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ダブり〜1限目〜A

なんてたって俺は3回目の1年生。
だから段取りはバッチリだ。

体育館の場所や音楽室に食堂の場所。
この学校で美味い定食やパンなど。
あと、一服できる場所も。

そんな中、
この教室では新学期あるあるが行われていた。

クラスの役員を決める日だ。
本当この役員には何の意味があるのだろうか?
いつもの様に窓の外を見ながら話を聞いていた。
桜は綺麗に舞いながら校庭を彩っている。

モトキタは
「じゃー今日はクラスの役員を決めるね
        会長1名、副会長1名、、、」
と、他の役職とその役割を説明していた。

意外にも立候補や指名で順調に決まっていたが
モトキタがここぞとばかりにでしゃばってきた。

「はい、じゃー最後っ、会長はコニシくんで」

「はぁ??」 
俺は思わず声を出してしまった。

俺は、
「無理、無理、無理」
と手を横に振りながら拒否をした。

モトキタは、
「どうして嫌がるの?
     コニシくんに適任だと思うけど」

あまりにも嫌がる俺を見て、
「わかった。では、反対の人は挙手を」
と言いだした。

もちろん誰も手を上げなかった。

そんなもん当たり前だ、
クラスの奴らは俺がダブりだって事は
多分気付いてると思う。
なんせまだ馴染んでもいないこの空間で
手を上げる奴なんてそうは居ないだろう。
モトキタは、それを分かって逆をついたのだ。

俺の顔を見て「ニコッ」と笑う。

俺は思った。
こんな女は彼女にしたくないって。

「じゃークラス役員はこれで決まりです
       みんなよろしくね。はい、拍手」

お陰様でこのクラスの会長になった俺だった。

拍手の中、副会長のナカタリョウが
「よろしくね」
と声をかけてきた。
何かモヤモヤするが、決まってしまった事は
しかたない。そう思った俺は、
「こちらこそ」
と言った。


まだ、幼いが可愛い顔をした女の子だ。
これから会長、副会長で
「かぐや様を告らせたい」
みたいなストーリーが始まるのではないかと
思わせる幕開けだ。
そんな展開になればいいのだが、この学校は
そんな学校でない事は確かだ。


まぁ大声を出して断るのも面倒臭いので
俺は会長をやる事にした。


でも本当に必要なのか?この役職は?

会長の仕事はと言うと、まず授業の始まりに
「規律、礼、着席」
授業の終わりに
「規律、礼、着席」
これに何の意味があるのかは知らないが
これが当たり前の世の中だ。
もう少し慣れたら、
「規律、礼、チャック全開」みたいな
小ボケでも入れてみようと思う。
お昼の喜劇みたいに、
だれかコケてくれるだろうか?

そんな事はどうでもいい。

クラスの会長なんてそんなもんさ。
黒板消しは?って、それは日直。
ゴミ捨ては?それも日直。
教室掃除は?それは掃除当番と日直。
おい、日直が一番忙しいじゃねぇか。

それに比べて、
副会長は?と言うと、全くなにもない。
何もなさすぎて逆に申し訳ないくらいだ。
なんなんだ?副会長って。
組織でもそうだ。社長はすごい。
だが副社長ってなんだ?いつも何してる?
本当に「副」って必要なのか?

それから、少し時は経ち
クラスにも慣れ始めた頃、俺はモトキタに呼ばれた。

何かバレたか??と内心ドキドキしていた。

職員室に入る。
無駄に他の先生たちが俺に絡んで来る中

「あっ、コニシくん。ごめんねっ、忙しいのに」
と、モトキタが俺を呼ぶ。
そこには副会長の姿もあった。

「あっ、会長」

俺は、
「会長って呼ぶなっ」
と言った。
副会長は、
「いいじゃん、会長なんだから」
と言ったが俺は、
「てか、話って?」
とモトキタに聞いた。

モトキタは、俺達に話始めた。
「実は、始業式から1人来てない生徒がいるの
私も週に2日帰りにプリントや授業の内容を届けてるんだけど、先生の母親が怪我しちゃって…
ちょっとの間実家の事しないといけなくなったの
だから、君達2人にお願いできないかな?」

俺は思った。
これは面倒臭い事になりそうだ。

そう言えば1人まだ来てない奴が居た。

俺は、断った。
なんせ、義務教育でもないので別に来ないなら
辞めればいいし、プリントなんてメールで
いいんじゃないかって時代だ。

「わかりました。2人で行きます」
副会長がでしゃばった。

おいおい今はでしゃばるところではないぞ。
普段何も役割が無いせいかここに来て出てきた。

「ねっ、会長」
と副会長が言った。
「はぁ〜?」
「勝手に決めるな、俺も暇じゃないんだ。
     悪いが行くならお前1人で行ってこい」
「ってか会長って呼ぶな」
と、俺が拒否すると、
それを聞いていた国語教師が俺達の会話に
入ってきた。
「コニシ、お前行ってやれ!モトキタ先生を助けてやれ、そしてその任務をクリアしたあかつきには、国語の成績を合格にしてやる」

