見出し画像

魔法使いのともだち

ここだけの秘密、わたしの周りには魔法使いがたくさんいる。
例えば今の恋人。彼はわたしが3DSを壊してしまってしょんぼりしているのを見て、ものの30分で直してくれた。かちゃかちゃと手際よくばらして、再び組み立てるその様はほんとうに魔法使いだった。
他にもわたしにはカメラが好きな魔法使いが知り合いにいる。いま私が使っている二眼レフカメラはジャンク品を彼女が蘇らせたものだ。信じられない。

普段は秘密にしなきゃいけなくて言えないけど、いまは声を大にして言いたい。
わたしの周りにはすごい魔法使いがたくさんいるの!

例えば壊れた機械に再び命を吹き込む魔法使い、例えば釣って来た名前もわからない魚を豪華なディナーに仕立てあげる魔法使い。紙とペンだけの世界で人を幸せにする魔法使い、なんていうのもいる。どの魔法も一級品。
でも彼らは普段人間のふりをしている。なんの魔法も使えませんよー、なんてしらばっくれて横向いて口笛吹いてる。でもある日突然、こっそり耳打ちされるのだ。「実は魔法使いなんだよ」って。すっかり騙されてた!

わたしは魔法使いじゃないしなることはできない。何を直すこともできないし、何かを作ることもできない。取り柄なんて、紅茶と、それからたくさん魔法使いの友達がいることくらい。指先から何かを創り出すことや、歌で心を操ることなんてできない。むりむり。

でも、だからこそ、わたしは魔法使いと魔法使いを引き合わせて縁をとりもつのがだいすきだ。魔法のかけあわせの先にある化学反応がたまらなく愛おしい。

今日も多分わたしはLINEするだろう。
「ねえねえ魔法使いさん、わたしと紅茶を飲みませんか?」

#エッセイ
#友達
#魔法使い