カート・ヴォネガット・ジュニア「タイタンの妖女」(浅倉久志・訳)
津村記久子さんを偏愛してるので、彼女が推す古典SFの本作をぜひ読みたい、と以前から思っていた。
1時間弱も通勤電車に乗るようになったので、移動時間に寸暇を惜しんで読書し、本日読了。
とても面白くてほろ苦く、綺麗な話だった。
地球と火星と水星と……タイタンを挟んで最期にまた地球へ、UWTBか何かに操られて、主人公は旅をする。
地球で運を使い果たしたこと、残酷で滑稽な古臭い火星での殺人、水星での音楽と離別。それからまた旅立った地球で今度は新宗教の熱に浮かされてから絶望し、梯子を登って、タイタンの優しいロボットが夢を見せたこと。
気高いのに野蛮人に犯されたりアマゾンに落とされて生き延びたり一人息子の母として露店商をやるビアトリス、美しい人だった。
というか、人は悲しくて滑稽ないきもの!と思わせる小説だった。手垢のついた言い回しかもしれないけど、しっくりくる。
なんか、ちょっと落ち込んでる時とか、中だるんでる時とか、体力と時間はあるけど気力がないぞって時に読み返したら、背筋を少しずつ伸ばさせてくれそうな物語だった。
すごく満足!
マジックアワーの東京駅より。