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フリーデザイナーの人生設計 その4 デザイナーは一生の仕事か

フリーランスのグラフィックデザイナーになって二十数年。歳で言えば50代半ばである。これまでのフリーランス生活は、山あり谷ありではあったが、概ね順調だったといっていいだろう。家も買ったし(ローンは残っているが…)、ドイツ車も買うことが出来た(維持費が高いが…)。それでもこの先何年仕事が出来るかと思うと不安になる。フリーランスのグラフィックデザイナーとは一生できる仕事なのだろうか?

フリーランス第1世代

その答えは正直わからない。私がフリーランスになった時代。デザイン業務が、机の上でカッターとピンセットの時代からMachintoshへと変わる時代だった。Macがなければ、会社を辞めた私も、おそらく他の会社に転職していただろう。
有名デザイナーの独立はあっても、フリーランスという働き方は今までにない選択肢だった。自宅の机の上で、会社に勤めているのと同じようにデザイン業務が可能になったのだから。
そういう意味では私の世代より上の経験はあまり参考にならない。確かに今は60のデザイナーと聞くと「え?」と思うかもしれないが、5年後の社会はそれが普通になっているかもしれないと淡い期待を抱いている。サラリーマンも70まで働く時代が来るのだから。

デザイナーからデザイナーの時代へ

私の一世代前のデザイナーは紙とペンだけでデザインをしていた。それは道具のシンプルさという意味では今と似ているかもしれない。アートディレクターという言葉も一般的ではなかった。デザイナーの時代と言っていいだろう。
私が会社に入った時代は、会社には大きな紙焼き機(今の人にはわからないかもしれないが)、大型のコピー機があり。デザイナーは紙とペンではなく、カッターとピンセットで写植やコピー用紙を切り貼りしていた。事務所はバイク便が行き来でき、近くに写植屋や写真ラボのあり、クライアントに呼ばれたらすぐ飛んでいける都心のど真ん中でなければならなかった。仕事はチーム制で、アートディレクターは手を動かさずイメージを指示し、デザイナーが形にした。その頃はアートディレクターの時代と言っていい。
ご存じの通り、その後はMacの時代である。Macの時代はすべてが一台のパソコンの中に完結してしまっている。チーム作業は自ずと難しくなってくる。しかし時代はさらにアートディレクターの時代と呼ばれ続けたが、それは大手代理店の一握りのアートディレクターの話で、中小プロダクションのアートディレクターは単なる中間管理職になってしまった。アートディレクターはMacを仕えなかったからだ。そういう意味では実際は再びデザイナーの時代が来たと言えるだろう。今ではアートディレクターもパソコンを使うから、アートディレクター的デザイナーとでも言おう。
私がフリーランスになったのも、そんな中間管理職が向いていないことがわかっていたからだった。以前の会社に勤め続けているデザイナーでも、デザイナーとしては優秀だったのに、管理職には合わず、若い社員にどんどん抜かされているという人もいる。サラリーマンでもデザイナーを定年まで続けるのは難しいのだ。

40代がフリーランスのピーク

よく言われる話だが、実際その通りだと思う。仕事の多くは同年代か、それより少し上の世代からもらうことが多い。自分も仕事盛りなら、クライアントもちょうど現場で仕事盛りだ。しかし50代になると担当者の多くは現場を離れ、若い人に引き継ぐ。しばらくの間は、仕事は続くかもしれないが、やはり若い人は若い人に仕事を出したいものだ。50代の半ばになると担当者が次々と定年で辞めていくなんてこともある。だからフリーランスの収入は50代をすぎるとサラーマンと違って右肩上がりにはならない。

50代からのフリーランスグラフィックデザイナー

時代は変わりつつあるから、あまり絶望的になることもないかもしれない。私が40代の頃は50代で仕事はあるだろうかと不安だったが、今のところ年齢を気にされる機会はほとんどない。インターネットの時代、そんなに頻繁に顔を合わせることもないから、相手もそこまで気にしていないのかもしれない。とはいえ、60代はどうだろうか?年金支給まではまだ時間がある。言い方は悪いが、私でも60代の男性を見ると、初老という言葉をイメージしてしまう。老化は残酷だ。せめて見た目だけでも若作りしようかと思ってしまう。
いずれにしても、いつかは引退の時が来る。重要なのはソフトランディングだ。最新の情報に触れる。勉強を惜しまない。その上で、徐々に減る収入に対して、貯蓄や資産運用を準備しながら、ある程度計画性をもって、仕事を縮小していくことは考えていた方がいい。例えば年齢を気にしなくてもいいクラウドソーシングなども、仕事先として視野に入れてもいいかもしれない。大きくはないが、ブログやSNS、ストックフォトライブラリーへの登録など別の収入源の確保も考えられる。
今まではいなかったAdobeのソフトを使いこなすシニアが増えれば、もしかすると5年後10年後はシニア向けのデザイナーや関連した仕事の需要が増えるかも、などと期待しながら…。

まとめ

どんな仕事でも、何十年も同じように存在し続ける仕事はない。時代とともに業態も変わっていくものだ。今後グラフィックデザイン(印刷物)の仕事は減っていくだろう。若い人はWEBやUI/UXデザインを目指す人が増えていくだろが、それすら何年か後には時代遅れの仕事になっているかもしれない。かといって、私も今からまったく新しい技術を身につける自信も意欲もわいてこない。今あるスキルをどう活かすかということくらいだろう。これだけ長きにわたっておおよそ同じ職業を続けられたのは運が良かったのかもしれない。
しかし、私の世代はフリーランスの第一世代、いわゆるパイオニアだ。それ以前に生涯デザイナーを続けられたのは大先生と呼ばれる人たちだけだ。私たち第一世代がこれから先どんな働き方をするかは、まだ誰にもわからない。


フリーランスの準備4 確定申告

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