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#7 / こうち100人カイギ キュレーター 檜山 諒さん 「分かり合えない哀しみは、応援しあうことで埋めていける」

“& stories” は、100人カイギに関わって頂いた方の想いを、更に深堀り、紐解き、お届けしていくマガジンです。

今回ご登場いただくのは、こうち100人カイギ キュレーターの檜山諒さん。茨城県出身ながら、なぜ高知に移り住み、100人カイギを立ち上げられたのか。その裏にある想いや、檜山さんが描く未来について語って頂きました。

こうち100人カイギ・キュレーターの檜山 諒さん

檜山 諒(ひやま りょう)さんプロフィール
株式会社and.プロジェクトマネージャー / STUDIO Brew管理人 / こうち100人カイギキュレーター / Kochi Startup BASE®︎理事(予定) / KOIB 事務局

茨城県日立市出身。人の思いを引き出すことに興味を持ち高知大学地域協働学部に進学。「つながる場の温度をあげる」ことをテーマに、こうち100人カイギ、CLS高知、Kochi Startup BASE®︎でのイベントなどを実施。2022年に卒業し、キッチンスタジオSTUDIO Brewの管理をしながら、取材活動なども行う。

■茨城から高知へ

―― 今日は宜しくお願いします。早速ですが、まずは檜山さんの自己紹介からお願いできますでしょうか。

はじめまして。檜山諒と申します。茨城県日立市出身で、大学への進学を機に高知へ移住、在学中にご縁を頂いて「こうち100人カイギ」を立ち上げました。2022年に大学を卒業、現在は「つながる場の温度をあげる」をテーマに、高知にある STUDIO Brew という伴走支援型レンタルスペースの運営管理などをしています。

――「つながる場の温度をあげる」とても興味深いテーマですね!その辺りは後ほどじっくり伺うとして、まずは素朴な疑問から。檜山さんは茨城県出身ながら、なぜ高知に進学されることになったんでしょうか。

高校の時にお世話になった先生から高知大学を勧められたのがきっかけです。高知大学には 「地域協働学部」 という学部があるんですが、私自身コミュニティや地域活動といったことに興味があったこともあり、この学部は面白そうだなー、と。

―― 檜山さんが「コミュニティや地域活動」に興味を持つきっかけは何だったんでしょうか。

高校時代、仲の良い友人に誘われてインターアクトクラブというボランティア系の部活に入り、様々な地域活動、例えば地元のお祭りなどに、サポーターとして参加するようになったんです。そこで目にしたのは、70代にもなる皆さまが「どうしたら祭りは盛り上がるか、この祭りを次世代に繋げるにはどうすべきか」を真剣に議論する姿でした。地元の活動には全く無関心だったのですが、こんなにも地域に想いを持ち、汗をかいてくれている人たちがいたんだなと、驚きとともに感動も覚えて。コミュニティや地域活動といったことに、自ずと興味が沸くようになっていきました。

―― ボランティアがきっかけで生まれた関心と、高知大学の地域協働学部で学べることがマッチしたんですね。でも、多くの友達は首都圏に進学する中で、1人高知に行くことに不安は無かったのでしょうか。

そういった不安はあまり無かったですね。元々、人と同じことをやるのがあまり好きでは無くて。天邪鬼なのかもしれませんが、皆と違って高知に行くということ自体、むしろプラスに働いたようにも思います。
あとは、オープンキャンパスで高知に行った時に、見知らぬ人が気さくに話しかけてくる感じがとても心地良くて。「ラテンな雰囲気」と言ったら良いでしょうか、気持ちを明るくさせてくれる土地柄に惹かれたのも大きかったように思いますね。

■100人カイギを立ちあげ

―― では次に高知で100人カイギを立ち上げた経緯についてお聞かせいただけますか。

大学で地域協働を学んでいると、面白い個性的な人にたくさん出逢うのですが、皆さん個人ですごくパワフルに活動されているのに、横横のつながりを作る場所がなかったんですね。だからこそ、出逢いをデザインして、個々がつながれるような場を創ることができたら、もっと大きなパワーになりそうなのに!っと感じていました。

そんな時に、ゼミの先生が「100人カイギというコミュニティがあってね」と紹介してくれて。直感的に「あ、これだ!」と閃くものがあって、「こうち100人カイギ」を立ち上げるに至りました。

―― ということは、檜山さん自身、100人カイギに参加したことが無い状態で、100人カイギを立ちあげられたんですかね。未経験での立ち上げに不安は無かったのでしょうか。

そうなんです。立ち上げる前に、一度は見ておくことを勧められたのですが、まだコロナ前でオンライン開催も無く、近隣で行けるところも無かったのもあり、結局100人カイギを見ずして、立ち上げてしまったんです。

不安が無かったのかと言われれば、それはもちろんありました。ただ、コワーキングスペースの立ち上げに関わったりと「場を創る」こと自体を経験したことがあったこと。更には、活動を共にしていたコワーキングスペースのスタッフや、イベントを通じて知り合った頼れる社会人の方が、全面的に後押してくれたこともあって、なんか行けそうな気がしたんですね。若さ故の勢い、とも言えますが、そんな勢いがあることが学生の特権ということで。皆さん大目に見て頂いたのかなと思います(笑)

■100人カイギは麻薬みたい?

