073

都内在住の女子大生です。使用写真は全て自作につきご利用は遠慮くださいませ。

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マガジン

  • かくかくしかじか

    くいしんぼうの珍道記

最近の記事

胡蝶の夢

ねぇ、と横で寝ている男が言う。 「かわいい、すきだよ。」 「そうか、そうだといいね、ありがとう。」 人にはそれぞれの線引きがある。友達と親友の線引き、家族と知り合いの線引き、恋人とそれ以外の異性の線引き。 曖昧なそれらいろいろを、お互いの線引きの違いもわからないままに、闇雲に手を伸ばしては傷つけあう。わたしたちはいつもそうだ。 わたしは、恋人以外には愛を囁かないと決めている。愛を囁かなければ体は委ねていいのか、などという倫理観は抜きにしてほしい。ともかくわたし自身の決

    • 秋の夜長に一杯の紅茶を

      11月1日は紅茶の日、である。 わたしが一年でもっとも大切にしているイベント、ハロウィーンの次の日だ。 特別感がある日取りでとてもよい。別に何かするわけでもないけれど。 11月、日本の秋の夜は長い。 そんな宵を心地よく過ごすのに、紅茶は外すことができないとても大切なものだと私は思う。この時期、特によく飲むものが2つあって、今日はそれを紹介したい。 1つはチャイティー。 ミルクで煮出した紅茶にスパイスを散らすそれはとてもまろやかで、かすかな刺激が体を心地好く温めてくれる素晴ら

      • ジャズを聴く夜

        昨年のこの時期、ピアノジャズを聴くためにヒルトン東京のだだ広いバーへ行った。普段は小さくてバーテンダーとの距離の近い所にしか好んで行かないというのに。ほんの気まぐれだった。 相手はジャズピアニストの息子で、わたしの学校の先輩であり、職場の先輩であると同時に手品の先輩でもあった。パッと見てわかる見目の良さ等なかったが、独特の気品があって、手つきの非常にうつくしい人だった。私は自分の出来うる限りの手品のほぼ全てを彼から習ったし、お酒の美味しさも彼から教わった。 私達はまだバ

        • サンタクロースと私

          サンタクロースに毎年サンキューレターを送っていた。 クリスマスに送られてくるその手紙は、フィンランドのサンタクロース協会から毎年送られてくるもので、英語と日本語でフィンランドの様子や妖精たちとの日々をサンタクロースが教えてくれる、なんてことない内容ではあるものの、年によってはベリータルトのレシピだの童謡の歌詞だのがついていて毎年楽しみに待っていたものだった。(P.S.が毎回ついていてそれが私と妹で内容が違うのもリアルですごかった!) クリスマスレターの封筒の中にはあらかじ

        胡蝶の夢

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        • かくかくしかじか
          12本

        記事

          馬鹿な女

          わたしは、どうしようもなく手に入らないなにかを渇望して、そしてまたどうしようもなく全ての虚しさを泣きたい時、文章を書くのだと思う。たとえばこのnoteだったり、またどこか別の場所に、しょうもない弱音を吐くのだ。可哀想に。 わたしは外を眺めている。窓の外は大降りの雨。そして部屋の電気は消され、ただひとつ、こうこうと輝いているテレビがチープな心霊番組を流している。バイトのメンバーみんなで見ているのをわたしはひとりぼんやりしている。なんだか悲しくてたまらない。 あと何回、こんな

          馬鹿な女

          魔法使いのともだち

          ここだけの秘密、わたしの周りには魔法使いがたくさんいる。 例えば今の恋人。彼はわたしが3DSを壊してしまってしょんぼりしているのを見て、ものの30分で直してくれた。かちゃかちゃと手際よくばらして、再び組み立てるその様はほんとうに魔法使いだった。 他にもわたしにはカメラが好きな魔法使いが知り合いにいる。いま私が使っている二眼レフカメラはジャンク品を彼女が蘇らせたものだ。信じられない。 普段は秘密にしなきゃいけなくて言えないけど、いまは声を大にして言いたい。 わたしの周りに

