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ここに人がいる

ここに人がいる、と叫んで知らせなければ踏みつけられてしまう人たちの、その小さな魂は、重い肉体を背負いながら今日もとぼとぼ歩いている。その傍らを私も歩く。私の魂もまた軽く小さく、風にあおられて誰かの足元に転がる。

これまでに私も、何人も踏みつけにしてきたんだろうなと思う。人の魂を踏みつけたときの、あの感触。

だれもが尊くちっぽけな魂で、いつか重い肉体を降ろして蝶となって羽ばたく日を待っている。

それまでの日々が、どうか少しでも平穏であってほしいと思う。すべての魂に、重荷を降ろしたときのあの涼しさと安らぎが訪れてほしい。踏みつけてきた魂に対する、つぐないのような願いかもしれない。

路傍を覆う草に、葉の上で揺れる虫に、風の匂いを嗅ぐ猫に、すべての魂についてそう思う。

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