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この家はなぜ寒いのか。

お久しぶりです。まだまだ気温が低い日が続きますが皆様いかがお過ごしでだろうか。わたくしはというと、こたつ、石油ストーブ、火鉢という三種の神器をフル稼働させながらなんとか室温を保っている次第である。さて、タイトルの通りこの家はなぜ寒いのか、その原因について書いていきたい所ではあるが、その前に前座として、この家がどのくらい寒いのかについて述べたいと思う。

起床時の室温 -1℃

この家は大阪の北部に位置するが、きっと皆さんが想像するより気温は低い。朝起きて室温計をみると、気温が氷点下ということもよくある。そのため、予期せぬ物体が家の中で凍っているという場面に遭遇したので、予期してなかった度に応じてランキングを作ってみた。

3位:歯ブラシ
水ですすいだまま置いていたら、毛先が「かたい」の歯ブラシより硬くなっていた。なお、私の歯ブラシはもちろん「やわらかい」である。

2位:食器用スポンジ
お皿を洗おうと手を伸ばした時、私は愕然とした。スポンジが凍結して、人生で一度も感じたことのない感触の未知の物体が出来上がっていた。だが、流水で解けるため、食器を洗う性能に影響はなかった。

1位:はっさく
朝起きると、半分残していたはっさくの表面が凍っていた。外皮だけ夜に剥いていたためであろう。シャキシャキして、これはこれでおいしかった。よし。

ランク外:水道
案の定凍った。解けるまでは水が出ないため非常に不便ではあったが、冬の水道が凍るのは予想通りであったため今回はランク外とする。

試される大地にお住みの方々にとっては常識かもしれないが、あいにく私は生まれてこの方、天下の台所以外に住んだことはないので、上記のような経験をしたことがなかった。さて、このようにひょんなことから生活用品が軽率に凍結するお家ではあるが、その寒さの原因はひとえに日照時間である。

確かにこの家に引っ越してくる前から、この家は冬場日が当たらないため非常に寒いという話は聞いていた。しかしながら、冬場は日が当たらないという話を聞いて多くの人がイメージするのは、日照時間が4~6時間くらいしかないのかなあ、というものであろう。人間は、全然ごはんを食べてない、と聞いてもご飯を食べる量が少ないと解釈するし、今月まったくお金がないと聞いても使えるお金が少ししかないと解釈する。日が当たらないと聞いて、誰が日照時間が0であると想像できるであろうか。そう、この家は文字通り冬場、全く日が当たらない家だったのである。

この家は山を背にして建っている。いや、むしろ周囲を山に囲まれているといった方がよいか。とりあえず周囲には背の高い山々が連なっている。冬場は太陽の高度が上がらないため、驚いたことにその山の高さを越えてこないのだ。そんあことある?と皆様思うだろうが、そんなことがあったのだ。実際私も、この事実には完全に虚を突かれた。この周辺の山は、せいぜい標高600m程度の山である。もちろん立地によっては高さによらずに、日が当たらないという状況は成立するのではあるが、まさかこんなスカイツリーより低い山々のせいで逆白夜が生じるとは思ってもみなかった。

日照権という権利がある。人間の暮らしにとっては太陽の光というものは欠かすことができないものであるため、それを保証しようという権利だ。高層マンションの建築に当たっては日照権をめぐって反対運動が起きているし、工事の差し止めや損害賠償を勝ち取った裁判もいくつも存在する。しかし、私の家ほど完膚なきまでに日照権が侵害されているケースはあっただろうか。しかも相手は山である。損害賠償も払ってはくれないだろう。

先日の最強寒波では足首を超えるくらいの積雪があり、トイレとお風呂に行くのにいちいち外に出る必要のあるこの家では、定期的に足が凍り付くという非常にQOLの低い生活が待ち受けていた。この雪が完全に解けるのには10日ほどの日数を要した。いや、正確にいうと今でも家の裏には屋根から落ちて堆積した雪の塊がまだ若干残っている。雪、おそるべし。

考えてみると人間とはなんてちっぽけな存在であろうか。こんなに科学が進化しているというのに自然がもたらす脅威に一切対応できていない。どこまで人間が歩みを進めたところで、われわれ人類は雄大な自然を前にしてできることなんてきっと何もないのだろう。いやまあ、僕が文明の進歩を捨てて山に越してきたのが悪いんだけれども。

そんなわけでこの家は夏場は下界より平均6℃低いという最高の避暑地にはなるのだが、冬場は極寒の八寒地獄と化すのである。人々の中でもし、この家に遊びに来たいという物好きで酔狂で辺鄙で特異な方がいらっしゃったら、主に6月以降に来ていただくことを非常にお勧めしたい。

僕自身はいかに寒いと言えどこの家を捨てるわけにはいかないので、ストーブの上で餅でも焼きつつ、火鉢の五徳でお茶を沸かし、こたつの上で鍋をするという贅沢冬パック全部乗せみたいなことをして暖かくなるのを待ちたいと思います。参考までに一部画像を載せておきます。


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