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何度目の正直か【171104_ルヴァン決勝_C大阪vs川崎】

どちらが勝っても三大タイトル初制覇。

勝ったクラブ、選手、サポーターにとっては忘れられない歴史的瞬間になるであろう、

【YBC Levain CUP FINAL】

(まだカップ戦の名前慣れません。ルヴァン。)

【セレッソ大阪 vs 川崎フロンターレ】

ということで、もちのろん。

川崎贔屓で行って来ました埼玉スタジアム。

いよいよ中村憲剛が栄冠を掲げる日が来たと意気揚々向かいましたよ。

恐らく川崎サポーターの8、9割は確信していたことでしょう。

シルバーコレクターという不名誉な歴史は今日までやと。

これは決してセレッソを侮っていたわけではなく、それくらい今季の川崎には勢いと強さがありましたから。


リーグ戦は8月から12戦無敗ルヴァン準決勝も仙台を相手に1戦目2−3と落とすも、2戦目3−1と勝利し合計5−4と逆転決勝進出。

昨季までの『繋いで崩す』風間スタイルに、『結果へこだわる』鬼木スタイルが上乗せアップデートされた今季の川崎。


逆転勝利をたぐり寄せた準決勝の仙台戦や、土壇場でリーグ優勝争いに喰い下がった直近の柏戦など、アップデートされた今季の川崎には『上手さと力強さ』があるなと。

それはシルバーコレクターの歴史、特に昨季の悔しさ、目前でリーグ制覇や天皇杯に届かなかった想いを糧に生まれた、まさに悔しさを乗り越え掴んだ川崎の新たな【強さ】でした。

この『強さ』を手にするための一年間の歩みを見守っていたからこそ、川崎サポーターは憲剛が、小林悠が、今日こそは笑顔で、カップを掲げることを確信していたはずです。

更にはこの日の対戦相手セレッソには一ヶ月前5−1と大勝、開催地も埼スタと関東圏内のため川崎側チケットはsold out。

川崎の初タイトル獲得のニオイはプンプンでした。


だからこそ重たい敗戦。

ようやく冷静に振り返り言語化出来そうなので今更ながらレビュー記事を書いていきたいと思います。

(前フリ長くてすみません。。)

次こそ川崎フロンターレが、中村憲剛が、栄冠を掲げる日を願って。

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【分析視点】“自分たちのスタイル”を貫き過ぎたのか

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この試合は開始47秒で大勢が決まりました。(ツラい。。)

川崎の左CBエドゥアルドがペナルティーエリア前で処理を誤ったルーズボールをC大阪のFW杉本健勇が冷静にゴール右隅に流し込み0−1。


両者のスタイルは明確で、

【ボールを保持しながらゴールを狙う川崎】

【タイトなブロックでボールを奪ってシンプルに攻め切るC大阪】

試合展開もわかりやすくその通り“攻める川崎 vs 守るC大阪”を予想してましたが、C大阪が試合開始直後に先制したことで予想の構図が一層色濃くなりました。

90分の試合展開はJリーグ公式データ通り。

何この圧倒的な回数差!!!

【シュート数】はさておき、【プレー回数】と【敵陣パス数】がどちらも450回近くも違う。。

史上最大級に極端な試合ではなかろうか。。


これだけ主導権を持った川崎が何故ゴールを割れなかったのか。

川崎フロンターレが同点、逆転するためには何が必要だったか。

試合後によく見かけられた考察の一つ、“自分たちのスタイル”を貫き過ぎたのかを分析、検証してみます。
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川崎の“自分たちのスタイル”=ボールを保持しながらゴールを狙うについて、まず試合の展開から感じたゴールを狙う戦略は下記通り。


戦略①アタッキングサード深い位置のサイド侵攻

 →(1)ペナルティーエリアえぐってクロスorシュートでゴール

 →(2)CK獲得率UP

 →(3)深い位置に侵攻してDFライン押し下げてミドルシュート

戦略②ミドルサードからDFライン裏への抜け出し一発

 →(1)シンプルな裏抜け出しでFW小林のスピード勝負でゴール

 →(2)裏を狙うことでDFラインを押し下げて中盤のタイトさを弛緩

   →❶アタッキングサードのスペース確保 ❷ミドルシュート

川崎の狙いは一貫してこの2つでした。

戦略①はスタッツのプレー回数、PA(ペナルティエリア)、A3rd(アタッキングサード)の数がそれぞれ示す通り、川崎の攻撃の狙いの基本パターンです。

A3rdタッチライン際に張り出した選手にボールを繋いで、もしくはPA手前にいる選手にくさびを入れて、後列の選手がPAとゴールエリアの間のスペースに走り込んでくるカタチです。