「マジか?」
情けないが、その条件にすぐ飛びついた。

モトキタが、
「先生、それはダメですよぉ…
 持って行くだけで点数を上げるなんて
 他の生徒たちに知れたらどうするんですか?」

すると国語教師が、
「モトキタ先生が困ってるのなら男として助けるのは当たり前です!!
でも…自分担任でもないので代わりに行く事は
出来ません。
なら、この様な形で先生のお力になれるのなら
容易い事です」
何をいい歳こいてデレデレしてんだ。
気持ち悪いおっさんだ。
あっそう言う事か?
下心丸見えのおっさんの顔を見て俺は言った。

「約束だぞ!」

おっさんは言った。
「勿論。男に二言はない」
「エトウを登校させる事ができた際には
            お前の国語は合格だ」
「はぁ?登校?話が違うぞ」
「モトキタが行けない間にプリント届ける
           だけじゃないのかよ?」
「なぁ?言ったよな?」

すると
「モトキタじゃなくて、せ・ん・せ・い」
と、モトキタが言った。
すると被せるかのようにおっさんが言った。
「誰もそんな事は言ってないぞ」
「俺はモトキタ先生を助けてやれって
               言ったんだ」
「教師にとって不登校の生徒を抱えるって
   どれだけ辛い事か、お前にわかるか?」

俺は言い返した。
「知るかんなもん!」
「来たくねぇ〜もんは仕方ないだろ!」

それは、あんたら教師の仕事だろ!?
俺は多分、いや絶対に間違っちゃいない。
そうだコニシユウ、お前は間違っていない。

「なぁ?話が違うよな?」と、2人に問いかけた。
指を顎に置きながら副会長が
「じゃー国語はちゃんと勉強して点数を
            とるしかないよね」
「それと、数学、理科、、、英語、、
          1つでも減れば楽なのに」
と、最初からその流れになる事を知ってたかの様な素振りで言った。

こいつら…ダメだ無茶苦茶だ。

でも待てよ、
確かに副会長が言う様に1教科でも減れば
楽ちゃ楽だ。

いやちがう。

違うぞ!コニシユウ。
それは面倒臭い。
出来る出来ないでは無くて、面倒臭い。
それはあいつら教師の仕事だ。
日本の教育の為だ。
コニシユウ、
お前はこの話に噛んではダメだ。
俺は自分に言い聞かせた。

だが、国語は欲しい。

駄目だ!!コニシユウ。
そんな事でどうする。
モトキタの為にもそれは駄目だ。

すると、モトキタが
「じゃー英語もオッケーでいいよ」

「・・・・・」

副会長が言った。
「良かったね。これで2教科へったよ。」

お前、知ってたろ?こうなる事。
でも、俺は言わなかった。

こいつら可愛らしい顔してぶっ込みやがる。
こんな女とは死んでも結婚したくないと
思った日だった。

学校を出て駅に向かう最中に副会長が言った。
「会長、どうするの?」

「何が?」

「もし、エトウくんが学校に来なかったら」

「何が?」


俺は、そんな事は考えいなかった。
てか、お前がそうさせたんだろっ?
俺は、言わなかった。

だが根拠はないが自信はあった。
「来るって。どんな奴かしらねぇけど、
エトウも人だ、俺の進級がかかってるんだ」
「だから事情を話して、来いって頼めば
              来てくれるだろ」
「今日で、2教科ゲットだぜ」
と言うと、副会長は俺の顔をじーとみて副会長は言った。
「だよね」

俺は、少しドキッとしたが何気ない態度で
「とりあえずコーヒーでも飲んで、一服だな」
と言って自販機に500円玉を入れた。

「ゴチです!」
と、言って副会長が紅茶を買った。
俺は、奢るつもりだったから特に気には
ならなかったが、
「お前、普通勝手に押すか?」
「別にいいけど」

すると副会長が
「会長どのみち奢ってくれる気だったよね?」
と、俺の心を読んでいた。

コーヒーを飲みながら電子タバコを吸った。
※電子タバコは20歳から

俺はてっきり
「会長、未成年が吸ったらダメ」って言って
取り上げられる様な何処かのアニメみたいな流れになるのかと思ったのだが、副会長は何も言わずスマホでエトウの家までの道のりを調べていた。

              1限目Bにつづく








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