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神と婆さん(2024/04/20)

 土手道を歩いて眼科へ行った。
 今日は土手に座って弁当を食っているおじさんがあった。先日何もせずに川を眺めていたのと同じ人のようだった。ことによると、この川の神なのかも知れない。そう思ったら急にそんなふうに見えてきた。

 眼科は、今日は随分進みが遅かった。
 待ち時間はnoteの執筆に充てるので、自分は一向苦にならないけれど、隣に座った婆さんはどうやらじりじりしている様子である。
 じきに、車椅子に乗った別の婆さんが名前を呼ばれた。車椅子の婆さんは何だかもぞもぞしたと思ったら、立ち上がって診察室へ歩いて入った。
 歩くのか、と思った。
 隣の婆さんも「ちょっと、どういうこと」と車椅子を見ながら言った。何だか責めるような調子である。
 するとまた別の婆さんが、「ちょっとぐらいは歩けるんだわ」と応じた。
 自分は黙って、空いた車椅子を眺めていた。

「おたく、何時にみえた(「来た」の意)? あたしより前からみえたよねぇ」
 不意に隣の婆さんが話しかけてきた。
「さぁて、もう二時間ぐらいになるかねぇ」と答えたら、婆さんは「そうよねぇ」と言って、別の婆さんに「二時間だって」と伝えた。伝えられた方は「あ、そぉ」と感心した。
 全体、何を感心することがあるのかわからない。
 じきに呼ばれて、診察を受けた。十分ほどで終わり、また土手道を歩いて帰った。神様はいなくなっていた。


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