準決勝の仙台戦にも多く観られました。

0:08中村憲剛のシュート、0:17三好の先制点、0:50三好の追加点に繋がるエウシーニョのシュート、全てこのカタチです。

この日も15分エウシーニョ、42分中村憲剛のシュートはじめ、前半のシュートチャンスはほぼこのカタチでした。

シュートまでいけずともCK獲得したり家長がFK獲得したり、右サイド起点だったかと思いきや左から三好が攻め込んでバタつかせたり。

戦略②も6分、22分の大島→小林、30分にはブロックされるも中村→小林など、センターサークルあたりからDFライン裏を狙った攻撃が何度となく観られました。

狙いは小林悠のスピード勝負でゴールを狙うのと同時に、自分たちの戦略①を成立させるためのスペースを作るためだったかと。

スピード勝負が出来るFWと相対するCBはどうしても裏が怖くてラインを上げ切れなかったりするので、そうなってくるとセレッソのDFラインと、山口、ソウザの中盤底とのスペースが空いてくるわけです。

そこはつまりペナルティエリア周辺、川崎の戦略①を実行するために必要なエリアですし、ミドルシュートでゴールを狙う時間と空間も出来るわけです。

実際に29分の三好や、ブロックされたものの26分エドゥアルドネットなどのミドルシュートありましたしね。

つまり、川崎は戦略通りのサッカーは実践出来ていました。(断言)

前半は特に右サイドの家長を起点にしながら。

ただ、開始直後に先制点を奪えたC大阪が割り切ってブロックをより強固に堅めて来たことでゴールには繋がらず。

特に山口、ソウザには「前に出るな」と尹晶煥監督から指示出てましたしね。

そこで前半同点に出来なかった川崎はハーフタイムで手を打ちます。

左サイドの技巧派アタッカー三好を下げて、スピード、クイックネスが武器の長谷川竜也を投入。

基本戦術は変わりませんが、起点を右から左にすることで相手DFの目線を変えること、そしてタイプの違うアタッカーを置くことで相手の対応にズレを生み出すことを狙った戦術的交代だったかと。

ちなみに今季も幾度となく等々力劇場を観て来た川崎サポーター、僕もですが、なかなか難しい展開だけども、そのうち追い付くだろうと後半開始時には思っていました。

そう、後半開始時には。。

後半も圧倒的に川崎がボールを保持しながら、狙い通り長谷川の左サイドに起点を置きながら、そして左サイドにも起点を作れたことで右サイドも使いやすくなり、戦略①②どちらも見受けられている状態の中、後半開始10分ほどで『嫌な空気』がニオイ出して来ました。。

51分には大島へのシンプルな横パスを、52分には車谷からの横パスのコントロールを、珍しく中村憲剛が連続でミスを繰り返します。

そして中村憲剛だけでなく、例えば50分家長のクロスや、61分エウシーニョへの繋ぎなど、細かい部分のミス、ズレが頻発して来ます。

これはC大阪のブロックが堅いことによって戦術を実践する難易度が上がったからというのもあると思いますが、正直やっぱり内心の焦りだったのかなぁと。。

何度目の正直か、今日こそは優勝しなければ、開始直後のミスを早く帳消しにしなければ、早い時間帯で追い付かねば。。

上げればキリがないほど、後半の川崎にかかるプレッシャーの要因は多かったですからね。

そして『嫌な空気』が、川崎の焦りが、強くなってしまったターニングポイントが後半序盤の10分間にあったかなと。

・55分小林のバイシクル、59分長谷川のミドルが枠外に外れたこと

・58分家長、63分長谷川、そして64分小林が敵陣PA前で倒されるもノーファールだったこと

『嫌な空気』を変えられるゴールが、チャンスが、生まれるポイントで生まれなかったこと。

この10分間が勝負の分かれ目だったのかなと個人的には思いました。

そしてここからC大阪のブロックと川崎に流れる『変な空気』はより強く感じられるようになっていきました。

ただここで一つ、「川崎はゴール前で繋ぐばかり」、「自分たちのスタイルにこだわり過ぎ」という見方をされている方に伝えたい。

そんなことなかったよと。

もちろんベースは繋ぐことでしたが、サイドからのシンプルなクロスはかなり増えてましたから。(全然合わなかったけど。。)

そして74分にはエウシーニョを下げて、FW知念を投入してクロスのターゲットを増やしています。

川崎は今季一試合あたりのクロスはリーグ最下位の12.3本だったんですが、この試合は簡単な放り込みも含めると20本以上クロスがあったかと思います。

つまり、自分たちのスタイルを貫きながらも、この日の川崎は相手や時間に合わせて攻撃手段を対応させてました。

ただ、それよりも『変な空気』から生まれる焦りによるミスやズレで、その対応させていた攻撃手段が成功しなかったのではないかと分析しました。

【分析視点】“自分たちのスタイル”を貫き過ぎたのか

【検証結論】貫きながらも、相手と時間に合わせて対応していたが、それ以上に開始直後の失点によって割り切った相手の守備ブロックが強固だったこと、そして対応しながらも焦りからミスやズレを生んでしまったことが、ゴールという結果に繋がらなかった要因だった。

【タラレバ提案】むしろ対応させたことによって後半減少した、“自分たちのスタイル”である戦略①②を徹底させても良かったのではないか。

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ということで哀しさ、悔しさたっぷりのため、歯切れの悪い感じの初投稿記事になりました。←

アナリスト見習いということなので、サッカーを観ること、伝えることを鍛えるため、今後も定期的に試合分析の記事を上げていきたいと思います。

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