―― 実際に100人カイギを立ちあげてみてどうでしたか。発起人・キュレーターだからこそ感じたことなどあれば教えて頂けますか。

そうですね、発起人・キュレーターをやってみて思ったことは、100人カイギって「麻薬」みたいな感じがあるな、と。

―― 麻薬ですか!?凄いパワーワードが出てきましたが、それはどういう意味なのかもう少し詳しく教えて下さい。

実際にやってみたら、これがなかなか大変で。

100人カイギは毎回5名の登壇者が発表することがルールになってるんですが、第1回目開催の前日に、登壇者の1人からインフルエンザに罹ったと連絡があって、4名のままで行くのか、ピンチヒッターを立てるのかの選択を迫られました。それ、私が判断しなければならないのか…と震えましたね。

また、高知の皆さまは新しいもの好きなのもあってか、良いスタートダッシュがきれたと思うのですが、会が進んで行くうちに、参加者が思うように集まらない時期がありまして。SNSの告知だけでは情報が行き届かないと考え、知人に声をかけまくったり、記者クラブにチラシを投げ込みにいったり。地道な活動もしてました。

そういったシンドイことがあるにも関わらず、100人カイギには「また次も頑張ろう!」と思ってしまう「中毒性」みたいなものがあるんですよ。で、100人カイギって、麻薬みたいだなと。あ、念のためお伝えしますが、私、麻薬なんてやったこと無いですよ。

――そうですよね、麻薬、やってないですよね。安心しました(笑)。檜山さんは、100人カイギのどういったところに「中毒性」のようなものを感じられたんでしょうか。

自分でも想像しないような場の盛り上がりが生まれたり、人ってこんなに変化するんだ!?という場面に立ち会えたりするところが、ポイントなのかなと思います。

1例ですが、ある教師が「これからの教育」をテーマに熱く語ってくれて、その登壇がきっかけで想いが重なる方との出逢いが生まれたんですね。で、その後、自身が語られたより良い教育の未来を創るべく、教師を続けながら、100人カイギで出会った仲間と共に一般社団法人を立ち上げたんですよ。

1人の熱い思いから出逢いが生まれ、出逢いがきっかけになって新たなアクションに繋がっていく。100人カイギが熱を生む起点になれたことが本当に嬉しかったですし、こういった経験のおかげで「つながる場の温度をあげる」という自身が追い求めたいテーマが定まっていった気がしますね。

■話を丁寧に聴くから生まれること

―― それはまた熱い事例ですね!では檜山さんのライフテーマでもある「場の温度を上げる」ために、キュレーターとして拘っていたことを教えて下さい。

人の話を丁寧に聴くということには拘っていました。漠然と話を「聞く」のではなくて、耳+目+心で丁寧に向き合う「聴く」というスタンスと言えばイメージしやすいでしょうか。

登壇者も、参加者も、事務局を担ってくれるスタッフも、関わってくれるからには「何かしらの想い」が根底にあるはずで、そこをしっかりと聴いてあげる。それぞれの内にある想いを発露することで、その場を自分事化してくれるようになる。結果として場の温度も上がっていくのではないかと考えています。

これも1例ですが、学生スタッフのやりたいことを聴いていたら、「100人カイギに参加してくれたことがある人を対象に "ファン感謝祭 " をやってみたい!」というアイディアが出たんです。何回も来てくれていた方への御礼をお伝えできると同時に、感謝祭に参加して頂くことでより一層100人カイギのファンになって頂ける。実際、この感謝祭は大いに盛り上がり、参加された方との関係性はより深まっていきました。これも、学生スタッフにやりたいことを丁寧に聴いていったからこそ、生まれた熱だったなと思います。

―― 想いを発露するから、その場が自分事化になる、その入り口となるのが丁寧に話を聴くこと。なるほど、とても勉強になります!ファン感謝祭という切り口もとても面白いですね。この仕掛けは他の100人カイギでもすぐに展開できそうです。

■学術的な観点から見る100人カイギ

―― 少し切り口を変えまして、大学では様々なことを学ばれたと思うのですが、そういった学術的な観点からみて「100人カイギならではの特徴」って何かあったりしますでしょうか。

なかなか難しい質問ですね。下手なことを言うと教授に怒られそうです(笑)。色々な理論が重なると思うのですが、何か1つあげるとすると「代表性」という考え方がフィットするように思います。

代表性というのは、自分が思っていることは、他の多くの人も思っているものであり、その思いを表現さえすれば、多くの共感が得られるという考え方。でもその思っていることを表現する場が、日常の中にはなかなか無くて、自分の思っていることなんて独りよがりのものだと考えてしまう。

ひるがえって100人カイギは、毎回5名の登壇者の方を中心に、内なる思いを自由に発言できる。で、実際に発言してみると、「分かる!私もそう思ってた!」という連鎖が起きていく。自分の思いが自分だけではない、皆さんも思ってる事なんだという発見が、次のステップを軽やかにしていくと思うんです。そういったループが自然と回ることが、100人カイギならではの特徴なのかもしれません。

―― アカデミックな観点からみても100人カイギは理にかなった取り組みなんですね。これは何だか嬉しい発見になりました、ありがとうございます!

