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社長の経費が一番危ない! 〜インボイス制度〜

東京都内で会計事務所を運営している公認会計士・税理士の渡辺勇教と申します。インボイス制度が2023年10月からスタートすること、そして電子帳簿保存法(以下、電帳法)が2024年1月から本格スタートすることを受け、クライアントへ説明行脚に明け暮れています。本業と言えば本業なのですが、もっと数字の話、未来を見据えた戦略の話がしたい・・。
後少しの辛抱です。
そんな僕が、インボイス制度を具体的な相談に対応し、書籍等々を読み込むにあたって見えてきたことをご紹介いたします。

社長の経費が一番危ない! インボイスでもっとも注意が必要

なぜ社長の経費が一番危ないのか、それは、社長は会社クレジットカードをだれよりも利用をし、そしてなぜか領収書をもらわない(もしくは捨てている)人が多いからです。
社長の経費が一番危ない、ということはインボイス制度と実は直接の関係はなく、もともと危ないのです。支払った消費税として控除されるためには、領収書が必要になります。領収書がなければ控除されません
税務調査において、今までも領収書がないことをもって支払った消費税として認められない(否認される)事案があったと聞いています。これが、インボイス制度が本格的にスタートをすることでより厳しさを増すのではないかと推測されます。
領収書がない→インボイス番号の有無がわからない→本体価格と消費税がわからない→否認
こう想定されます。
移行期間の6年間(80%が3年、50%が3年)があるものの、そもそも領収書がなければインボイス番号の有無や消費税の有無がわかりません。したがって、やはり「領収書がない=即、消費税の否認」につながりかねないのです。

お願いですから、クレジットカード利用の領収書は捨てずにまずは保管してください。。

クレジットカードの利用明細はインボイスではありません

ここで、よく出る事例が「クレジットカードの利用明細があるから良いよね?(領収書は捨てているけど良いよね?)」です。
結論、ダメです。
クレジットカードの利用明細は、クレジットカード会社が利用した実績を発行しているのみで、クレジットカードを利用した場所で代金を受領しているかどうかはわからないのです。屁理屈のような話に聞こえるのですが、そういう整理なのです。加えて、2023年10月以降は、クレジットカードの利用明細だけでは、インボイス番号のもっている会社/事業者なのかもっていない会社/事業者なのか判断がつきません。だから絶対に領収書が必要なのです。

社長クレジットカードの利用パターは2種類

いろいろなクライアントと話をしてきて、社長クレジットカードの利用パターンは大別して2種類でした。

  1. 社長が「ここは僕が払います」といってお店で使うパターン

  2. 従業員に「このカードで登録しておいて」と毎月引き落とされるツール利用料や「このカードで引き落として」といって毎月買われているアマゾン系の消耗品費パターン

この2種類です。
おそらくこの2種類に集約される気がしています。
2種類以外のパターンがありましたらぜひご一報いただきたい笑

じゃあ、どうすれば良いの?

考えました、どうすれば良いのか。
思いつく案はタイプ別に次の2つです。

解決案1「ここは僕が払いますよ」パターン

社長の経費精算は領収書がないと行わない
これに尽きます。
昨今の会計ソフトは優秀でして、クラウド上でクレジットカードの利用明細を収集してくれます。この内容で今まではサクサクと経理入力&経費精算ができていたのですが、これからはそうはいきません。
なんてったって、領収書がないと消費税の有無や税率がわかりません。
なので、逆にアナログへ回帰してしまいますが、紙の領収書を経理が入手するのです。現金清算の経費と同じように。これがアナログではあるものの、一番シンプルな気がしています。
(領収書がもらえなかった場合は始末書を兼ねて、一筆もらうことで経費精算はしてあげましょう)

もう一つのパターンは、クレジットカードの利用した瞬間に、クレジットカードが提供するアプリに紙で入手した領収書を写真で撮り、写真で経費精算をする方法です。
僕自身もトライしてみました。upsider(アップサイダー)というクレジットカードのアプリが優秀でして、割と気軽に領収書をアップロードができました。
この方法ですと、領収書の紙保存も不要になり、電子帳簿保存法を先んじて取り入れることになり、デジタル化まっしぐらの優良クライアントになります笑

解決案2「カードで引落がされている」パターン

この解決方法は、経理部(もしくは経理スタッフ)が、すべてのクラウドツールやオンライン決済画面へログインできる状態にすること、で解決するほかないでしょう。
実際に僕の事務所でもありました。僕がスタッフに「このカードで決済しておいて」と伝えて、毎月引き落とされているけど、なんだっかわからなくなっている少額な何か。そしてログイン情報はスタッフしか知らない状態。これではまったく領収書や請求書が取れず、本末転倒でした。
そのため、まずは経理担当者が、ログインできる状態にすることがなによりもたいせつだと思っています。

インボイス番号のチェックが漏れると、どの程度の税務リスクなのか

税理士なので、しっかりと抜けなく対応をしていきましょう、というのが模範的な回答になります。
ただ、実務を想定するとどこまでを優先順位を持って対応するのか、ということも必要になってくるかと思います。
そう考えたときに重要な観点として、まずは金額的影響度です。税務調査で追徴された結果、会社が潰れてしまうほどのインパクトなのか、数万円の影響なのかによって、対応の優先度が変わってくるのではないかと思っています。
消費税の影響は、本体価格の10%がほとんどです(一部は8%)。
そのため、200万円分のインボイスをもらい忘れると20万円+加算税が否認されるリスクがあります。ざっとそういうイメージです。

まとめ

社長の経費精算こそ、インボイス対応で気をつけるべきポイントになります。また、他のクレジットカードに比べて管理がゆるい分、税務調査での指摘が怖い部分でもあります。
クレジットカードの利用明細では不十分!しっかり領収書をもらうように。
解決案1、2をイメージすることと、影響額も頭に置きつつ、対応方針を整理していきましょう。

対応方針にお困りの方がいらっしゃいましたらお気軽に弊社にもお問い合わせください笑。


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