          魔法使いのともだち

          秋雨

          がたん、ごとん、がたん、ごとん。 電車の外は雨が降っている。 こんな日くらい死者を悼んでセンチメンタルな気分になっていても許されるだろうか。 2年前の秋、今日のように天気の悪い日に、私はサークルの友達が死んだことを、当時の恋人からのLINEで知った。 夏休み中から、連絡が取れなくなっていた一人暮らしの友人だった。地元が北関東の男の子で、夏休みだから帰省しちゃってスマホ放置気味なのかな、とか、バイト代パチンコで溶かして電気一切合切止められたのかな、とか、あまり心配してな

          秋雨

          翼をください

          紅茶が大好きだ。 どれくらい?と聞かれてまっさきに思いつくのは、 「ドイツの留学のお土産で、スーツケースにぎっしり紅茶の茶葉を詰めて帰ったくらいかしら」。 2日に一回は違う紅茶屋まで足を伸ばし足繁く通い、店主にお茶の本場はあなたの本国の方ではないのか?と苦笑いされていたほどだったので余程珍しかったのだろう。 そんなドイツ留学時、わたしはあるドイツ人の男に大変入れ込まれていた。 当時はアバンチュールだと捉えていたが、日本帰国後国際電話でふたりの今後について大喧嘩したくらいだっ

          翼をください

          GUCCIの時計

          「師匠」と呼んでお慕いしている女性がいる。 師匠は師匠でも紅茶の師匠。 母娘ほど歳が離れているがとてもチャーミングかつ可憐な女性で、いつ見てもその魅力は衰えず、わたしの憧れだ。 彼女のことを考えると紅茶が無性に飲みたくなる。閑話休題。 その師匠は香水をブルガリ、時計をカルティエとグッチを使っていて、お家に伺うとふんわりと上品な香りがする。私の中では師匠といえばカルティエとグッチ、それくらいの大きな存在で、憧れの女性の持ち物だからこそ、私は時計を買うとしたらその2つのどちら

          GUCCIの時計

          トーキョーという街

          東京で生まれ育った。 かれこれ20年経つが、ここはつくづく寂しい街だとおもう。 新宿二丁目で会ったドラァグクイーン、下北沢で飲んだグレーな仕事をする現キャバ嬢、1回目のデートで振った渋谷のレズビアン、クラブで口説いてきたドイツ人、先生と付き合って貴重な年月を無駄にさせられた女の子。 みんなみんな唯一無二だった。良くも悪くも。 唯一無二であるが故に、わたしたちはお互い50パーセントもわかり合うことは出来ないし、どこまでいってもひとりなんだろうけれど。 わたしは今夜も飲みに行

          トーキョーという街

          親友の彼について

          親友の話をする。 わたしの親友はかれこれ10年来の付き合いで、わたしが東京という街に飲み込まれていた時も変わらず側にいてくれた稀有な人間でもある。 その親友はいま、アメリカにいる。 何年前の話だろうか突然、話したいことがある。とLINEがきた。 「いま?」 「いま」 「仕方ないなぁ」 言われるがままに電話を取る。 その時に伝えられたのだ、アメリカに行くのだと。 女の声をしているだけで、女の名前をしているだけで、男としての自分を貶され潰される日本に耐えられないのだと。女とし

          親友の彼について

          ふたりの殿方

          パートナーがいるというのに、この1週間でふたりの殿方に告白された。 しかも、同じコミュニティ内の人たちだというのだから残酷な話だ。 きっかけはそれぞれ些細なことだった。 Aくんはお酒を飲んで、酔っ払って手を絡ませながら、「なんで彼氏じゃなくて俺を選んでくれないんですか」と涙されて。 Bくんはみんなで誕生日パーティをしているというのに、物陰で「好きな気持ちが止められないんだ。もういっそ体だけの関係でも構わない」と詰め寄られて。 「わたしは酔っ払った勢いで言ったことは忘れてあ

          ふたりの殿方