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街かどの教育学〜国語、語彙と背景推理〜

文章読解の中でも特に重要なのはその文脈を読み取ることですが、そもそも言葉の獲得につまずいている場合は背景推理、つまり単語から推理し意味を捉える力が欠かせません。

例えば文中に「鉛筆」という単語があった場合。
この鉛筆がなんであるかを説明してみます。

細長くて黒い文字を書くことができ、書いているうちにすり減っていく筆記用具。

といった具合になります。つまり物体や事象、概念をより具体的に述べていくプロセスがあるのです。

しかし私達は普段からこうしたプロセスのもとに言葉を把握していません。それをしていると判断に時間がかかりすぎてしまいますね。

これまでの記憶を頼りに瞬時に「〇〇である」という判断を繰り返すことができるので文章を成立させることができるのです。

同様の理由で新出の語彙についても、これまでの記憶を頼りにおおよその見当をつけます。類推ですね。

例えば

「王様」という言葉と「道」という言葉を知っているうえで、「王道」という単語を見つけたとしたら、なんとなく「おうどう」と読むようになり、「立派な道っぽい」という判断をくだし、その上で前後の文脈から「オーソドックスな道」というような、一般的に使用されている意味に合わせて使用するようになります。

さて、こうした概念獲得の過程に課題がある場合、どのようなことが起こるかというと

「王道」がなんであるかを、改めて調べ直さなくてはなりません。
さらに言えば「ペン」「鉛筆」は全く別物として理解されます。

同じ「書く道具である。」というまとまりを持つことが難しいためです。

そのため1つの物・事・概念を細かく分類し、再構築する練習が必要となります。

それらは大きく
①性質・形質(形容詞)
②性能(動詞)
③価値(用途)
④名称(名詞)

に分けてあげると良いでしょう。

例えば先程の鉛筆は
①細長い、黒色
②書く
③記録を取ることができる
④鉛筆

となります。これは完全一致を求めるものではないので、おおよその見当がついていれば大丈夫です。

ところで一部の人はこのうちの一部を発見するまでに時間を要することがあります。

例えば①が浮かんでこないのです。つまり具体的な表現へとつながりません。

しかし誤解が起こりやすいのは、「言葉を知らない。」と思われてしまうこと。
彼らは決して言葉を知らないわけではありません。言葉と具体物のイメージが繋がりにくいので、対象関係を持つまでに労を要するのです。

しかしこうした分類によって彼らの理解を助けることができます。

1つの方法として用途の近い物の言葉を、いくつか提示します。【ペン】【鉛筆】【筆ペン】といったように。

これらについて①〜③まで、言葉にして説明してもらいます。あるいは実際に具体物を触りながら感触を確かめてもらいます。

続いてあらわした①〜③を、同類型にまとめ、その後異類型にまとめ直します。つまり共通点と相違点を発見してもらいます。

最後にあらためて名称をつけます。

こうした認知のプロセスについて手助けしてあげると、その後の言葉の獲得にも手助けになるかもしれません。

さて、こうした概念獲得のプロセスをたどると実は他者の感情理解や、歴史の系統整理についても適用することができます。

次回はまず、この分類手法と歴史との関係について記したいと思います。

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