■変態が変態のままで居られる社会へ

―― では最後に、これから先、檜山さんがどのような未来を想い描いているかを伺えますでしょうか。

変態が変態のままで居られる社会、もう少し噛み砕くと、社会に適用するために個性を押し殺すのではなく、個性を個性のままに謳歌できる社会になればと願っています。

―― 個性を謳歌できる社会が実現したら素敵ですよね。ではそんな世の中にするには、どうしたら良いか。檜山さんが考えてらっしゃるアイディアがあれば教えて下さい。

肩書がもっと多様になれば良いなと。会社名とか役職とか、男性とか女性とか、そういった一般的に語られる肩書に囚われない、その人ならではの個性を謳った自由な肩書きが溢れるようになったら、世の中はもっとワクワクするものになっていくのではないでしょうか。

例えば、私の場合は「場の温度をあげるほっかほかデザイナー」と名乗ってますが、この独自の肩書はある意味言ったもの勝ちですし、自分自身が「どうありたいか」という観点から考えていけると良いのではないかと思います。

ただ、この「どうありたいか」を1人で見出すのが難しい方もいらっしゃるかもしれません。だからこそ「場の温度をあげるほっかほかデザイナー」として、「聴く」のレベルをもっと上げ、人の想いを自然な形で引き出させるようになれたらなと思います。問いかけの質によって、人の思考の深さは全く変わってきますからね、聴くって奥が深いんです。

―― 自身のありたい姿から自分の肩書を考えてみるのは面白いですね。檜山さんの聴くのレベルは既に相当なものだと思いますし、独自の肩書として「想いを引き出すヒアリング職人」も追加されたら良いような気がします。

ヒアリング職人!その肩書きも良いですね。

あとは、人はそもそも分かり合えないという前提を持つことが大事かなと思います。当たり前ですが、同じ人間とは言え、1人1人持っている遺伝子も、経験してきたことも全く別である以上、真に分かり合うことはとても難しい。にもかかわらず、周りには自分のことを分かってもらいたいと願ってしまいがち。でもやっぱりなかなか理解してもらえないという悲しみが、自分の個性を表現する足かせになってしまうのではないかと思うのです。

―― 人は別物、だから分かり合えないという前提を持つ。確かにそういう前提を持つことの重要性は分かります。一方で、分かり合えないことを認めてしまう寂しさのようなものもあるように思うんですが。

そうですね。お互いに分かり合おうと向き合うことはとても大切なことだと思いますし、その努力を否定するものではありません。ただ、それでも分かり合えない部分はやっぱりあるんだという前提を持っておくことは大事だなと思います。

その上で、分かり合えない寂しさとはどう向き合うか。1つのアイディアにはなりますが、分かり合えない前提を持つ代わりに、お互いを応援しあうことが出来ると良いのではないかと思います。

これはゼミの先生から教えて頂いたのですが

「自分がやりたことが無い人は、周りのやりたいことを応援しなさい。応援は、される方はもちろん、する方も気持ちが良いし、いざ自分にやりたことが出来た時に逆に応援してくれるようになる。応援をしあうことが、前向きなループを世の中に生み出すんだよ」

という話をして下さって、これが凄い印象に残ってるんですよね。

人の想いを心底理解することは難しいかもしれないが、その人が何かしようとしていることの応援はできる。応援という手段を介在させることで、分かり合えない寂しさも、きっと埋めていけるのではないか。分かり合えない前提を持ち、応援しあう関係を意識していけば、変態が変態のままで居られる、そんなやわからい世の中に近づいて行けるんじゃないかと思います。

―― 分かり合えない寂しさも、応援しあうことで埋めていける……、なるほどそういう風に考えれば良いんですね。なんかちょっと鳥肌がたってしまいました!私も「応援しあう」を意識して、自分の周りから個性を謳歌できる世の中を目指していきたいと思いますし、檜山さんの高知での更なる活躍を長野から応援しています!
たくさんのためになるお話、ありがとうございました!

聴き手:豊田 陽介さん
文:豊田 陽介さん
写真:檜山 諒さん

100人カイギ & stories ライター

豊田 陽介(とよだ・ようすけ)プロフィール
1979年神奈川生まれ、千葉育ち。3児の父。
様々な不思議なご縁が積み重なり、2020年春に17年間勤めたハウス食品を退社。長野県佐久穂町にIターンして『カレー屋ヒゲめがね』を起業。自分のワクワクをぶらさず、自然豊かな環境で、家族とゆったり暮らす生活を成し遂げるべく、現在は週3ランチのみ営業。人生100年時代における生き方の1つとして「こんな暮らしもありだよね!」という事例をお示しできるよう、日々奮闘中。
ヒゲめがね note

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