を分けて
赤い真珠の玉を、くしざしにして、指先は滲み出す
早く、遠く、雲の届かない、風の放心を
ひきはがし、わなわなとしのびよる、ラルク
イルカの声はほとばしる
滝のように、心理のように、飾り羽のように
わたしが海上をロックのワイルド
ひびかせて、鐘はひびく、沖の雲のひびき
カラジューム、ほころびる、春の薔薇
わたしの愛する女は春の薔薇、海に沈む
飛行する感覚のほころびる
真珠を飲み込んで、わたしはミルクの
破壊される恒星の融合する薔薇
ひどく愛は悲しくさせる
たたみかける黒い月の光、また感傷の朝
ひどくからだの芯が燃えている、ヒトデのように
それは愛欲の貝殻だと、女は言う
地球の愛欲はシュガーである
真珠を砕く。